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One Year Later 1

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「わかった」
『助っ人も現地で合流する。なるべく早く行って欲しい。じゃないと』
「わかったって言ってるだろう!!」
怒鳴ったついでに受話器を叩きつけた。あー、これ以上アホ大佐と話なんかできるか。
「兄さん、また電話途中で切っちゃって・・・」
「あんな脅しをする人間の話なんざ、もう聞かなくても十分だ。現地でハボック少尉に聞いたほうがいい。それにあの野郎、豆粒だなんていいやがって・・・」
「どうせ調べる気なら受けるって素直に言ったら。それに豆粒って・・・兄さん、背伸びたんだから、そんなに気にしなくていいのに。」
「まぁな。」
確かに背は高くなった。だが、長年の習性でどうにも豆粒扱いは許せないというか。
「だけど、確かにまだ大佐の方が背が高いかもね」
「いつか、絶対抜いてやる」
「そんなとこで競わなくても・・・あ、でも僕も高くなるし、そうだね、大佐より背が高いとちょっと嬉しいかも」
・・・・確かに、アルも背が、というか体つきが大きくなった。あそこから出たときはガリガリで折れそうな体で、背は確か俺の肩くらいだったハズだ。それが、今じゃ目線はほとんど変わらない。・・・背もかろうじて俺の方が高いくらいだ。
兄の権威の危機かもしれない。
「アル」
「何、兄さん。準備なら昨日荷物を解いたばかりだからすぐ・・・」
「お前、今日から牛乳飲むの禁止な。」
「は?何言って・・・」

ビュン
ゴス
どこから飛んできたのか、スパナがエドの頭に命中した。

「何言ってんの!?あんたは。」
「あ、ウィンリィ、お帰り。」
「ただいま、アル。」
「相変わらずいいコントロールだね。」
「ふふっ、このウィンリィ・ロックベルを舐めないでよ。スパナのコントロールなら使っても投げても誰にも負けないわ。」
「何しやがる、頭に命中したじゃねぇか!?痛ぇんだよ、何度も言うけど。スパナは投げるもんじゃねぇっ!!しかも頭から血が出るくらいの強さで投げるんじゃねぇ!」
「あんたが、バカなこと言ってるから、思わず投げちゃったんじゃない!」
「バカなことって何だよ?」
「アルに牛乳飲むの禁止だなんて、背ばかりじゃなくって心まで小さくなっちゃって。」
「小さい言うな!!」
「言うわよ、そんなバカなこと言い出すなんて信じらんない。どうせ、自分よりアルの背が伸びるのがイヤなんでしょう!?」
「う・・・うるさいっ!」
「そぉんなに背が欲しいんならあんたも牛乳飲めばいいじゃない。」
「嫌いだって何回言えばわかるんだ!」
「じゃぁ、アルが背を抜いちゃうかもね。アル、牛乳買ってきたから、たっくさん飲んでね。」
「う、うん」
「あー、アル、卑怯だぞ。この兄の言うことを」
「聞かなくていいわよ。」
「何をーっ!!」
「2人とも落ち着いて。それより兄さん、僕たち出かけるんじゃなかったの?」
「あ、そうだった」
「出かけるって・・・昨日帰って来たばかりじゃないの。」
「急に野暮用が入ったんだよ。ちょっと出かけてくる。」
「そうなの・・・え、今すぐ!?」
「あー、なるべく早くって言われたけど、そのとおりするのも癪だな・・・でも、もしかしてもしかすると先生が出張ってきたら、すげぇ怖いことになりそうだし・・・」
「?何だかわからないけど、シチュー食べる時間くらいはあるわよね。すぐ用意するから。」
台所に急いで向かったウィンリィを見てため息をつく。ちょっと寂しそうな顔をさせてしまった。確かに、昨日帰って来たばかりだから、しばらく家にいると思ったのだろうし、自分もそのつもりだったのに。
「ほんっとにあのアホ大佐・・・絶対、いつか復讐してやる。」
「まぁまぁ、早く調査して、またすぐに帰って来ようよ。」
「そうだな。こんな用事、ちゃっちゃと終わらすか。」
昨日、解いたばかりの旅支度をまとめながら、今回の大佐の依頼を軽く考えていた。
まさか、あんなことになるなんてこの時は全く予想もしていなかった。

―――――
列車に揺られること4時間。国土錬成陣・・・つまりは国境付近の村アーカルへは同じ東部といえども結構遠かった。駅から見える村の様子はリゼンブールとよく似ている。人より羊が多いだろう、牧草地帯が広がって、ただ違うのは、結構間近に山並みが迫っていることくらいか。要するにド田舎の駅に俺とアルは降り立った。
「よう、大将っ!久しぶり。アルも大きくなったな。」
「ハボック少尉」
相変わらずタバコをずっと咥えているバボック少尉が既に駅で待っていてくれた。
・・・なんか気に食わない挨拶をされたような。
「少尉、オレは?」
「あー、うん、大将もそれなりに大きくなった。」
「それなりって何だよ、それなりってっ!」
「細かいことを気にすると大きくなれないぞ。」
「うっるさい。」
「ハボックさん。すっかりお元気になられたんですね。」
「アルこそ。・・・ま、お互い元気でなによりだ。」
「そうですね。」
「オレを無視するな。」
「だって、兄さん。本当に小さいこと気にするんだもん。それより挨拶が大事でしょ。」
「小さい言うなっ。・・・あー、うん、少尉も元気そうで良かったよ。」
相変わらずどっちが兄貴かわからないエルリック兄弟を見て、微笑ましいと思うし、自分の体を気遣ってくれる優しさも嬉しい。しばらく触れていない人の優しさに、ちょっと愚痴りたい気持ちが出てきた。
「あー、それが良いことばかりでもない。」
「「?」」
「聞いてくれよ、うちの大佐。下半身のマヒが治って、リハビリして、数ヶ月内勤した後何て言ったと思う?『ハボック、ちょっと国境一周してきてくれ』って。俺は耳を疑ったよ。普通さぁ、半年前まで下半身不随で動けなかった部下にそんな過酷な命令出すか?実家の雑貨店に戻ろうかと真剣に考えたね、俺は。」
「「・・・・・・」」
「しかも、報告したら、『錬成した跡はないのか』って。そんなことわかるわけないっつうの。オレ一般軍人だよ。なのに、『無能め』って、どうよ、これ、酷くない!?」
「まぁ、そうだな・・・」
「うん、そうだね・・・」
「それにだなぁ、ずぅっとトンネルの中だし、たまに地上に繋がってても、寂れた炭鉱やら、人里離れた山だわ・・・これじゃ出会いなんて皆無、彼女作れるわけないじゃぁないか。」
「「・・・・・・・・・」」
結局、そこなのか。兄弟は思った。確かに過酷な現場だと思うが、そこに行きつく少尉に精神のタフさを感じる。適任かもしれない。
「あー、うん、よぉっくわかった少尉。こんな仕事さっさと終わらそうぜ。じゃ、そろそろ現場に行こうか。」
「そうだね、早く調査を終わらせて、報告して帰ろうよ。」
「ちょい待ち。もう一人来てからな。」
「「もう一人?」」
「あぁ、ってあれ、大佐から聞いてないか?エルリック兄弟ともう一人来るって言ってたんだけど。」
「?・・・あ、助っ人がどうのこうの言ってたような。」
ま、まさか先生じゃないだろうな。いや、大佐なら有り得る、いやいくら大佐でも、あの先生に頼みごとをするほど命捨てる覚悟はないだろう。心の中でダラダラ汗をかいていると、こんなところで聞こえるはずのない懐かしい声が聞こえた。
「エド、アル、久しぶり」
「「リン!?」」
作品名:One Year Later 1 作家名:海人