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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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街の異変




廃工場の屋根の上。
銀の煙が風に舞い月の光に照らされて怪しく夜空に一面に散りばめられる。
それはさながら煌びやかな宝石が詰まっている箱をひっくり返したような光景―――、
「ぬん!!」
「うおら!!」
ガキン! ドカ! バキ!
鉄と鉄を打ち鳴らしたような硬く剛い音。
「はぁ!!」
「あらよっと!!」
ドン! ガガガ!! ドゴン!!
工場の屋根の上で二人の怪人がまるで舞うように闘う。
正義の味方、仮面ライダーW(ダブル)。
サイレント・キーパー、宮部総一。
二人の怪人の実力は伯仲。互いが互いに必殺の攻撃を繰り出すが、互いが互いにそれを紙一重で避ける。みるものはその二人の洗練された闘いに見蕩れるかもしれないが、その攻防のやり取りはもはや将棋でいうところの千日手。局面の進展が望めない展開になっていた。
(くっ! これじゃラチがあかねぇ!)
いくら必殺必倒の攻撃を繰り出しても宮部が倒せないことに若干の焦りと苛立ちを覚える翔太郎。戦闘に集中できずつい他のことを考えてしまう。
(照井のヤツ、大丈夫なのか? 普通にほっぽり出して来ちまったけれどマッキーは? 何よりこうしている間にも、こいつのいう計画ってやつは侵攻しているのか・・・・・・)
考えれば考えるほど嫌なイメージが離れない。
「・・・・・・戦闘中に考えこととは、余裕だな!!」
「っ!」
気がつくと宮部の拳がダブルの顔面近くまで接近していた。
バチーン!!
豪快な音を立てて右ストレートを喰らうダブル。
「うおおお!!」
ズザザァー、と体を擦らせながら屋根の端っこまで吹っ飛ぶ。
「翔太郎! 戦闘中だ、集中したまえ!」
相棒のフィリップからそんな檄が飛ぶ。
「へ、分かっているよ!」
大したダメージではなかったので、ダブルはよっと勢いをつけて起き上がる。
「?」
不意に、屋根の上から街の様子がチラリと目に入る。
街の様子は一見すると特に異常はなかった。
夜の街らしく、静かで人気のない風景。
「・・・・・・な?」
しかし、目を凝らすと小さな異常がいくつも目についた。

街の住人が、少しずつではあるが獣のような身体に変わってきているのだ。

それはまるで、自分たちがいつも闘っているドーパントのような肉体に。
「なんだ、あれ・・・・・・?」
どう言葉を発していいのか分からないダブル。ただ思ったことを機械的に呟く。
「・・・・・・これがアークメモリの真の力だ」
そう言ったのはダブルに対峙している男、宮部総一。体中から、絶えず銀の煙を吐き出している聖人のような怪人。
街の異常に気づいたダブルに、宮部はゆっくりと静かに説明をする。
「・・・・・・私の体のダクトから吐き出されている銀の煙に触れた者は、少しずつではあるが、徐々にその身をドーパントに強制進化させられる」
宮部は言った。どこまでも、事務的で平坦な声で。そしてその説明はなおも続く。
「・・・・・・どのようなドーパントになるかはそのものが持つ欲望や素質次第。いわば、その者の心の裡を強く投影した姿形へと変貌させる」
しかし、と宮部は言葉を繋げ、
「この膨大な影響力とパワーの能力にも欠点があった。それは、

素質のないもの、あるいは肉体の変化に精神が耐えられないものは、心が崩壊を起こし死ぬ。

というものだ」
そう語る宮部の表情は変わらなかった。・・・・・・この後に及んで何の変化もなかった。
「な、にを、」
「言っている・・・・・・?」
理解が追いつかないダブル。否、言葉の意味は理解出来るが、言葉の意図が理解出来ない。
「・・・・・・その死亡率は、当時のミュージアムのコンピュータで試算させたところ、50%は死に至るという結果だった。しかし、私は長年の研究と度重なる調整の末、その確率を0.000002%まで引き下げることに成功した。・・・・・・これはアークメモリを知る者ならば驚愕する数値だ。私はここに連れて来た被験者たちに対してアークメモリを不完全発動させ、被験者たちの影響の様子を観察しメモリの調整を続けてきた」
宮部はあくまで事務的で無感情な口調を崩さない。
ただ、自分の研究結果を報告するような無味乾燥な言葉の羅列。
「・・・・・・全世界の人口に対して、0.000002%・・・・・・」
フィリップは口のなかで呟く。
「地球の全人類が71億人として、犠牲になる人数は、・・・・・・約1万4千200人。一つの都市に相当する人数だ・・・・・・!」
自分の言葉に戦慄するフィリップ。
「以前、ミュージアムがガイアインパクトを起こしてメモリの適合者とそうでない者を選定しようとしたが、・・・・・・今回の内容はあれと同等、いや強制的にドーパントさせてしまうことを考えればあれよりも深刻だ・・・・・・っ!」
「・・・・・・ガイアインパクト? ふ、私のメモリはガイアインパクトなどよりも遥かに高い生存率を確約できる。あんなものと一緒にされては心外だな」
「へ、やってることは同じじゃねーかっ!!」
翔太郎は吠えた。宮部のあまりに手前勝手な理屈に。
「全ての人間を進化させて救うだって? 冗談じゃない、それだけの被害を出せば、君は立派な殺戮者だ!!」
フィリップは糾弾した。宮部のあまりに自分本位な理想に。
「・・・・・・先ほどの繰り返しになってしまうな。・・・・・・しかし、理解が得られないのなら、何度でも言おう」
宮部はダブルをみて、言う。
「実験には多少の犠牲は付き物。―――瑣末な出来事だ」
そう言った宮部の瞳には力がなく、何かを諦観して、そしてそれは絶対回避出来ないことだと悟っているような冷たい目をしていた。
「・・・・・・フィリップ、もうこれ以上の話し合いは無駄だ。とっとと決めるぜ」
そう言った翔太郎の声には闘志が漲っていた。さっきはアークの高い戦闘能力に圧され、十分に集中出来なかった翔太郎だったが、宮部のこの発言で頭が完全に切り替わったらしい。
「もし宮部の計画が完成してしまったら、この間の『ナイトウォーカーズ・ウォーク』を超える甚大な被害が起きる。―――ここはなんとしても止めるよ、翔太郎!」
フィリップも同様に闘いに集中し始めた。同じ科学者として、宮部の冷酷すぎる発言は看過出来ない。
ダブルの凄まじいプレッシャー。二人の目的意識ががっちり噛み合ったときに発する強大な圧力。
「・・・・・・君たちがどんなに凄もうと、私はこの計画を止めるつもりはない」
その圧力を肌で感じながらも己を曲げない、研究者・宮部総一。
「・・・・・話し合いが無理ならば、―――力ずくで押しとおるまで!」
棍棒を構えて臨戦態勢をとる。
「そんなことは、」
「させない!!」
宮部が構えを取った行動を合図に、
「うおおおお!!」
「はぁぁぁぁ!!」
両者は、互いの意思を押し通すために、互いの元へ突き進んだ。