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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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音と光の交差するところ




ヒュン、フッ。シュパ、ヒュン。
ヒュン、フッ。シュパ、ヒュン。
風を切り裂く鋭い音。
青い線と光の線が、室内を縦横無尽に奔る。
ヒュン、フッ。ドガッ! シュパ、ヒュン。
ヒュン、フッ。シュパ、バチィ! ヒュン。
その風切り音のなかに時折混ざる轟音や雷鳴。
ヒュン、フッ。バチィ! キィン! シュパ、ヒュン。
それらの音は決して互いに譲ることなく、牽制し合い、しかし決定打になることもなく、それぞれがそれぞれの攻撃の主導のチャンスを覗き合う。
(・・・・・・なるほど、確かに大した速さだ・・・・・・)
音速の時間軸のなか、照井竜ことアクセルトライアルは状況を分析する。
トライアルメモリによって音速移動が可能になったアクセルだったが、
ヒュン、フッ。シュパ、ヒュン。
それでも、ライトニングドーパントである検体番号68番の動きを目で捉えそれに対応するのは恐ろしく難易度の高い作業だった。
(・・・・・・この速さ、アクセルトライアルの移動速度をも凌駕するスピード。・・・・・・いかに百戦錬磨のダブルといえど、あのまま戦闘を続けていて勝てたかどうか・・・・・・)
実際にダブルはメモリチェンジをして68番闘いに挑んでも寸でのところまで追い詰められていた。ダブルと68番では戦闘における時間の支配力が違いすぎる。いくら力に分があっても、その力を発揮することは叶わず、いいようにサンドバックにされて体力を削られるのがオチである。
ヒュン、フッ。シュパ、ヒュン。
(・・・・・・そして、それはこのアクセルトライアルにも当て嵌まる・・・・・・)
音速と光速。どちらが速いかは自明の理。アクセルトライアルで高速移動が可能になったとしても、ライトニングの超高速にはまだ届かない。
スピード合戦では、完全にアクセルトライアルには勝ち目がなかった。
(・・・・・・だが、勝算がないわけではない!)
しかし、負けているのはあくまで戦闘の速度。
アクセルトライアルの眼光に熱い闘志が滾る。それは闘いを放棄した人間の眼ではなかった。
トライアルに変身したことによって高速移動が可能になった照井だったが、それでも68番との間にはまだ速度の開きがあった。
これは覆しようのない事実。
しかし闘いの勝算がないわけではない。
その理由は、トライアルとライトニングのリーチの差。
こと1対1の戦闘において相手の間合いの長さは重要な意味を持つ。単純な話、相手との体の密着性が低ければ低いほど自分が攻撃を喰らうリスクは減っていく。
締め技よりも投げ技、投げ技よりも拳撃、拳撃よりも蹴足、蹴足よりも刀剣・・・・・・。特に蹴足から刀剣に関しては武器も使用することもあり、リーチだけではなく、破壊力やスピードも格段に上昇する。
アクセルトライアルは愛剣・エンジンブレードを持っていたが、ライトニングは徒手空拳。ライトニングは相手の懐まで入らなければ攻撃できない。
これは武器を持つアクセルトライアルにとって、この差は大きなアドバンテージであると言えた。
そして、戦闘のエリートである照井竜という男がそのリーチの差を利用しないわけがなかった。
ヒュン、フッ。シュパ、ヒュン。
「・・・・・・」
アクセルトライアルは静かに、相手―――68番の移動音に耳を傾ける。
ヒュン、フッ。シュパ、ヒュン。
攻撃のリズムを読むために。
ヒュン、フッ。シュパ、ヒュン。
どんな攻撃にもリズムというものがある。それは使い手によって様々だが、その者の体に染み込んだ攻撃のパターンやスタイル、タイミングはそうそう変えることは出来ない。
ヒュン、フッ。シュパ、ヒュン。
そして照井竜は、既に68番の攻撃のリズムを掌握していた。
ヒュン、フッ。シュパ、ヒュン。
(・・・・・・次の次の移動で、ヤツは攻撃に出る)
ヒュン、フッ。シュパ、ヒュン。
(・・・・・・背面からの拳打攻撃。それに合わせて剣で応戦する!)
照井はバッと後ろ振り返る。そこには今まさに突進してくる68番の姿があった。
(ドンピシャリ(予想通り)! このまま拳ごと剣で叩き切ってやる!)
「うおおおお!!」
咆哮を上げ、剣を振り下ろすアクセルトライアル。
「・・・・・・っ!」
今さら勢いのついた突進にストップをかけることのできない68番はそのままアクセルトライアルに突っ込む。
「・・・・・・」
戦闘において、動きの速さというのは重要なファクターを占める。
「・・・・・・」
その理由は相手の攻撃の機先を制し自分の攻撃の主導を握ることが出来るからだ。
「・・・・・・」
この勝負の決め手は相手のよりもどれだけ速く動けるか、ではなくどうやって相手の意表を衝くのかということ。
「・・・・・・」
つまり、相手の動きを読み、相手の思考を読み、相手の思考の外すらも読みぬく戦略性が必要だ。
「・・・・・・」
その意味で、68番の戦闘の組み方は、

ヒュン、キィン!

及第点であると言えた。
「なっ!?」
と驚きの声を上げたのはアクセルトライアル。相手の拳ごと真っ二つにするはずだった自分の愛剣が、がっちりガードされている。
「・・・・・・」
もちろん、速さと電撃以外の性能がほぼ人並みである68番が生身で受け止められるほど、名剣・エンジブレードはなまくら刀ではない。
68番は"あるもの"を使ってアクセルトライアルの必勝の一撃を防いだ。
つい一瞬前まで、何も手に持たない徒手の怪人が手に持っていたもの、それは―――、

稲妻を集約してつくった、光の棒だった。

「・・・・・・バ、カな・・・・・・雷で棍棒をつくり出しただと・・・・・・?」
あまりの急展開。必勝を確信していただけに混乱からすぐに立ち直れないアクセルトライアル。
「・・・・・・」
もちろんその隙を見逃すほど、68番という戦闘マシーンは甘くはない。
ドドドドドドドドドッ!!
全身を光の棍棒でメッタ打ちに叩かれるアクセルトライアル。
「ぐあああ!!」
体中に毒針でも打ち込まれたような鋭い痛みが走る。
まだ先の闘いの傷も癒えていないこともあり、アクセルトライアルは思わず片膝を地面につく。
「う、うう・・・・・・」
「・・・・・・」
ドドドドドドドドドッ!!
しかし、そんな状態になっても68番の棒戟が停まることはなかった。
「ぐあああ!!」
ここが決め時だとばかりに、倒れているアクセルトライアルに乱撃を食らわす。
ドドドドドドドドドッ!!
「ぐうううう!!」
ドドドドドドドドドッ!!
「がはぁぁ!!」
ドドドドドドドドドッ!!
「ぎぃぃああああああ!!」
その部屋には、無機質な打撃音と男の悲鳴だけが響き渡った。