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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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代打、街のヒーローに代わって、へタレの凡人―凡人―♪




「・・・・・・お前、今なんと言った?」
ピシっ。
宮部のその言葉で、場の空気は確かに凍りついた。
「化物と言ったのだ! こんなもの、地球上の誰一人だって望んじゃいない!!」
しかし、KYが基本な真倉俊はその変化に気づけない。
びゅん! ドコォ!
「ぐへぇ!?」
風の切る音がしたかと思うと、今度は反対側に吹っ飛ばされる真倉。
宮部がいきなりふっ飛ばしたのだ。
殺すことが目的ではないので、手加減はしたがドーパントの一撃を生身で喰らってしまった真倉は屋根の端までふっ飛ばされた。
「か、はっ・・・・・・」
真倉は思うように体が動かず立ち上がることができない。
「言葉を選べッ! 小僧ッ!!」
その這い蹲っている真倉に、宮部の怒声が一閃する。
「貴様なんぞに私の崇高な目的が理解できるかっ!!」
長年想い続けて来た揺るがない夢。
「超人の肉体だぞ!? 誰も傷つかず誰も悲しまない! みんなが笑って暮らせる世の中になるのだ!!」
それを何も知らない第三者に否定された。
ある程度事情を知っているものからの意見ならば、聞き入れはしないにしても怒りにまでは到達しなかっただろう。
しかし、今自分の夢を"間違っている"と評しているのは、裏のことを浅いところでしか理解していない一人の一般人。しかも空気読めなそう。
さらに、始末が悪いことにその者は宮部にとって夢の対象の一部。
守るべき、愛すべきこの街の市民のひとり。
そんな存在から、"守り方が間違っている"、"在り方が肯定できない"と叫ばれた。
宮部の心のなかには裏切りにも似た憤怒が駆け巡っていた。
そんな怒りの権化と対峙する、とりわけて何もない一人の警察官の言ったセリフはこうだった。

「・・・・・・お、お前は、何も、分かって、いない・・・・・・っ!」

痛みに脂汗を浮かべながら言う真倉。
「・・・・・・何だと?」
言っていることが理解できないとばかりに怪訝な顔をして真倉をみる宮部。
「お前は、ドーパントというものを、何も分かっていないっ!!」
「・・・・・・」
宮部はあっけをとられた。
今、この青年は何と言った?
ドーパントについて分かっていない? ガイアメモリの研究者であるこの私が?
長年人々の幸せだけを考えてドーパントのメカニズムを解き明かそうとしてきたこの自分が?

『何も分かっていない』、だと?

「ふ  ざ  け  る  なーーーーっっっ!!!」
恐ろしい勢い突進してくる黒光りの神代の聖人のような怪人。その勢いを殺さずに真倉にサッカーボールキックを食らわす。
べきべきべき。
割り箸を折ったときのような乾いた音が、真倉の左腕から聞こえる。
「うぎゃああああああ!!」
折るつもりはなった。しかしあまりの怒りに自分の力をセーブしきれなかった。
『何も知らない』
その言葉は知識を財産とする研究者にとって、これ以上ないほどの侮辱的な言葉だ。
まして宮部総一という男は根っからの研究者。
そんな人間に対して"無知"という言葉はほとんどタブーであると言っても言い過ぎではない。
「お前が、お前みたいなやつが、ことドーパントについて私を評するか!!」
我慢ならなかった。
自分の方が賢いと驕っているわけではない。
自分が全知であるという的外れをしているわけでもない。
ただ、ガイアメモリには、ことガイアメモリに関してだけは、そのために割いた時間、労力はここにいる誰よりも長く、誰よりも密度の濃いものであると自負している。
少なくともこの廃工場のなかで、ガイアメモリについて自分に意見できる人間なんているはずがない。
否、いてはいけないなのだ。
「ドーパントは"人間を超越する存在"だ!!」
宮部は声を荒げて言う。
「そしてそれはこれからの人間の文化を豊かにする唯一の可能性ッ!!」
堂々と、そうであると心から信じるように。
言葉に力が籠もる。
そうだ、自分は間違っちゃいない。
変わるべきは人間の弱さ。
正すべきは人の脆さ。

「それが、この宮部総一が生涯をかけて出した研究成果だ!!」

今の宮部総一という男の根底に存在するもの。
今の宮部総一という男を最奥から支えるもの。
もはや迷う要素が見つからないし、躊躇う理由は思いつかない。
しかし、
「・・・・・・ふ、ふん」
しかし、

「・・・・・・さ、3点ってとこだな。・・・・・・それじゃあ、ドーパントについて分かっているなんて、口が裂けてもいえやしないっ!」

しかし、その成果すらも真っ二つに裂く、究極のKY、真倉俊。
「っ!? っ!??」
さすがの宮部もこの態度には怯む。
何度も自分の攻撃を喰らい、腕だって折れている。
並の人間なら考え方に多少の誤差があったとしても痛みと恐怖で妥協するものだろう。
こう言ってはなんだがこの目の前のこの刑事は並以下、警察の人間だとしても精神力では決して一般の域を超えているようにみえない。
(・・・・・・この男)
何がこの男をここまで頑なにさせているのか。
(・・・・・・この男は、もしかして)
宮部は、そんな真倉の理解を超える頑固な態度に―――、、

(・・・・・・バカ、なのか・・・・・・?)

ある、一つの結論を見出した。
「・・・・・・俺には、分かるのだ」
宮部の一抹の不安をよそに真倉は口を開く。
「・・・・・・ドーパントというのは、万能の超人なんかでは決してない」
そして痛みに耐えながらも、堂々と自分の考えを話し出す。
「・・・・・・俺はこの街の刑事だからな。職業柄、俺はドーパントになって犯罪を犯してきた人間をたくさん見てきた」
脂汗を流しながらも、自分の言葉を確かめるように、真倉は言葉を紡ぐ。
「・・・・・・そのなかで、確実に言えることがひとつだけある。・・・・・・それは、『人がドーパントになることは人間として大事なものを失う』、ということだ」
「・・・・・・なん、だと・・・・・・?」
真倉の話をそこまで聞いて、宮部はやっと疑問の声を上げる。
やはり何を言っているのか理解不能。
失う? バカな、ドーパントになれば人間の能力値はすべて底上げされる。
得ることはあっても失うことはない。
ドーパントになった人間をみたからそれが何だというのだ。
やはりこの人間は適当なことを言っているのではないだろうか。
「嘘だと思うのならばみてみろっ!」
真倉は街の方を指差した。
宮部は言われるままに街のほうに目を向ける。
街では不完全ではあるがすでにドーパント化が始まっている人間が少しずつと出てきた。
これは宮部にとって予想の範囲内の光景だった。
いずれ街の、世界の全ての人間は怪人化し、誰も傷のつかない世界が始まる。
予想通りの俯瞰風景。
「・・・・・・?」
しかし、それらのほとんどは奇妙な動きをしていた。
ある者はコンビニエンスストアのレジスターをあさって金をかきあつめ、
ある者は住宅のコンクリートの壁や地面などを破壊しながら進み、
またある者は食品店の店頭に並んでいる食材を片っ端から口に放り込んでいた。
少なくとも宮部の視界に写っている全てのドーパント化した人間は例外なく犯罪行為をしていたのだ。
「・・・・・・こ、これ、は・・・・・・?」