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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 10

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第38章 終わり、始まりへ


 オロチの封印により、イズモ村に平和が戻った。
 祈年祭、そして平和が戻った祝いとして村では祭が開かれていた。
 危機が去ったことを皆喜び、祭は例年以上に大盛況となっていた。
 そんな祭の最中、ロビン達はウズメの屋敷でガイアロックでの出来事を話していた。
 ヒナによる太陽の巫女の儀式により太陽を出し、皆の協力とロビンのタイタニックでオロチを瀕死に追いやり、そしてスサの能力によってオロチは封印された。
「オロチを倒せたのはスサのおかげです」
 リョウカが言った。
「違う、オレじゃない」
 スサは認めようとしなかった。あくまで自分は封滅の呪法を使っただけで、本当にオロチを止めることが出来たのはロビン達であると言うのだった。
「でも瀕死に追い込んでもあのままにしてたらオロチは絶対に死ななかったわけだし、やっぱりスサの力よ」
 ヒナもスサが一番の功労者だと言う。
「違う、あんた無理にオレに花を持たせようとしてるだろ!?」
「スサ、ヒナさんに向かって何という言葉を…」
「姉貴は黙っててくれ」
 スサはロビンを向いた。
「なあロビン、そうだろう?あんたのおかげでオロチを瀕死にできたんだ。オレは何もできちゃいない」
 ロビンは首を振る。
「いいや、オレ達にできたのは精々オロチを弱らせる事ぐらいだった。やっぱり奴を封印できたのはスサ、君のおかげだ」
 仲間達も同じ様な意思表示をした。
「どうして…」
 どうして皆自分を英雄扱いしたがるのか、そんな思いがスサを包み込んだ。
 クシナダを救うため、その一心でガイアロックへ単身で乗り込んだ。そして自分の力で彼女や村を救うため、オロチに戦いを挑んだ。このままで事が進み、そして同じ様にオロチを封じる事ができたのなら英雄扱いされても全く悪い気はしない。
 しかし、実際には違うのだ。策を練り、オロチに戦いを挑んだが、あえなく返り討ちとなった。手負いの状態では何もできず、その身をオロチの爪によって引き裂かれそうになった。そこへロビン達が駆け付け、スサは一命を取り留めた。
 その後の自分は何をしていたか、スサはそれが悔やまれてならなかった。戦いをロビン達に任せ、自分はそれに参加しなかった。封印の呪法を使う準備をしていたとは言え、元はといえば自分一人でオロチを弱らせ、そして封印するつもりだった。それがどうしたことか、全ての攻撃はロビン達が行うばかりで、特にもオロチを瀕死に追い込んだのはロビンである。一番の働きをしたのはむしろロビンではないか。
「オレは…」
「さあ、もうこのお話は終わりにしましょう。英雄スサに感謝しないとね」
 スサの言葉はヒナに遮られた。
「ちくしょう!」
 スサはたまりかねて駆けだしてしまった。
「スサ!」
 ウズメは引き留めようとした。
「放っておきなさい」
 ヒナは言った。
「ヒナさん…」
「あの子は悔しいのよ、オロチに一太刀も浴びせられなかった事が。封印できたのはあの子のおかげ以外にありえないのに…」
 男として一矢報いてやりたかった、そんな気持ちがスサにはあったのだ。ヒナにはよく分かっている。
「まあ、あの子にも分かる日がきっと来るでしょ。スサにしかできなかった事なんだって、きっとね…」
 そういえば、ヒナは何か思い出した。
「クシナダはどうしたの?」
「クシナダならスサの帰りを聞くと安心しきったようで、奥の部屋で眠っています」
「そう、彼女も無事なのね…」
 太古の昔、オロチが現れた時とは違い、イズモに住む者は誰一人死ぬことなく全て終わった。ただ一人、村を抜け出し反逆者となった元村人のシンを除いて。
「これできっとあの子もあの世で安心しているでしょうね…」
 ねっ、リョウカ、ヒナは彼女を見た。リョウカは顔を曇らせ視線を落とした。
 全てはこの為だったのだ。シンが、命を犠牲にして、反逆者の身になりながら村を飛び出していったのは。
 その全てが終わった。恐らくもう生きてはいないであろうシンも報われた事だろう。
 しかし、リョウカの気分が晴れる事はなかった。彼の気持ちを知ることなく死なせる事となってしまった。
「シンは反逆者です。最早情けなどかける必要はありません…」
 上辺だけでしか強がれない。
「もう、シンは討滅したんでしょ。もうあの子には罪はないわ、そう目の敵にすることないでしょ」
 リョウカの強がりはあっさりと見通されていた。
 本当は失いたくなかった。幼い頃から連れ添った兄を殺す事などしたくはなかったのだ。
 村に仇なそうとする事を聞き、一度は兄に対して憎しみを持った。村を救うべく取られた行動は仇になるものとなったが、結果的にはシンの行動のおかげでガイアの剣を出現させることになった。それによってリョウカはシンの討滅を思いとどまった。
 しかし、シンは戦いを望んだ。反逆者の身となった彼は最早村には戻れない、帰るべき場所をなくした事による半ば自棄のようなものだった。
 そしてシンは自らその身を海へと投じた。リョウカの使命も終わりを告げた時だった。
――終わり…――
 ふと、リョウカにこの言葉が浮かんだ。反逆者であり自身の兄であるシンを討ち、そしてオロチを封印した。もうリョウカには旅をする理由がなくなっていた。
「そうだ、リョウカ…」
 ヒナは言った。リョウカの考えは全てお見通しのように。
「あなたの使命はもう全部終わったわね、これからはあたし達二人でゆっくりと暮らしましょう」
 旅立たせるつもりはないようであった。
「え…」
 リョウカは戸惑いを見せた。
「おいおい、リョウカは長い間一緒だったオレ達の仲間だぜ、今更置いてくなんてできるかよ」
 ジェラルドは言った。
 加えて彼らには託された事がある。トレビの支配者バビにレムリアを探し出すように頼まれている。まだ旅をする理由は十分にあった。
「それをしなくちゃ村に何か害が出るとでも言うのかしら?」
 ヒナは目つきを鋭くし、訊ねた。
 その鋭い形相にジェラルドが戸惑っているとヒナはさらに訊ねた。
「特にも、リョウカが行く必要があるとでも言うの?」
 必ずしもその必要はなかった。そもそもロビン達の旅の第一の目的はバビとの約束を果たすことではない。地の灯台、ヴィーナスが灯ってから行方知らずとなっているジャスミンやスクレータを探すことだった。イズモ村へ来たのもその一環として、そしてリョウカ自身の願いによるものだった。
 元々ロビン達の旅は世界を救うというものであったが、敵対していた存在は消え、旅にそれほど大きな目的があるとは言えない。さらにはリョウカが来る必要も決してあるようには思えなかった。
「確かに、リョウカが付き合う必要はないかもしれない…」
 ロビンは洩らした。リョウカはっ、と目を見開いて驚き、それを聞いていたジェラルドがつかみかからん勢いでロビンに迫った。
「おい、お前自分が何言ってんのか分かってんのか!?」
「そうですわ、今更別れるなんてこと、どうしてできましょう」
 メアリィも同じ気持ちであった。
「落ち着け、ジェラルド、メアリィ。よく考えてみるんだ、オレ達の旅は今何を目的にしてる?」