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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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Heroes come!




形状に歪みや尖りのない、調理に使うボウルのような均整のとれた円形の盆地。
(下田のときと、同じ・・・・・・?)
下田の倒れていた場所にあった不自然なくぼみ。
ほぼ同一のサイズのクレーター。
「・・・・・・ドーパント。やはり永田はガイアメモリの所持者か」
照井は苦々しく呟く。
ガイアメモリ。
この風都の裏の世界に流通されるという、悪魔のアイテム。
違法の生体感応端末として扱われているそれは、過去にとある大組織よって人知を超えたテクノロジーを用いて大量に生産されていた。
そのメモリには地球誕生以来の記憶情報に相当する膨大なエネルギーが内包されていて、使用者をその記憶に沿った怪人、ドーパントへと変貌させる。
例えば、溶岩の記憶をもつメモリを挿せば、その肉体は高温の溶岩石となり。
例えば、T-レックスの記憶をもつメモリを挿せば、その肉体は恐竜そのもとなる。
「・・・・・・『プレス』のメモリ。プレス・・・・・・つまり『圧迫』か。おそらくヤツの能力は何もない空間からモノを押し潰すことが出来るのだろう」
照井はガイアメモリの名称、攻撃の状態から永田の能力を一目で看破した。
「・・・・・・もしそうなら、これほど暗殺に向いている能力はない。術者は離れたところからターゲットを攻撃すればいいし、力を調節してクレーターなどの証拠を残さなければ、ターゲットは事故に巻き込まれたと周囲の人間は判断するだろう」
照井は若干の戦慄を覚えながら永田の力を分析する。
永田は照井の恐れた顔が気に入ったのか、調子に乗って笑い出す。
「でははは! み、見だが! ご、ごれがおでの実力だ! ごの力! 人間を越えるずごい力! じ、じかもごの力はおでと同じ劣化品! おでと同じ境遇のメモリなんだ! ご、ごの力でおではおでをバガにじでぎだ連中を全員ぶっ倒じでやるんだ! あの工事現場の連中みたいに、事故にみぜがげでなっ!」
自分に力があることを宣言する永田。
そしてその宣言は、今までの土木作業員の事故が意図的に行われたことであることも示していた。
「・・・・・・下田に怪我をさせたのも、それが理由か?」
「ああん?」
翔太郎は立ち上がり、永田のほうを向く。彼が今どんな顔をしているのかは、帽子で目元が隠れているせいでよく見えない。
「下田? ・・・・・・ああ、び、昼間の工事バガのごどが。あ、あの野郎、まだおでのごどをノロマデブ呼ばわりしやがっだ! ど、当然の報いだ!」
でははは、と声高らかに笑う永田。
「・・・・・・そうか」
翔太郎は、帽子を被り直す。

「お前は、そういうやつってコトで、―――いいんだな?」

鋭い眼光。
いつもの日常のなかでは決してみせない、この街の悪と遭遇したときのみに見せる、左翔太郎という男のもう一つの表情。
「ひ、ひぃ!」
化物と化して人間などものの数ではないはずの永田が、人間相手に後ずさる。
しかしすぐに『自分は今化物で人間なんかに負けるわけがない』という自尊心と慢心が永田の気持ちを整えさせる。
「ふ、ふん。ぞんな凄んだってダメだぞ。お前みたいな普通の人間におでは倒せないんだがらな!」
ビッと杖で翔太郎を指差し高らかに宣言する。
翔太郎はふっと短い溜め息をおとす。
「そうかよ。―――で、フィリップ。調子のほうはどうだ?」
翔太郎の腰にはいつの間にかベルトが巻かれていた。
大きな赤いバックルのついた奇怪なベルト。
翔太郎はここにはいない相棒の名を虚空に問いかける。
"問題ない。結局使うのは君の体だからね"
「・・・・・・よし」
「な、なにをブヅブヅ言っでいるんだぁ!? あ、あまりの恐怖で、お、おがじぐなっだがっ! でははは!」
永田は翔太郎のことを笑い嘲る。
ここにはいないはずの、人間の声。
その声は翔太郎にしか聞こえない声だったが、彼は確かにここにはいない自分の相棒と短い会話をした。
「じゃ、準備はいいな? ―――相棒!」
翔太郎はベストのなかからあるものを取り出す。
「!? お、お前、ぞ、ぞれはまざか・・・・・・っ!」
今度は永田の目が驚愕で見開かれる。
パソコンのUSBメモリのような形状。
そのフォルムは機械であるはずなのにどこか有機的な印象があり、みるものに"生物の骨"を想起させた。
不思議な機械。
翔太郎の手に握られていたのは、永田と同じガイアメモリだった。
「ガイアメモリを使えるのはお前ら悪党だけの専売特許だと思ったかい?」
中心にアルファベットの"J"とかかれた黒いガイアメモリ。
「お、お前もおで達と同じ、ドーパント・・・・・・っ!」
「半分正解。『俺達』はドーパントじゃない。―――ダブルだ」
"翔太郎、そろそろ始めようか?"
(Cyclone!!!)
ここではない、どこかで電子音の囁きが聞こえる。
「あぁ、―――ハードボイルドに行くぜ?」
(Joker!!!)
それに応えるように、翔太郎はメモリのスイッチを入れる。
「「変身!!」」
ブゥン。
その声の直後に、翔太郎のベルトのバックルの右側に緑のガイアメモリが出現した。
ガチャ。
翔太郎は持っている黒いメモリをバックルの左側のスロットに差し込む。
ガチャリ。
そして翔太郎はベルトのバックルを真ん中から開いた。
(Cyclone!!!)
荒々しい旋風が翔太郎の周りを包む。
(Joker!!!)
黒い力の奔流が翔太郎の周りで迸る。
バックルは真ん中からセパレイトされ、その開かれたその形はまさしく、アルファベットの"W"―――!
「あ、ああ・・・・・」
永田は目の前で起こる異常な現象にただ驚愕していた。
否。
永田は知っていた。
街で語り継がれる、とある伝説。
その"風"は街が悲しい涙を流すときに必ず現れ。
元凶となる不吉をどこかへと吹き飛ばしてしまう。
名も知らぬ、一陣の風。
街はそんな名無しの風に名前をつけた。
ある者は親愛をこめてその名を呼ぶ。
ある者は敬意を表してその名を呼ぶ。
ある者は畏怖を刻まれその名を呼ぶ。
そして永田は、

「仮面、ライダー・・・・・・っ!!」

驚愕と戦慄からその名を口にした。
右が緑、左が黒のアシンメトリーの怪人。
顔もマスクで覆われており、その両目で光る赤い複眼が印象的だった。
仮面ライダーW(ダブル)。
怪人でありながら怪人と敵対する者。
探偵・左翔太郎とその相棒・フィリップのもう一つの真実。
「ふ、ふん。ぞれがどうじだ!!」
永田はまるで己を叱咤するように、言い聞かせるように吠える。
「ぎ、貴様のごどはあの人から聞いでいる! お、お前はぎっど計画を障害になる、っでな!」
永田はダブルに杖を向ける。
「お、お前を倒せば、あの人の計画だっでうまぐいぐ! いずれお前は倒ず予定だっだんだ! で、手間がばぶげだっでものだ! い、今ごごで、おでがぶっ倒じでやるっ!」
さっきの驚きと戸惑いの様子から一転、禍々しい殺気をダブルに叩きつける永田。
恐ろしい怪人の姿で明確な敵意をぶつけられる。
常人ならそれだけで体がすくみ、戦意は喪失されてしまうだろう。

「ほう、面白い。翔太郎、彼は僕達を倒すらしいよ?」
「ああ、しかし冗談としては笑えるレベルじゃねーな」

しかし、それは『常人』だったらの話。