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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 8

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第26章 再会


 波が静かに打ち寄せる浜辺に男が二人横たわっていた。すぐ近くには船がある。荘厳な造りで大層立派な船が波打ち際に停泊していた。
 男二人の内、一人は長い黒髪を後ろで一つに留めている。服装はとても軽く、素早く動く事が目的として作られたようである。腰には短剣の鞘が両方に付いているが、その内剣が納められているのは一方のみであった。
 すぐ隣にうつ伏せに倒れている男もただの旅人と判断するのは難しかった。
 深緑に近い色の長髪をしており、大きな頭巾を被っている。こちらも服装は軽く、袖や裾から覗く手足は筋骨逞しい鍛え上げられたものだった。そのような手足だけ見れば厳つい男に見えてしまうが、その顔は女性と見紛うほど優しく、どこか幼さを残していた。
 彼らの横たわる浜辺にさらに男二人がやって来た。喧嘩慣れしたような鼻曲がり男と頭を剃りあげた厳つい男達である。横たわる男達とは対照的であった。
「こいつらもチャンパか?」
 鼻曲がりは言った。
「この格好、どう見てもチャンパだぜ」
 連れの男も言った。
「よし、それじゃあ連れてくか?」
「あったりめえだ、他の仲間は逃がしちまったが、こいつらだけでもとっつかまえて他の奴らがどこを目指してんのか聞き出してやる」
「そうだな、チャンパなんぞに舐められてたんじゃたまんねえしな」
 鼻曲がりは黒髪の男を担ぎ、連れはその隣の男を担いだ。そして男達は浜辺を去っていった。
    ※※※
 デカン高原、本当に危険な所だった、ガルシアは道を進みながら思った。
 マドラの町へ行くべくデリィを出発し、ガルシア達はデカン高原を越える事となった。そこで彼らは何度となく危険に苛まれた。
 干ばつで地面は乾燥し、すかすかになっており、歩いている途中落とし穴にはまるかのように地面が抜けることが多々あった。また、朽ち果てた吊り橋を渡らなければならない場所もあった。
 しかし、そのようなものはまだましだった。それ以上に大変だったのは魔物との戦いであった。
 人里離れた所の魔物はとりわけ凶暴なのが多く、獣のようだった。老体のスクレータは戦えないので、ガルシア達でどうにか魔物を退けた。
 剣やエナジーを駆使して戦った。戦いの中でジャスミンが新たなエナジーを身に付けた。彼女が『ビーム』と詠唱すると一直線に走る高熱の光線が迫り来る魔物を一網打尽にした。
 戦いを繰り返す内に自分たちは着実に強くなっていくのをガルシアは感じていた。
 そんな中ふと思い出すのはあの男である。
 シンが生きていれば、喜んでくれたであろうか。着実に力を付け、守られるばかりの存在ではなくなった自分に。
「兄さん、兄さん!」
 ガルシアははっとなって声をオクターブ近く上げてしまった。
「ああ…、すまない。どうしたんだジャスミン?」
 ガルシアは微笑し訊ねた。
「そろそろマドラに着くんじゃないかしらって、兄さんこそどうしたのよ、ぼーっとしちゃって?」
「いや、ちょっと考え事をな…」
「なんの?」
「………」
 シンの事だとは言えなかった。ガルシアの中でシンは仲間である以上に目標でもあった。そんな彼が死んだとはどうしても信じられる事ではないのだ。
「変な兄さん!」
 言うとジャスミンは小走りに前のシバの所へ近づき、楽しそうに話し始めた。
 シバを見ても思うのはシンである。彼が妙な言い回しでシバを連れてこなければ彼女は今ここにはいない。
 ガルシアはふと思った。自分もシバもシンと同じく灯台から落ちている。もっとも自分は飛び降りたのだが、そんな所から落ちているのに自分達はピンピンしている。もしかするとシンも。
 ガルシアは首を振った。そんなはずはない。自分達は偶然が重なって今こうして生きているのだ、普通ならばあの高さから落ちれば助かるはずがない。
――滅多なことは考えるものじゃないな…――
 ガルシアは自分に言い聞かせた。もう彼は死んでいる。それ以上でもそれ以下でもない。もうその事実は変わらないのだ。
 ガルシアは事実を受け入れようと決心するのだった。
 それからしばらく歩いてガルシア達はマドラへたどり着いた。
「ふう、やっと着いたわい…」
 スクレータはため息をついた。
「ほんと、遠かったわねえ、ここまで…」
 シバは脚が疲れて膝に手を付いた。
「よし、じゃあ今日の宿を探すか…」
 ガルシアが町の入り口に設置されたゲートを潜った、その時だった。
 シュバッ、とゲートの脇から男が出て来てガルシアの前に立ちふさがった。かと思うと間髪入れずにガルシアは頭の先から足の先まで入念に触られた。
「怪しい物は持っていないようだな、通るがよい」
 ゲートの脇からもう一人男が現れ、ガルシアの体を触った男の頭を叩いた。
「やりすぎだろバカ」
 頭を叩いた男はガルシア達に向き直り、苦笑した。
「いやぁ、悪かったな。今町は警戒態勢でよ。旅人はみんなチェックさせてもらってんだ。びっくりさせてすまなかったな」
 男は気さくに詫びた。
「あ、ああ。それで、俺達は通ってもいいのか?」
「もちろんさ、本当はあんなチェックしないんだけどさ。あんたらどう見てもチャンパじゃないしな」
「何かあったのかのう?」
 スクレータは訊ねた。
「ああ、実はな…」
 数日前の事である。ここより北西の位置で眩い光が発生すると、大きな地震が起きた。それは信じられないことに大陸までもが動いてしまうほどだった。
 インドラ大陸の東の大陸、オセニア大陸がインドラ大陸にぶつかったという。それだけでも大事件だというのにさらにオセニア大陸からチャンパを名乗る海賊達がマドラを襲撃した。町からは様々な物が盗まれ、静かな町は一変し、一夜にして騒然となった。
 チャンパはまだ他にもいるのではと踏んだマドラの町長は警戒態勢を敷いたのだった。
「ま、そんな事があったってわけでこうして旅人はチェックしてるってわけさ」
 男は面倒臭そうに欠伸をした。
「まあでももうこんなチェックしなくても来ないと思うけどな。正直盗むもの無いぜもう」
 そういえば、と男は何か思い出した。
 二日前に浜辺でチャンパらしき二人組を捕まえた。その二人を長老が一度は世話したが、チャンパという疑いは晴れず、結局は牢屋へ入れられてしまった。その後長老は彼らの潔白を証明すべく、息子の町長と共にチャンパの潜伏するオセニア大陸の町、アラフラへと行ってしまった。
「そんなわけで今長老も町長もいない。一応教えとくぜ」
「そうか、わざわざすまない」
 ガルシアは町長に会って西へ行くための船を譲ってもらえないか尋ねるつもりだった。しかし、町の惨状を聞いてそれは止める事にした。
「じゃあ、ごゆっくり」
 男達はガルシア達を町へ通した。そして二人で何やら話し始めた。
「お前いつまでニンジャって奴の真似してんだ」
 ガルシアは聞き覚えのある単語を聞き逃さなかった。
「すまない、今なんと?」
 聞き間違えかもしれない、一応確認する。
「うん、あんたもニンジャに興味があるのか?二日前にとっつかまえた男が言ってたことだよ。こいつ影響されちまってさ」
 忍法、と言って男は手を組んだ。