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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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科学が産んだ機械の子供




シュウゥゥ・・・・・・。
部屋中に何かが焦げた臭いが充満する。
「・・・・・・」
光の怪人・検体番号68番はその"何か"をどこまでも無感動な眼で見下す。
スミクズ一歩手前の人型。仮面ライダーAT(アクセルトライアル)だった。
「・・・・・・」
先ほどの戦闘で、68番は彼が動かなくなるまで雷を収束してつくった光の棒でめちゃくちゃにぶっ叩いた。
徹底的に。
二度と活動出来ないように。
「・・・・・・」
今は、『ちゃんと死んでいる』かを確認している作業中だった。
ドスッ!! バチィィ!!
68番はアクセルトライアルのわき腹に高圧電流入り蹴りを入れた。
「・・・・・・」
なおも観察を続ける68番。しかし今の蹴りでアクセルトライアルが目覚めることは言うに及ばず、ピクリと身じろくことすらなかった。
「・・・・・・敵性No.002の完全沈黙を確認」
そこまでやって、ようやく68番は一つの解を得る。
「これよりDr.桐嶋の命令に従い敵性No.001の追跡・殲滅を再開します」
そして休むことはなく、次の行動に移る。
主人の命令は絶対。例え自分の命が危険に晒されようとも、例え相手が何も罪のない人間でも、命令があれば無言で自分の命を放り投げ無言で相手を抹殺をする。
究極のキリングマシーン(殺人機械)。哀しいくらいに無音で、悲しいくらいに無色な犯罪人形。
「・・・・・・」
光の怪人は踵を返す。
今度はもう一人の自分の主、宮部総一と交戦しているであろう、もう一人の敵、仮面ライダーW(ダブル)を殲滅するために―――。

ジャリ。

不意の地面を擦る音。
聞こえたのは、68番の足元からではなかった。
「・・・・・・っ!?」
とっさに68番はその場から大きく後ずさる。
音が聞こえたのは、68番のすぐ後ろ、つまり、

仮面ライダーAT(アクセルトライアル)がいたところからだ。

「・・・・・・今の、わき腹、への、一撃、・・・・・・な、かなか、良い、気付けに、なったぞ・・・・・・」
その声は酷くしゃがれていた。全身に電撃をくらい大ダメージを負っている証拠だった。
しかしそこには人影が立っていた。
仮面ライダーAT(アクセルトライアル)。
音速の青き騎士はその身が崩壊しそうになりながらも、そこに立っていた。
「・・・・・・っ! っ!? っ!??」
68番は目を見開く。
バカな、もうヤツの息の根は止めたはずだ、まして立ち上がるなんて、ありえないっ!
その見開いた目はそう言っているかのようだった。
「・・・・・・ふん。・・・・・・俺には、俺の、帰り、を、待っている、人、がいるのだ・・・・・・」
立ち上がったアクセルトライアル。
その眼光は燃えていた。
轟々と。
唸りを上げる爆発染みた炎のように。

"・・・・・・お願い、約束して。本当に、絶対に生きて帰ってくるって"

そしてその瞳の奥にあるのは、とある最愛の家族。
「・・・・・・そういうわけ、だ。・・・・・・俺は、まだ死ねんの、でな。・・・・・・お前などに、この命を、くれてやるわけにはいかない・・・・・・!!」
その鋭い眼光は、目の前の敵、検体番号68番へと強く注がれていた。
「・・・・・・っ!!!」
ならば今度こそ、完全に活動を停止させるまで!!
そう告げるように68番はゴバッと地面を蹴って、アクセルトライアルまで突進する。
ピタ。
しかし最初の一歩で68番は足を止める。
「・・・・・・・」
まるで電池が切れたような、機械的な停止姿勢。
「?」
アクセルトライアルは怪訝に思う。
「ギ、」
バチ!
「ギ、イイヤアアアアアアア!!!!」
68番は金切り声の悲鳴を上げた。
ピカッ! バリバリバリバリィィーーーーッ!!
そして、体中から電流をスパークさせながら苦しみ出した。
「アアアアアアアア!!!!」
ヒュン、バコベキガコンドカドカドゴーン!!!
もがき苦しみながらも高速移動で縦横無尽に走り回りあたりを壊しまくる68番。
しかし、ターゲットであるアクセルトライアルには一撃だって当たらなかった。
「・・・・・・・な、なんだ? 一体何が・・・・・・??」
正直な疑問を口にするアクセルトライアル。
「アアアアアアアア!!!! あ、」
パシュッ!
そのうちに、68番の首筋から何かが勢いよく飛び出す。
ライトニングメモリが強制射出されたのだ。
「あ、ああ・・・・・・」
ドサリ
使用者である68番は、人間体に戻りそのまま気を失って倒れる。
手術着を着た10歳くらいの子供の姿があった。
「・・・・・・こ、子供!? い、いや、それもそうだが、これは・・・・・・?」
アクセルトライアルは一部始終を呆然とみていた。
使い手である68番の正体が子供であるということに戸惑いもあったが、それよりもさっきまで本気で自分の命を狙いに来た敵が突然苦しみ出して倒れたことのほうが驚きとしては大きかった。
(・・・・・・メモリの暴走・・・・・・いや、違うな。メモリのハイパワーに本体が振り回されたか・・・・・・)
ライトニングメモリ。
『稲妻の記憶』を宿したガイアメモリ。光速に近い機動力を誇り雷を操る能力。その戦闘力は言うに及ばず、そこにかかるエネルギーの消費量や負荷も強大だ。
(・・・・・・まして、使い手がこんなに幼い子供では、メモリの力に引っ張られるのは無理がない・・・・・・)
こんな幼子にガイアメモリを使用したことは、あとできっちりとサイレント・キーパーどもに責任をとらせるとして、とりあえず、メモリを回収しこの68番を保護することが先決。
アクセルトライアルは68番に近寄ろうとする。しかし―――、

ジャリ。

不意の、地面を擦る音。
それが聞こえたのは、アクセルトライアルの足元からではなかった。
「・・・・・・うぅ・・・・・・」
気絶しているはずの68番の腕が、動く。
「なっ!?」
「・・・・・・か、はっ・・・・・・!」
それどころか68番は、体を震わせながら生まれたての哺乳動物のようなか細さで起き上がろうとする。
(・・・・・・バ、バカな、一度気絶したのだぞ!? ・・・・・・まだ闘おうというのか・・・・・・!)
若干自分のことを棚に上げ気味だったが、アクセルトライアルはボロボロになってなおも起き上がろうとする68番に戦慄を覚えていた。
「・・・・・・う、うう・・・・・・」
目の焦点が合わず、涎を垂らして、半分意識がないのが見て取れる68番。
「・・・・・・ううう・・・・・・」
それでもライトニングメモリに手を伸ばそうとする。
「・・・・・・て・・・・・・き・・・・・はい・・・・・・」
よく耳を澄ませると何やらボソボソ呟いているのが聞こえた。
「・・・・・・敵・・・・・・排除」
それは、自分の意思で話す口調ではなかった。
「・・・・・・オーナーの・・・・・・命令は・・・・・・絶対・・・・・・」
まるで他人に強要されてしゃべっているような、無機質で機械的で不自然な単語の羅列。
「・・・・・・敵・・・・・・排除。・・・オーナーの・・・・・・命令は・・・・・・絶対・・・・・・っ!!」
熱に浮かされたうわ言のように何度も呟く68番。最後の言葉尻は悲痛な声色となりその目には一筋の涙が流れた。