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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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この街の正義たる者




翔太郎はフィリップが検索したサイレント・キーパーのアジト(らしき所)へ向かうことにした。
そこで永田や光の怪人を見つけられれば、戦ってでも彼らの凶行を止める。
もし彼らに会えなくとも、おそらくサイレント・キーパーに通じる手がかりは見つけられるはずだ。
翔太郎はフィリップをみる。
先ほどの検索で体に無理がたたったのか、脂汗をかいて事務所のソファにぐったりと横になっている。
『問題、ない・・・・・・少し休めばまた検索が出来るだろう。・・・・・・どのみちダブルに変身すれば君の体を使うわけだし、僕には構わずに行ってくれ・・・・・・』
冗談っぽくそう言ったフィリップの顔は血の気が引いており真っ青になっていた。
「・・・・・・あの野郎。強がりやがって・・・・・・」
翔太郎は余計な心配をかけまいとするフィリップの精一杯の空威張りをしっかりと胸に刻みつけ、事務所を後にする。
「どこへ行く気だ?」
事務所を出ていこうとする翔太郎に問い掛ける声。
翔太郎はその声のほうに振り返る。
「・・・・・・マッキー・・・・・・」
風都署刑事、真倉瞬だった。
真倉は先日の共同捜査のときのような明るい表情ではなかった。
(・・・・・・こいつ、照井の様子をみてきたな・・・・・・)
翔太郎は伏し目がちの真倉の原因を推測する。
自分の上司が捜査の途中で追っているホシに返り討ちに遭う。
―――警察官にはよくある話。
自分の上司が最愛の奥さんに付き添われて病院のベッドの上で苦しんでいる。
―――警察官にはよくある光景。
しかし、警察官としてこれほど悔しくてやるせない事はない。
まして、自分たちがこの街の平和の守り手であることを信じて疑わない真倉にとっては容認できる事柄ではなかった。
「どこへ行く気だ、と聞いている」
平坦で静かな真倉の声。
その声はあくまで平静を装っているが、なかでは激情が渦をまいているのが感じとれた。
「・・・・・・」
真倉の気持ちを理解した翔太郎。
しかし、本当のことをいうわけにはいかない。これから翔太郎が向かうのは仮面ライダーたちを数瞬で撃破した化物たちの住処。
ただの人間の出る幕ではない。
「・・・・・・」
そして、その真倉の気持ちに対してかける言葉が、翔太郎にはみつからなかった。
照井と一緒にいながら守ることができなかった翔太郎には。
「・・・・・・ちょっとそこまで、な」
簡潔に述べ、翔太郎は真倉の横を通り過ぎ事務所を出ようとする。
「待てっ!」
今度は激情を隠さない怒号。
出ていこうとする翔太郎の肩をぐいっと掴む。
「離せ!」
それに怒号で応える翔太郎。
照井がやられて心中穏やかではないのは翔太郎も同じだった。
真倉の気持ちは深く理解しているつもりだった。
しかし、それを推しても今真倉と話をするほどの心の余裕が、翔太郎にはなかった。
照井は倒された。
亜樹子はそれに付き添って動けない。
フィリップはまだ体調不良で苦しんでいる。
翔太郎をダブルと知る者たちは今身動きが取れない。
しかし、敵であるサイレント・キーパーは今にも不吉な"計画"を実行に移しかねない。
有り体に言って翔太郎は焦っていたのだ。
「探偵、貴様何か掴んでいるな! 警察官である俺に教えるんだ!」
真倉は翔太郎の前に立つ。
「どくんだマッキー、俺は行かなきゃならないところがあるんだ!」
「やはり何か知っているようだな! 教えろ! ここから先は警察の仕事だ! 一般市民がしゃしゃり出るな!! さぁ、敵アジトの場所を俺に教えるんだ!!」
「こ、の、」
こんなときにまで警察絶対主義か。
自分の上司である照井がやられ気が落ち着かないのは分かる。
しかし今、どっちが上でどちらが下かを言い争っているときではないことは真倉にも理解できると思っていた。
「いい加減にしろ! 今お前が動いたところで何とかなる話じゃないんだよ!」
「・・・・・・何?」
「あの照井がやられたんだぞ!? 相手はガイアメモリを持っている! お前や他の警官がやつらのアジトへ行ったところで返り討ちになるのがオチだ! 棺桶の山ができるってもんだぜ!」
翔太郎は熱くなってまくし立てる。
「ジンさんも言っていたろ! ドーパントがらみの事件ならお前ら警察よりも俺らのほうが上手く立ち回れる! およびじゃないのはお前らなんだよ!」
「ふざけるなっ!!」
真倉は叫ぶ。
「『上手く立ち回れる』だと? 『およびじゃない』だと? 冗談じゃない!! ジンさんがどういうつもりかは知らないが、俺からすればお前らは一般市民だ! 警察のように何も力を持たない、無力で助けなきゃならない掛け替えのない存在なんだ!!」
真倉は翔太郎の肩を掴む。
「俺たち警察が、命を賭して守らねばならない大切な人たちなんだ・・・・・・っ!」
その声は少し震えていた。
「マッキー・・・・・・」
真倉の声に、頭に血が上っていた翔太郎は少し落ち着きを取り戻す。
「確かに、我々はドーパントに対してまだまだ無力だ。ガイアメモリの流通もミュージアムがなくなった今でも止めることができない」
「・・・・・・」
「しかし俺は、警察は、その力不足を都合の良い言い訳にして諦めるつもりはない!」
それはいつか真倉が街の神父に語った言葉。
己の未熟さを認め、しかしまだ諦めない。
警察機構の超常犯罪に対する反骨の精神。
真倉は翔太郎との話で痛いところを突かれながらも、その理念を忘れてはいなかった。
「頼む、探偵。俺はこれ以上、犠牲者を出したくはないんだ」
「・・・・・・」
翔太郎は考える。
真倉は心の底から翔太郎の身を案じ、街を脅かす誘拐犯、サイレント・キーパーを止めたいと考えている。
正直、それは喜ばしいことだった。
照井も、亜樹子も、相棒のフィリップでさえも倒れ、翔太郎は孤立無援の状態で闘わなければいけないと思っていた。
しかし、真倉の言葉でそれは勘違いであることが理解出来た。
ここにも、街を守ろうとする高潔な精神があったのだ。
「お願いだ! 俺にサイレント・キーパーの居場所を教えてくれ!」
終には頭を下げる真倉。
「・・・・・・」
翔太郎は、その真倉の街を守ろうとする姿勢に心を打たれた。
これは事実。
翔太郎は、一人で戦っているわけじゃないことに気づかされた。
これも事実。
「・・・・・・」
しかし、
(・・・・・・足手まとい、なんだよなぁ・・・・・・)
本音の本音はコレだった。
どんなに奇麗事を並べても、真倉は所詮ただの人間。
最初に翔太郎が怒鳴ったとおり、彼が敵のアジトになんて行ったらものの数秒で棺桶に入るのが目に見えている。
「頼む! 探偵! このとおりだ!」
それでも頭を深く下げて懇願する真倉の姿は、ドーパントとの戦闘経験が豊富な翔太郎からみればドアホな自殺志願者にしかみえなかった。
「う、う〜ん・・・・・・」
翔太郎は困り果てていた。
真倉の熱意は本物だ。無碍に否定していいものではない。
しかし、かと言って敵アジトの場所を教えたら明日には弔いが一つ出てしまうかもしれない。
本当に、困った。
「いいじゃねーか。教えてやれよ、翔太郎」
困り果てた翔太郎とそんな気持ちは理解していない真倉の間に第三の声が割って入る。