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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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暴走する悪意




「・・・・・・う、ん?」
翔太郎は目を覚ます。
先の戦闘のダメージのせいでまだ意識は朦朧としている。
「・・・・・・はっ!!」
しかし、すぐに自分が進化したアークドーパントにダメージを受けて、気絶してしまったことを思い出す。
翔太郎は慌てて敵を探す。
「あいつは!? 宮部はどうした!? おい、フィリップ!!」
急がないと街全体が例の銀の煙で覆われてしまう。
そうなってしまえば風都が、いや全世界の破滅だ。
翔太郎は焦る。
「くそ、こうしている間にも風都が危ねぇ! フィリップ! おい、どうした!? お前もやられちまったのか!?」
「・・・・・・いや、僕は問題ない。問題は、ないのだが・・・・・・」
なんとなくばつの悪そうなフィリップの声色。
その声色で、自分が気絶している間に事態がさらに悪くなったのではないかと推測する翔太郎。
「状況はどうなってんだ!? 宮部は!? あの野郎、一体どこにいやがる!?」
周りをキョロキョロしながら油断なく全神経を研ぎ澄ませて宮部総一を探す翔太郎。
「・・・・・・」
その翔太郎の姿に、どうしたもんかなー、とフィリップは顔を渋くさせる。
「・・・・・・あー、ええっと、翔太郎? ・・・・・・なんというか、非常に言いづらいのだが・・・・・・」
「なんだ!? 何か新たなトラブルか!? ・・・・・・ま、まさか、街はもう・・・・・・!!」
「戦闘は終わってしまったんだ。ついさっき宮部総一は自首した」
「・・・・・・・・・・・・は?」
かなり間の抜けた翔太郎の声だった。
しかし、状況を一刻でも早く把握したい翔太郎はすぐに意識を回復させる。
「・・・・・・あ、なるほど、照井だな。あいつさっきの雷のドーパントを倒してこの場所に」
「いや違う、違うんだ、翔太郎」
翔太郎が頭をひねってはじき出した解にフィリップは首を横に振る。
フィリップは翔太郎にことの顛末をかいつまんで話す。
最初は冷静にフィリップの話に耳を傾けていた翔太郎だが、話が進むにつれ、顔が青くなり挙動が怪しくなる。
人が信じられない現実に直面したときにとる行動そのものだった。
「ちょ、ってコトは何か? あのマッキーがこの場を収めたってコトなのか!?」
問いただす翔太郎の声は驚きですっかり裏返っている。
「ああ、そのとおりだ。にわかに信じがたいことだが、僕は一部始終をみていたからね」
神妙に頷くフィリップ。事実を見てそれを翔太郎に語ったはずなのにその額には戦慄の汗が滲んでいた。
「・・・・・・マジカヨ」
ようやく今の状況が飲み込めた翔太郎。
二人は手錠をかけられている宮部とその背中をぽんぽん叩く真倉の姿を眺める。
犯人を説得し逮捕する。
経緯はどうであれ、真倉俊は警察官としてやるべきことをまっとうした。
そしてそれは、派手な戦闘や緻密な戦略は一切ないものの、強者であるダブルでは決して出来ない事件の解決法だった。
「・・・・・・へ。なんだよ。・・・・・・なんだかんだ言っても、あいつもこの街のヒーローやってるんだな・・・・・・」
悪と戦っているのは自分たちだけではない。
その事実が、翔太郎をなんとなく嬉しくさせる。
これにて一件落着。
誰もの脳裏にそんなフレーズが浮かんだ。
街に散布された銀の煙はこれから次第にうすれ、街の人々のドーパント化現象も沈静化されるだろう。
誰もが望んだ、平穏の結末。
何の恐怖もなくまた再び動き出す日常。
そして、その平穏な日常は―――、

(Ark!!!)

突然の電子音によって戦慄と化した。
「え?」
「うむ?」
「ふぇ?」
「っ!!?」
翔太郎、フィリップ、真倉、宮部の四人はそれぞれにそれぞれの様子で驚いた。
何故なら、真倉が宮部から没収したアークメモリがひとりでに起動していたからだ。
「おい、マッキー! お前、何してんだ!?」
てっきり真倉が誤ってメモリを起動させてしまったと勘違いした翔太郎は真倉に怒鳴る。
「あれ!? 何で仮面ライダーが俺の名前知ってんの!?? って、い、いや! そうじゃなくて! お、俺は何もしていないぞ!? このメモリが勝手に、」
(Ark!!!)
再び電子音を放ったかと思うと、アークメモリはひとりでに真倉の手を離れ空中に浮かび上がった。
「な!?」
「これは・・・・・・?」
翔太郎とフィリップは驚愕する。
浮かび上がったメモリが正規の持ち主、宮部総一の目の前に制止しているからだ。

(Ark!!!)

アークメモリは再度、電子音を鳴らす。
まるで、自分を使えと訴えるかのように。
「まさか、これは・・・・・・」
そのメモリの様子をフィリップは思案顔で観察する。
宮部はアークメモリがひとりでに自分の目の前に現れたことに動揺を隠せない。
宮部は感覚的に理解していた。
何故このアークメモリが自分の前に現れたのかを。
考えてみればその理由が何なのかあたりをつけるのは容易いことだった。
だって、戦闘用に開発されたガイアメモリが適合者の前に現れる理由なんて。

"―――戦え"

一つしかないのだから。
「・・・・・・や、やめろ。・・・・・・も、もういい、私は納得したんだ」
宮部は首を横に振りアークメモリを拒絶する。
主人である宮部に拒絶(リジェクト)されるメモリ。
その在り方はまさに己に刻まれた烙印を象徴していた。
(Ark!!!)
しかし、そんなことは聞き入れられないとでも言うように、アークメモリは電子音を鳴らす。
「やめろ! も、もういい、もういいんだ!」
(Ark!!!)
「よせ、私にはもう戦う気はない!」
(Ark!!!)
「や、やめろ。・・・・・・やめてくれ・・・・・・」

(Aaaaaaark!!!)
「よせーーー!!」

ガシュッ!という音とともにアークメモリは宮部の体内に入っていく。
ガイアメモリの、再挿入だった。