二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

初音ミクの崩壊~0と1の狭間で~

INDEX|4ページ/4ページ|

前のページ
 

第一楽章:起動


8/1 01

音楽が…流れて…いる?



「う…」
眠い…。朝、か?
音楽が聞こえる。つか、この音楽は、携帯の着メロだ…
「はい…もしもし…?」
鳴り止まない携帯に出る。
「やっと出た!時川君!?今日はどうしたの?」
えぇと…聞き覚えのあるこの女性は…
「と・き・が・わ・君!?一時間目が始まっても出席してないようだから連絡したんだけど?」
あぁ…担任の野片先…

あ、今日、出校日。

慌てて時計を確認。
9時5分
うむ、もしかしなくても遅刻だな。

「すんません…先生。…頭が…重く…て、音が…頭ん中で…反響する」
出来るだけ具合が悪そうな声で言ってみる。
「大丈夫!?今日は欠席にしておくから、早く治すのよ?」
「は、はい…。すんません」



電話を切る。
ベッドから這い出て、携帯に向かって深々と頭を下げる。
すんませんでしたぁー!!
懺悔、終了。

我がクラスの担任である、野片先生は、とても朗らかで、親しみやすい、面倒見の良い先生だ。…怒ると洒落にならんが。
独り暮らしをしている俺の事も、よく気にかけてくれる。

え?ずる休み!?
仕方ないだろう…どうせ遅刻なんだし、どうせ授業は平和学習しか無いんだし…。

「ぅ…ん~」
大きく伸びをして、ふぅ、とため息。
「なんかあったっけなぁ~」
冷蔵庫をごそごそ漁る。
一応、独り暮らしをしているもので、家事全般は全て出来る。少なくとも、その辺の同級生よりは上手い自信がある。
「ん~、スーパーで買って来るかな…今日は…火曜市か。昼のタイムセールでまとめ買いすっか」
オバサン臭いと言うでない。お金は貴重なのだ。限りあるのだ。有事に備えて貯金せにゃならんのだよ、諸君!
「中2で主夫みてぇな独り言なんて泣けるぜ…」

せっかくの臨時休日だ。リビングでTVでも見ながらゴロゴロしよ…。
そう考えつつリビングに向かい…

固まった。

誰………?
そこのソファーで横になっているお嬢様…。

脳ミソが寝起きモードから通常モードに切り替わる。
昨日の一連の事件が蘇る。
「昨日の少女A?……じゃなくてロボA!?」
そーいや昨日、とんでもない事件に巻き込まれたんだった…。
「もしもーし…」
近づいて声をかける。
「…」
反応無し。少女は眠っている!
「もしもーし…朝ですよぉー?」
軽く揺すってみる。
「…」
応答無し。少女はぐっすり眠っている!
さて、困った。どうしよう…。

ピンポーン

突然のチャイムに軽く飛び上がる。
「誰だよ…こんな朝っぱらから」
ちらり、と眠り姫に目をやったあと、玄関に向かう。

「ぁい~?」
玄関をあけると、制服姿の豊が立っていた。
「おす。入るぞ?」
「お、おう」
とりあえず家の中に入れる。
「急にどうしたんだよ。つかお前、学校は?」
「昨日言っただろう?少女について調べて、明日報告する。って。拓馬が学校に来てないもんだから、俺もサボタージュ」
そういや昨日、そんな事を言ってた気がする。
「あれだろ?少女の事が気になって、外出できなかった。違う?」
リビングに向かいながら豊が言うが、残念ながら違う。ただの寝坊だし、少女の事は完璧に忘れていた。
「ふむ、まだ彼女は夢の中…か。あれから一度も目を覚ましていないのかい?」
「あぁ、多分…」
俺が寝ている間に起きた痕跡も無い。

「なぁ、豊…」
こらえきれなくなって、訊ねてみる。
「その少女って、ロボット…なんだよなぁ…」
「あぁ」
「何で起きないんだ?スイッチ入ってないとか?」
俺の問いに豊は一つため息をはくと、持っていたコピー用紙の束を差し出した。
「彼女の仕様だ。読んで分からないことがあったら、聞いてくれ」
全部で7、8枚くらいあるだろうか。文章と表でびっしり埋まっている。

以下、内容を抜粋。


商品名:高機能多目的ロボット-初音ミク-【歌唱特化型】

特徴
自己学習型自立人工知能搭載

自己発電装置搭載

内部機器自己洗浄機能搭載

24bitフルカラーアイカメラ搭載

独自開発HEART搭載



…分からん…。
「なぁ、豊。書いてある単語の意味が、よぅ分からんのだが」
「簡単に説明すれば、人間と同じように、見て、学び、記憶し、忘れ、育つ。と言うことだ」
おぉ、何かすごそうだな…。
「ちなみにこのHEARTってのは?」
「最後のページ」
最後のページを見ろ。と言うことらしい。
ぇえと…なになに?

「HEARTとは、
Humanity
Emotion
Artifical
Realized
Technology
の略であり、弊社が20年かけて培ってきた独自の…」

咳払いを一つ。
豊にコピー用紙を返す。
「訳してくれ」
豊は盛大にため息をついたあと、訳してくれた。

「人間らしい、
感情を、
人工的に、
達成した、
科学技術。
略してHEART(心)だ」

略さんでいい、略さんで。何事も分かりやすいのが一番、シンプルイズベストだ。
とは言えず、(豊を怒らせたくない)感心したように頷いてから、もう一度聞く。
「で?結局何が言いたいんだ?そのヒートとやらは」

ぷち

何かが切れる、音がした。
「!ヒートじゃないっ!HEARTだ!!ハート!!分かるか!?コ・コ・ロ!!彼女は俺たちと同じように感情と心を持っているんだっ!!」
“!”の連打が返ってきた。
「まぁまぁ、よく分かったから、そう“熱く”なるなよ」
洒落たギャグで落ち着かせようとしたんだが。
「…」
わぉ、殺気。



肩で息をしていた豊を落ち着かせ、麦茶を差し出す。
その後も、豊による分かりやすい説明が続いた。



以下要約

このロボットの名前は、初音ミク。

歌を歌うためのロボットだが、人間が行う全ての行動を真似出来る。

呼吸=体内にたまっている熱を放出する。(ファンの役目)

まばたき=アイカメラのくもり、汚れふき。

水を飲む=体内を循環する冷却水(ラジエータ)の補充。体内の機器の洗浄水。

物を食べる=圧縮し水分を抽出したあと、蒸留し、水を作る。
必要性は無い。

眠る=ハードディスク内の情報の整理。自己発電。体内の機器の洗浄。(約20時間以上連続して起動し続ける事は推奨できない。一度の睡眠は、3時間から9時間)

トイレ=使用後の洗浄水の排出。食物をとった場合、しぼりかすの排出。(一日に一度。必須)



「へぇ~。すげぇな…。まさしく人間そのものじゃないか…」
「あぁ、だからこそ、世間から強い批判を受けたんだ」
ふぅん…そんなもんかねぇ?すげぇのが出来たんなら、皆で喜びゃ良いじゃねぇかよ。
その時。
視界の隅で、何かが動いた。

少女が、目を覚ましたのだ。