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Angel Beats! ~君と~

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第44話 Flat chest is best 希少価値だ

チャーの家事件を解決したSSS。
でかい身体が取り柄の男と、藤巻位の身長を持つ男と無彩色の白で使い物にならない状態になっている羽方はアニキの今までやってきた嫌がらせの償いとして、チャーの家でタダで働く事となった。
アニキは改心したのか、自慢のリーゼントを切り落とし、彼もタダで働く事になった。
と一件落着した所で、後はどうやって、

「登るのに日が暮れる程の時間を要した。どうやって海へ泳ぎに行くんだ」

『……………』

椎名が珍しい事に言葉を発する……。これが何を示すのか、それはもう解っていた。

「これは相当な問題だよ!どうするのゆりっぺ!?」

大山は分かりきっている事をわざわざ解説する。もうカツラは小枝の手により処分された。女だと勘違いされぬよう。

「それは……考えて」

『いないんだよね(ですよね)』

“後先考えず”とはこのことだ。目の前の事ばかり考えているだけではいけない。後ろのことも気にしなければならないのだ。
だが、ゆりは思い付いた。

「そこの4人組!バイクで来たわよね!?それを使えば時間を短縮させることが出来る!はい!これで解決よ!」

男達が使ったバイク、これを使おうと言うのだが、仲間の一人であり巨漢な男が言った。

「水を指す様なのですが……俺達、3時間掛けてここに来たのです」

「わざわざ、時間掛けて嫌がらせしに来たってどんだけよ!!アホだろ!!!良い歳(とし)してそんなことやってる暇があったら働けや!!」

「も…申し訳無いです……」

巨漢に似合わない心を持っている彼はゆりの怒りの線に触れない様にした。だからと言ってこれで解決した訳でもない。

「あー…もう!どうしろってんだ!!」

全員が頭を使う中、頭の中が音楽しかないキチが手を挙げた。

「良い事思い付いたぞ」

「何!?この際なんでも良いわ!言って!!」

「ここの『チャーの家』の裏にさ、かなり歩いたら崖があるだろ?」

およそ、120m位先には自然が作り上げた断崖絶壁。なんでも自殺の名所に選ばれているとか言われていないとかの伝説が存在する。岩沢はそこに何かあるのかと踏んだのだろうか。

「で、何?そこになんかあるの?岩沢さん」

ここに居る皆が、彼女の口からとんでもなく、想像もしない答えが返ってきた。



「そこから思いっきり海に飛び込むとさ、とても(海面で至るところが骨折して)痛いと思うけど海に行けるぞ」



『死ぬから!!』

いつでも噛み合わなかったメンバーが意見が噛み合った瞬間でもあった。

「そう言うと思ったぜ。ああ、それとついでなんだが魚でも釣ってきてくれないか?」

「海に行けないのにどうすんのよ!?」

海に行けなければ魚など釣れない。そして泳げもしない。崖から命懸けのダイブをしなければならない。
それは、あくまで岩沢の方法論。方法があるなら別の方法も存在する。

「さっき岩沢が言ってくれた通り、崖から海に行けるぞ。ただし、別の方法だがな」













裏をダラダラ歩く事、5分弱。
確かに崖。風と雨によって自然に削られた崖以外何物でもない。あるとしたら木で建てられた小屋のみで後は何も無く、所々に草が生えているだけだ。もう、何も無い。もどかしいと感じたゆりは切り出した。

「で?チャー“方法”って何かしら?」

「知らないとは思うんだが、ここはテーマパークだったんだ。だが、あんま売れなくてな…まあ、こんな田舎だし、当たり前だな」

チャーはスタスタと一人で小屋へ歩き、金属製のドアノブに手を掛け入っていった。この流れだ、メンバーは思った。
爆発オチか、と。
どうせアレだ。またドッキリでも仕掛けるのだ、と。
ドルン!!
唐突にエンジンが掛かった車の様な音に全員が驚いた。小屋から出てきたチャーは満足そうな顔をして出てきた。

「テメーら水着とか持ってこい。泳げるぞ!」

満足した顔で疑問に思うがここは、

(『ドッキリに付き合うか(いましょう)……』)

仕方無く、従った。












「わーい!これで行けるんだねお兄ちゃん!」

「あ、あぁ。(大丈夫なのか…?)」

結弦の脳内には校長室に入ろうとした途端、巨大ハンマーが上から襲われ自分を窓から撥(は)ね飛ばされてしまう光景が浮かんでいた。

「更衣室は降りて少し歩いたトコにある。そこで着替えてくれ。分からなかったら斉藤が居るから聞いてくれ」

「『さいとう』?。新しく雇ったの?」

「まあな。釣りしているから一目見りゃ分かるから」

一通り言い終えるとSSSメンバー全員に、必ず持ってろ、と紙袋を渡し始めた。
別に変てつない紙の中にビニールが入っており、いたってシンプル。機械仕掛けをしようもない薄さで全員は警戒せず素直に持ち、チャーに小屋へ案内された。
そこには、ジェットコースターがあった。
ジェットコースターとしか言い様が無い。

「Roller coaster? In the house……ナゼ?」

TKが発音良く言うが、日向曰く、英語は苦手なこと。

「で?どうすんのよ?」

「乗ればいい。景色はそこそこ楽しめる……いや、そんな暇無(ひまね)ぇか」

ボソリと、小さな声を言うと、

「じゃ。お前ら乗りな」

許可が出ると一早く直井は音無に声を掛けようとした。
これはチャンスだ、と。
何故か、SSSメンバー全員に女ではなく、『男』と思われている。正真正銘、女である彼女は音無とペアにならぬ様、

「音無さ――――」

「お兄ちゃん一緒に乗ろう!一番前で!!」

声を掛けるも妹に先を越されてしまった。

「え?あ、ああ。分かった」

(音無さんの妹は神聖だ……仕方無い)

「いっえーい!!みゆきち乗ろう!!」

「うん」

「じゃ、うちらは後ろに乗るか」

「ま。そうだな岩沢」

「よし、大や――」

「一緒に乗ろうよ!ううん強制的に♪」

「え!?う、ううん分かった。小枝さん」

「では、メガネキャラ被り同士乗りましょう竹山さん」

「良いですよ。クライストとお呼び下さい」

「ゆりっぺさん、どうですか?」

「良いわよ」










「んで……何でお前が隣なんだ…」

藤巻は大山が小枝に取られた為、隣に居る直井に愚痴をこぼす。
椎名は一人で一番後ろに座っていた。

「仕方無いだろ余り者なんだ。(ここを乗り越えれば音無さんとイチャイチャ出来る!!)」

そのジェットコースター……多少、改造されているが何かがおかしい。
乗るまでは普通のジェットコースター。
安全の為にレバーがある。
が、これにはまず、

『あー…アテンションプリーズ』

「拡声器使わなくても聞こえるよ!」

「気分を出してるんだ!突っ込むな大山!」

一呼吸し、続ける。

「安全の為、右にあるシートベルトを必ずして下さい。し終わったら、上のレバーを下に引いて下さい。後は気力を持って下さい」

“気力”。ここで言う、勇気だろう。
そして手元にある赤いボタンを押すと、ジェットコースターの前にあった金属製のシャッターが上へ上がっていく。
作品名:Angel Beats! ~君と~ 作家名:幻影