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Muv-Luv Cruelty Mermaids 1

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10.Return to the Base



1998年12月27日午前
アメリカ・サンフランシスコ基地司令室


欧州派遣より帰還したキャシーは帰還報告を行うためそこにいた。

「そうか…ルコーニ少尉が…」

「申し訳ありません。私の不注意でした。」

頭を下げるキャシー。その言葉に嘘は無かった。しかし、今までだって仲間を失ってきていた。それでも慣なれない。いや、そんな物に慣れたくはない。

―貴女達の武器よ。

クリスの言葉を今はただ噛み締め、キャシーは前を向いていた。

「…仕方の無いことだ。あの欧州に行って生きて還ってこれた方が行幸だ。君はルコーニ少尉の分も生きて任務を遂行しろ。」

「は…」

「ところで、君には2つほど通達がある。」

「…何でしょうか?」

司令は口調を改めて、キャシーに伝えた。

「近いうちに補充の衛士が来る。…9人程な。」

「―!それは一体…」

9人の補充。それは即ちキャシー達を含め12人の中隊規模になることを意味する。

「今回の欧州派遣の戦績から、マーメイド小隊は中隊へと格上げされることになった。それに伴い、フォード中隊は大尉に昇進、現段階で小隊にいる者を中尉に格上げ…と言いたいところなのだが。」

そこまで言って司令は一度説明を切ったキャシーが怪訝そうな表情を見せると、再び説明が再開される。

「フォード"中尉"はこれより日本に向かって貰わなければならない。国連からの召集だ。来年の大規模反抗戦に備えて衛士を揃えておきたいそうだ。そこで我々から…というより、海軍からは1名選出しろとのことだ。元より、同盟を破棄した我々など、本来ならば受け入れたくもないのだろうがな。国連軍なだけ、少しはマシというものだろう。」

国連軍に派遣というポイントにキャシーは注目した。恐らくはクリスの采配だろうとの予測も立てていた。しかし、海軍から1名という言葉には違和感を覚えていた。

「…質問の許可を。」

「ああ。なんだ?」

「私の派遣は何時からでしょうか?また海軍から、と言うことは陸軍その他からも派遣が為されるのでしょうか?」

「年明けての3月だ。因みに、補充の衛士も3月に来る。だからウィルキン少尉が指導に当たるという段取りなのだ。…陸軍、海兵隊からも派遣が行われる。」

陸軍からという言葉にフィールの顔が過る。しかし直ぐにその可能性はないと判断した。
フィールが来てしまえば、情報を得ることが困難になる。クリスが何としてでもそれを阻止してくるだろう。

「なるほど…了解しました。」

「…そうそう、話が逸れてしまったな。その様な事情より、フォード中尉は今暫く"中尉"として派遣する。派遣任務より帰還し次第、大尉に昇進とする。その間、ウィルキン少尉を中尉とし、フォード中尉の代わりに訓練を行ってもらう。…他に質問は?」

「私は3月にいきなり日本へ赴くのでしょうか?」

「どういう意味だ?」

「流石に何も知らない極東最前線にいきなり放り出されて闘うのは些か不安なのですが。」

「…ふむ。」

「ですから早めに日本に入って、実情を可能な限り見ておきたいのです。」

キャシーは"ある事"をするために日本に早く行く必要があった。だが、顔には出さず司令を窺う。
司令も問題は無いと見て、首を縦に降った。

「…分かった。国連には私から言っておこう。早ければ明日にでも日本に行けるだろう。他には?」

「ありがとうございます。…いえ。」

「ではもう行っていいぞ。…ああ、そうだ。フェミニ・ルコーニ少尉は君の案の通りにしておく。」

「ありがとうございます。」

フェミニはこれで後方で暫く自分を見つめられるだろう。
キャシーは司令の心配りに感謝した。
思えば司令は今まで「貴様」や「貴官」といった言葉を使用していない。
衛士達は「叩き上げだからそういった言葉を知らない」とか冷やかしているが、キャシーにとっては無駄な壁を感じることなく司令との会話をすることが出来た。
そのため一層司令の言葉に強く心動かされ、自分もあの様な上官になると切に望んだ。




◇◇◇




1998年12月27日午後
アメリカ・サンフランシスコ基地ブリーフィングルーム

「…以上。フェミニは早速だけど出向の支度をして。セリーナ、私の居ない間、補充の衛士の事を頼んだわよ。」

「「了解!」」

「よし、解散!」

――――!

敬礼を済ませると、キャシーも日本へ向かう支度をするため自室へと戻った。司令の計らいにより、現地入りを早めに行うことが可能となったためだ。

―私も前に進まなきゃ。

瞬間、レイン、フェミニ、セリーナ、フィール、クリス、ユウキの顔が頭を過る。
万感の思いを胸にキャシーは、まだ見果てぬ地へと赴くため、準備を開始した。




◇◇◇




1998年12月27日夕方
アメリカ・サンフランシスコ基地PX

「じゃあ、フェミニ、キャシーの新天地での成功を願って…」

「「「乾杯!」」」

この日、セリーナの計らいにより、ちょっとしたお別れ会が催されることとなった。勿論、マーメイド小隊内でのひっそりとしたものであったが。

「フェミニは明日出発なのよね?」

「はい。グルームレイクで年を越すことになったので。」

「そう。ネバダは暑いわよねぇ…フェミニ、溶けないようにね?」

「溶けませんッ!」

キャシーのからかいにフェミニはムキになって食って掛かる。しかしキャシーには分かっていた。フェミニのテンションの高さが作られていることを。

「あらあら。でもまぁ、彼処の衛士はエリート揃いよ?喰われないように気を付けなさい。」

「はい。でも、フィールさんも一緒のようなので心強いです。」

「フィールにあまり迷惑掛けちゃダメよ?私が怒られちゃうわ。」

「うぅ…気を付けます…」

とは言いつつも、フィールには事前に話をしてある。彼女とは定期連絡も取ることになるだろうし、一先ずは大丈夫だろう。
そう考えながらキャシーはグラスのアルコールを空ける。

「でも、私よりもキャシーさんの方が大変なのでは?」

「ん?何が?」

「日本って島国で国土が小さいのにも拘わらず、ハイヴを2つも抱えてるじゃないですか。それにキャシーさんの行く場所って、そのハイヴの目と鼻の先にある前線基地ですよ。明らかに私より厳しい状況だと思います。」

「まぁそうなのかな。私が行く場所の、近いハイヴって…」

「…"ヨコハマ"だったかしら。」

「そうそうセリーナ。んで、なんか今回派遣される基地の副司令がかなりの曲者らしいのよ。」

「あ、その話、聞いたことあります。何でも、利害が一致しない相手とじゃないと決して手を組まないとかなんとか…」

「へぇ〜」

キャシーはこの時、初めて日本の副司令の性格を知った。それと同時に自分が何故任官前に日本に赴く必要があるのか、朧気ながら想像できた。

―なるほど。クリスは副司令の事を知っていた。だから私は任官する前に"私が副司令にとってメリットのある存在"となるための"材料"を入手させようとしていたのね…それに任官する私は"アメリカ人"だから、余計にその必要が出てくる…
作品名:Muv-Luv Cruelty Mermaids 1 作家名:Sepia