One Year Later 1
リゼンブールのロックベル家の電話が鳴った。
あいにく、ばっちゃんもウィンリィも外出中なので、勝手に俺が出た。
「はい、ロックベル・・・」
『鋼の、やっと捕まった』
「あぁ、大佐か・・・?久しぶり、そういえば大総統補佐になったんだって?じゃ、補佐か」
『なんでそっちで略す。大総統でいいだろう』
「嘘つきになるじゃねぇか、それに補佐の方が似合うし、で、補佐、何か用か?」
『そういえば、君はもう鋼の錬金術師じゃなかったな・・・じゃ、呼び方を変えよう。お豆・・・』
「誰が豆粒ドチビかぁ!?」
勢いのまま受話器を叩きつける。
「・・・兄さん・・・今の電話、お客様じゃないよね?」
「心配すんな、アル。アホ大佐だ。」
「それならいいけど、ウィンリイに怒られるかと・・え、大佐?久しぶりだね、何の用だろう?」
「さぁ、用件聞く前に切っちまったから」
再び電話が鳴る。
「アル、お前出ろ。また切る自信がある。」
「ダメだよ。自分から切ったんだから、ちゃんと謝らないと。」
「なんで、俺が謝らないといけないだよ。大体、大佐が・・・」
「早くしないと電話切れるよ。」
ったく、
「はい、」
『鋼の、いきなり切るのはヒドイと思うぞ。それに、何度も電話するほど私はヒマではない。』
「奇遇だな。俺も何度もいけすかない大佐と話すほどヒマじゃない。」
『君と言葉遊びをしている場合じゃない。真面目な話だ。国土錬成陣のことなんだが』
「!?そういうコトは先に言え。国土錬成陣がどうした!?」
『君、何かしたか?』
「はっ?」
『そうか、君ではないのか。アルフォンス・エルリックも何もしていないのか?』
「どういう意味だ?」
『いいから、確認したまえ』
相変わらず、無駄に偉そうにしやがって。だが、ことがことだけに無視もできない。
「アル、ちょっと・・・」
「兄さん、ちゃんと謝った?」
「なんで俺が・・・じゃなくて、お前、ちょっとこっち来い」
「もう、代わりに謝るなんてしないよ。」
「そうじゃなくて、国土錬成陣・・・お前何かやったか?って大佐が」
「国土錬成陣!?何かって何を?」
「大佐、聞こえたか、アルも何もしていない」
『そうか・・・君たちでもないのか。マズイな。』
「で、何がどうなってんだ?」
アルと二人で受話器を挟むように話を聞く。
『ようやく新政府も軌道にのってきたのでな。あのまま国土錬成陣を放置するわけにもいかんだろう。とりあえずセントラルの錬成陣だが、水路や避難路に残すという意見も出たが・・』
「それ、マズイだろ」
『あぁ、この国に錬金術がある限り、どんな悪用をされる恐れがあるかわからんからな、有効活用するという意見は説得して、既に半分ほどは破壊している。』
説得って・・・絶対脅しだろうな。
『あと、第5研究所は地下道も含めて完全撤廃、今、他の研究所も移転する準備を始めている。これでセントラルの錬成陣は問題ないのだが・・・』
「・・・あの、スロウスっていうバカデカいホムンクルスが掘ってた国境付近の錬成陣が問題なのか?」
『そうだ、やっとそっちまで手がまわせそうになったので、調査したところ、既に東部で3ケ所壊されていた。』
「壊されてたって・・・?」
『壊されていたというのは適切な表現ではないな。報告書によると、まるで最初から穴なんかなかったかのようになっていたらしい。』
「ふ~ん・・・まぁ、良かったんじゃねぇの、あんなもん、あっても困るんだから壊れてたほうが」
『バカか、君は』
「ぁあ!?」
『誰が壊したかというのが問題だろう。壊したということは、アレがなんであるか知っているということだ。しかも最初から穴がないかのようになっているなどと・・・』
「誰かが錬成したってことか?」
『そう、考えるのが普通だ。もし錬金術師が錬成によってアレを壊したとなると』
「・・・国土錬成陣を知っている錬金術師がいるってことか。確かにヤベェな。」
『そうだろう。せっかく、武器庫にするとしつこく主張する意見をなんとか裏交渉して丸め込んで、壊そうと調査した途端、コレだ。全く・・・』
武器庫・・・北部の女将軍だろうな、その意見。
『しかも、まるで穴がないかのようになっているなどと・・・そんなことは有り得ない。術は発動していたし、完成していたハズなんだが。』
「報告書にはほかに何も?」
『錬成した跡がないか確認したが、「そんなの、俺にわかるわけないでしょ」と威張られた。どうして、こう、どこもかしこも人手が足りない上に使えるヤツがいないんだっ。』
あー、その報告した人、絶対ハボック少尉だ。確かに一般人に錬成の跡はわからないが、それを上司である大佐に悪びれずに報告するのはあの人しかいない。
「自然に壊れた可能性はないのか?崖崩れとかさ」
『それも調査済みだ。穴に土砂が流れ込んだんなら、穴の上部は窪み、少なくとも斜面が発生していなければならないのだが、そんな不自然な地形はしていないそうだ』
・・・ってことは、やっぱり錬金術師が関わっているのか。
『そういうことで、鋼の』
「断る。」
「ちょっと兄さんっ!?」
アルが驚いている。確かに調査しなくちゃいけないことだが、何も大佐の命令で行く必要はない。
『まだ、何も頼んでいないのだが?』
「ここまで聞けばわかる。調査しに行けっていうんだろう。」
『話が早くて助かる。』
「なんで、俺たちが行かなきゃならないんだよ。もう一般人だぞ。俺は錬金術師でもない。」
『だが、錬金術の知識はあるだろう。調査して、本当に錬成によるものかどうか確認して欲しい。』
「だから、なんで俺たちが・・・」
『この錬成陣を知っていて、ヒマな関係者は君たちくらいだから。・・あまり広めていいことではない。他の国家錬金術師に知られたら・・・あいにく信用できる錬金術師は少ない。この錬成陣を発動したらという誘惑に負けてどんなことをするかわからんからな。』
確かに。あんなでっかい錬成陣、発動させたくなるかもしれない。錬金術師なら。だが、ヒマ人扱いはひどくないか。
「あー、俺たち挨拶回りがやっと済んで、昨日帰ってきたばっかなんだよ。俺たちだって忙しいの、ヒマなわけじゃない。」
『・・・そうか、そこまで言うのなら、仕方ない。別の人に・・・とても気が進まないのだが、か弱いご婦人に頼むしかないな。』
「か弱いご婦人って?・・・もしかして」
『イズミ・カーチス。彼女もこの錬成陣を知っている、そして信頼できる数少ない錬金術師だ。彼女に頼むよ。病弱でとても大変そうだが、鋼のが断るのでと言って頼むしかないな。』
「やめろっ!そんなことしたら半殺しにされるだろうが。」
隣でアルもムンクの叫びポーズをしている。想像するだに恐ろしい。
『君たちは忙しいんだろう?彼女ならきっと病を押して引き受けてくれるだろう。いや、不義理な弟子を持つと師匠は大変だ』
「わかったっ!!俺たちがやる。調査するから。」
『嫌々引き受けてもらうわけにはいかないよ。イズミさんなら・・・』
「やります。やらせていただきますっ!!」
『最初からそういえば話はすぐ済むのだよ、鋼の』
絶対、いつか復讐してやる、このアホ大佐!
『東部のアーカルという村にハボックがいる。合流して、詳しい話は彼から聞き給え。』
あいにく、ばっちゃんもウィンリィも外出中なので、勝手に俺が出た。
「はい、ロックベル・・・」
『鋼の、やっと捕まった』
「あぁ、大佐か・・・?久しぶり、そういえば大総統補佐になったんだって?じゃ、補佐か」
『なんでそっちで略す。大総統でいいだろう』
「嘘つきになるじゃねぇか、それに補佐の方が似合うし、で、補佐、何か用か?」
『そういえば、君はもう鋼の錬金術師じゃなかったな・・・じゃ、呼び方を変えよう。お豆・・・』
「誰が豆粒ドチビかぁ!?」
勢いのまま受話器を叩きつける。
「・・・兄さん・・・今の電話、お客様じゃないよね?」
「心配すんな、アル。アホ大佐だ。」
「それならいいけど、ウィンリイに怒られるかと・・え、大佐?久しぶりだね、何の用だろう?」
「さぁ、用件聞く前に切っちまったから」
再び電話が鳴る。
「アル、お前出ろ。また切る自信がある。」
「ダメだよ。自分から切ったんだから、ちゃんと謝らないと。」
「なんで、俺が謝らないといけないだよ。大体、大佐が・・・」
「早くしないと電話切れるよ。」
ったく、
「はい、」
『鋼の、いきなり切るのはヒドイと思うぞ。それに、何度も電話するほど私はヒマではない。』
「奇遇だな。俺も何度もいけすかない大佐と話すほどヒマじゃない。」
『君と言葉遊びをしている場合じゃない。真面目な話だ。国土錬成陣のことなんだが』
「!?そういうコトは先に言え。国土錬成陣がどうした!?」
『君、何かしたか?』
「はっ?」
『そうか、君ではないのか。アルフォンス・エルリックも何もしていないのか?』
「どういう意味だ?」
『いいから、確認したまえ』
相変わらず、無駄に偉そうにしやがって。だが、ことがことだけに無視もできない。
「アル、ちょっと・・・」
「兄さん、ちゃんと謝った?」
「なんで俺が・・・じゃなくて、お前、ちょっとこっち来い」
「もう、代わりに謝るなんてしないよ。」
「そうじゃなくて、国土錬成陣・・・お前何かやったか?って大佐が」
「国土錬成陣!?何かって何を?」
「大佐、聞こえたか、アルも何もしていない」
『そうか・・・君たちでもないのか。マズイな。』
「で、何がどうなってんだ?」
アルと二人で受話器を挟むように話を聞く。
『ようやく新政府も軌道にのってきたのでな。あのまま国土錬成陣を放置するわけにもいかんだろう。とりあえずセントラルの錬成陣だが、水路や避難路に残すという意見も出たが・・』
「それ、マズイだろ」
『あぁ、この国に錬金術がある限り、どんな悪用をされる恐れがあるかわからんからな、有効活用するという意見は説得して、既に半分ほどは破壊している。』
説得って・・・絶対脅しだろうな。
『あと、第5研究所は地下道も含めて完全撤廃、今、他の研究所も移転する準備を始めている。これでセントラルの錬成陣は問題ないのだが・・・』
「・・・あの、スロウスっていうバカデカいホムンクルスが掘ってた国境付近の錬成陣が問題なのか?」
『そうだ、やっとそっちまで手がまわせそうになったので、調査したところ、既に東部で3ケ所壊されていた。』
「壊されてたって・・・?」
『壊されていたというのは適切な表現ではないな。報告書によると、まるで最初から穴なんかなかったかのようになっていたらしい。』
「ふ~ん・・・まぁ、良かったんじゃねぇの、あんなもん、あっても困るんだから壊れてたほうが」
『バカか、君は』
「ぁあ!?」
『誰が壊したかというのが問題だろう。壊したということは、アレがなんであるか知っているということだ。しかも最初から穴がないかのようになっているなどと・・・』
「誰かが錬成したってことか?」
『そう、考えるのが普通だ。もし錬金術師が錬成によってアレを壊したとなると』
「・・・国土錬成陣を知っている錬金術師がいるってことか。確かにヤベェな。」
『そうだろう。せっかく、武器庫にするとしつこく主張する意見をなんとか裏交渉して丸め込んで、壊そうと調査した途端、コレだ。全く・・・』
武器庫・・・北部の女将軍だろうな、その意見。
『しかも、まるで穴がないかのようになっているなどと・・・そんなことは有り得ない。術は発動していたし、完成していたハズなんだが。』
「報告書にはほかに何も?」
『錬成した跡がないか確認したが、「そんなの、俺にわかるわけないでしょ」と威張られた。どうして、こう、どこもかしこも人手が足りない上に使えるヤツがいないんだっ。』
あー、その報告した人、絶対ハボック少尉だ。確かに一般人に錬成の跡はわからないが、それを上司である大佐に悪びれずに報告するのはあの人しかいない。
「自然に壊れた可能性はないのか?崖崩れとかさ」
『それも調査済みだ。穴に土砂が流れ込んだんなら、穴の上部は窪み、少なくとも斜面が発生していなければならないのだが、そんな不自然な地形はしていないそうだ』
・・・ってことは、やっぱり錬金術師が関わっているのか。
『そういうことで、鋼の』
「断る。」
「ちょっと兄さんっ!?」
アルが驚いている。確かに調査しなくちゃいけないことだが、何も大佐の命令で行く必要はない。
『まだ、何も頼んでいないのだが?』
「ここまで聞けばわかる。調査しに行けっていうんだろう。」
『話が早くて助かる。』
「なんで、俺たちが行かなきゃならないんだよ。もう一般人だぞ。俺は錬金術師でもない。」
『だが、錬金術の知識はあるだろう。調査して、本当に錬成によるものかどうか確認して欲しい。』
「だから、なんで俺たちが・・・」
『この錬成陣を知っていて、ヒマな関係者は君たちくらいだから。・・あまり広めていいことではない。他の国家錬金術師に知られたら・・・あいにく信用できる錬金術師は少ない。この錬成陣を発動したらという誘惑に負けてどんなことをするかわからんからな。』
確かに。あんなでっかい錬成陣、発動させたくなるかもしれない。錬金術師なら。だが、ヒマ人扱いはひどくないか。
「あー、俺たち挨拶回りがやっと済んで、昨日帰ってきたばっかなんだよ。俺たちだって忙しいの、ヒマなわけじゃない。」
『・・・そうか、そこまで言うのなら、仕方ない。別の人に・・・とても気が進まないのだが、か弱いご婦人に頼むしかないな。』
「か弱いご婦人って?・・・もしかして」
『イズミ・カーチス。彼女もこの錬成陣を知っている、そして信頼できる数少ない錬金術師だ。彼女に頼むよ。病弱でとても大変そうだが、鋼のが断るのでと言って頼むしかないな。』
「やめろっ!そんなことしたら半殺しにされるだろうが。」
隣でアルもムンクの叫びポーズをしている。想像するだに恐ろしい。
『君たちは忙しいんだろう?彼女ならきっと病を押して引き受けてくれるだろう。いや、不義理な弟子を持つと師匠は大変だ』
「わかったっ!!俺たちがやる。調査するから。」
『嫌々引き受けてもらうわけにはいかないよ。イズミさんなら・・・』
「やります。やらせていただきますっ!!」
『最初からそういえば話はすぐ済むのだよ、鋼の』
絶対、いつか復讐してやる、このアホ大佐!
『東部のアーカルという村にハボックがいる。合流して、詳しい話は彼から聞き給え。』
作品名:One Year Later 1 作家名:海人