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Aに救いの手を_サイレント・キーパー(仮面ライダーW)

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エピローグ




探偵、左翔太郎が年代もののタイプライターで報告書をあげるのは、一つの事件が落着をみたときに必ず行う習慣だ。
ぱち、ぱち、ぱち。
「うお、間違えた」
キータッチが出来ないおじいちゃんの如き慣れない手つきながらも、丁寧に報告書を書いていく。
サイレント・キーパーとの闘いのあと、廃工場の研究施設は警察の手によって没収・解体された。(先の戦闘で機械・計器類はほぼ全壊しており、証拠らしい証拠はほぼ消滅していたが)
サイレント・キーパーの構成員である永田省吾、柏木多香子、宮部総一は警察に逮捕された。
アジトにあったガイアメモリや研究に使われていた機械類はほぼ全壊してしまったため、警察が超常犯罪として立件するには証拠が不十分だった。事件として処理するには時間がかかるかと思われたが、警察の話によると三人が三人ともあっさり自白をしたらしい。

「・・・・・・お、おでは、なんであんな悪いごどを・・・・・・メ、メモリで心がおがじぐなっでいだがらどはいえ、ゆ、許されるごどじゃない・・・・・・」

「え、宮部さん自首したんですかっ!? ハイハーイ! ダーリンが自首して罪を償うっていうなら、私も自首しちゃいまぁーす♪ って、あ”ぁ!? 宮部に恋人はいないだと?  おうコラ警察のにーちゃん、めったなこと言うととっておきの毒料理その口に突っ込むぞ? これから許されない囚人カップルのラブロマンスが始まるんだろーが、このイカレチ●ポ野郎がっ!!」

「・・・・・・」

・・・・・・まぁ、自首した理由はそれぞれのようだが。
サイレント・キーパーの参謀、桐嶋藤次は現在逃走中。武器であるヴァイパーメモリは破壊されたし、自首した宮部の話ではミュージアムのツテは他にはないはず、とのことなので捕まるのは時間の問題だろう。
検体番号68番という子どもは、未だ行方が不明。
先の闘いでなんとか九死に一生を得た超常犯罪捜査課課長の照井竜刑事が独自に捜索を続けていること。
照井曰く、宮部や桐嶋の証言からしてあの子も今回の事件の被害者。逮捕することはないが、精神がかなり不安定だったので保護をする必要があるとか何とか。
そして、サイレント・キーパー首領の宮部総一過去を調べることによって組織設立の経緯や理由も明らかになった。
彼が一人の子どもの命を救おうとしたこと。
その子を救えなかったことが、今回の事件のトリガーになってしまったこと。
・・・・・・などなど。

ぱち、ぱち、ぱち。
書面で語れることなど限られているが。
ぱち、ぱち、ぱち。
「あ、やべ。また間違えた」
それでも探偵、左翔太郎は今回の一件を可能な限り詳細に書く。
誰に向けるわけでもない、己の心に刻むために。
「・・・・・・ふう。やっぱりデスクワークってのはハードボイルドの俺には若干トゥーマッチだぜ」
パキパキ、と肩を鳴らして外をみる。
雪が降っていた。
そういえば本日は12月25日。
クリスマスだった。
「おお〜、すげー。ホワイト・クリスマスじゃねーか・・・・・・」
思わず翔太郎は感嘆の声を上げる。
最近、サイレント・キーパーの件でいろいろと忙しく、毎年恒例のクリスマスパーティーも出来なかったので、翔太郎は今日がクリスマスだということを頭からすっかり失念していた。

"・・・・・・お前はこの街のヒーローなんだろぉ?"

ふと、宮部のあのときの言葉が思い出された。

"・・・・・・この街の危機には必ず駆け付けて、平和を守り、弱き者を助け、悪しき者を
蹴散らす、正真正銘、掛け値なし言い訳なしのスーパーヒーローなんだろぉ?"

それはこの街を守る守護者を糾弾する言葉。

"だったらあの子も救ってやれよっ! 私みてーなパチモンの偽善者じゃあなく、お前よーなホンモノのヒーローがよぉぉお!!"

「・・・・・・この街のヒーロー、か」
翔太郎は外をボウと眺める。
雪は少しずつ勢いを増して降り続く。今夜くらいにはそれなり積もることが見て窺えた。
「・・・・・・なぁ宮部、実はお前もなりたかったんじゃねーか? 誰かを守れる、ヒーローってヤツにさ・・・・・・」
翔太郎は、誰に向けるでもなく呟く。
あの宮部の言葉は、翔太郎たちに向けられた言葉ではあったが、それと同時に宮部総一自身への叱咤の意味も込められていたのではないだろうか。
この街のヒーローを信じ、この世界の希望を求めて、結果道を誤ってしまった一人の哀しき科学者。
「・・・・・・」
しかし翔太郎は信じていた。
彼がいずれ立ち直り、今度こそ正しい道を歩くであろうことを。
あの真倉に説得されていた彼ならば、きっとイチから出直して行けるだろう。
翔太郎は、そう信じていた。
「あ、いたいた! 翔太郎くん!」
事務所のドアが開き鳴海探偵事務所の所長、照井亜樹子が大きな袋を持って元気よく入ってきた。
「・・・・・・なんスか」
自分の世界に入り気味だった翔太郎は、亜樹子のバカ明るい声で一気に現実まで引き戻されてしまい、自然と声のトーンが落ちる。
「んもう、翔太郎くん何辛気臭い顔してんのよ! そんなんだからいつまで経っても生活臭に女の匂いがないのよ!」
「大きなお世話過ぎるだろ!?」
開口一番にジャブではなく強烈なストレートがとんできた。
「それよりも本日はメリーメリークリスマス! 年に一度の楽しい楽しい行事よっ! そしてベリーベリープリティ&キュートな所長である私は、そんな面白味ゼロの翔太郎くんにプレゼントを用意しちゃいましたー☆」
てへ、と何故かテレわらいをする亜樹子。どこまでも翔太郎の言葉を無視して勝手に話を進めるようだ。
(・・・・・・こいつ、やっぱ頭のネジ何本かとんでいるじゃないか?)
と、いう言葉が喉まで出かかった翔太郎だったが、スリッパを喰らうのが目にみえているので、ぐっと言葉を飲み込む。
「・・・・・・ハァ、そうですか。・・・・・・ワーイ、ウレシイナー」
「ぐっ! カタカナで喜び表現とか、どこまでもつまらない男!」
「いやいや。俺は本当に喜んでいるんだぜ、亜樹子。だからそのプレゼントとやらを置いてお前はあっちで漫画でも読んでなさい」
「しかも子供扱い!? くっそー、ならばこのとっておきプレゼントで度肝抜いてやるんだからー!!」
ハイ、と元気よく袋のなかから取り出したのは、

「・・・・・・なんだコレ? 保安帽と軍手??」

ちょっと理解出来ないチョイスのプレゼントだった。
その翔太郎のリアクションが気に入ったのか、亜樹子は満足そうに何度も頷く。
「今回の事件って結局さぁ、依頼人の柏木も犯人の一人だったんだよね?」
亜樹子は保安帽をくるくる回しながら言った。
「だからお金は取れなかったし、ジンさんたちからも今は本当に文無しだったので、すぐにはお金はもらえません」
ま、それは今度絶対徴収するけれどね、と亜樹子は付け加えて言う。
「・・・・・・」
翔太郎は何故か、背すじの凍る予感がした。
この女が自分に対してお金の話をするときは、必ずと言っていいほど意見が食い違うとき。
良い事があったためしがない。
加えて亜樹子のこのテンション。

・・・・・・いつもより、高くないだろうか?

「よっ、ほっ、とりゃ」