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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 10

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 これまでも何度か言われてきており、最早自明である。もう世界やイズモ村を脅かす存在を相手にするようなものではなくなっている。人捜しや、知られていない古代都市を探すといった何かを探す、つまりはただ惰性で旅をしているようなものなのだ。
「分かっただろ、オレ達だけで十分なんとかなるじゃないか」
 ジェラルドとメアリィは言葉に詰まった。
「ボクも、そう思います…」
 イワンもロビンの考えに納得を示していた。
「何を言ってるんだロビン!?私は…」
「リョウカ」
 ロビンはまっすぐに見つめた。
「君の使命はもう終わったんだ。それに、ヒナさんを長い間一人にしていたんだろ?もうお姉さんに寂しい思いをさせちゃいけない…」
 実の弟であるシンを失い、もうヒナには血を分けた家族はいなくなっている。ただ一人となってしまったのだ。
 しかし、まだ彼女には家族として過ごしてきた者がいる。血はつながっていないが、ずっと妹として一緒にいた家族がいる。それがリョウカである。
「ロビン…」
「分かってくれ、リョウカ」
 ロビン自身も仲間との別れは辛かった。しかし、自身も父親を失っており、家族を失ったヒナの気持ちはよく分かる。それ故に下した決断であった。
「それにリョウカ…」
 ヒナは言った。
「今あなたが村を出るような事をしたら、もう帰ってはこれないわよ」
 何らかの十分な理由のある旅立ちであれば、それは許される。しかし、私的理由で村を出る事は掟に背く事となる。更にシンのように結果的に村に害をなすようであれば討滅の対象となる。
 リョウカの場合であれば討滅されるような事はないが、二度と村に帰る事は許されなくなる。村を出ることは死と同じ事を意味するのである。
「そうでしょ、ウズメ」
「…仰る通りです」
 ウズメは答えた。
「分かったわね、あたしはあなたまで失いたくないわ。一人ぼっちになっちゃう…」
 ヒナにはこれまで姉ながらも母親のように育ててもらってきた。それに対する感謝の念はある。しかし、これまで数ヶ月の間ずっと旅してきた仲間の絆も裏切るような事もできない。ロビン達と一緒にいることで、リョウカはかなり変わることができた。
 まさにリョウカは板挟みとなっていた。
――私は、どうすれば…――
     ※※※
 ジパン島の西、朝日射す中静かな浜辺に碇泊した荘厳な船に、ロビン達は到着した。
 ウズメやスサ、ヒナとは既に別れを済ませてきた。オロチの生け贄となっていたクシナダもその身から解放された。間もなくスサと婚姻を結ぶとのことだった。
 感謝の念はとても深く、とても感謝しきれないと、クシナダは何度もロビン達へ礼を述べた。いつかこの先ロビンやその子孫が困るような事があったら、『タケル』が助けに行くと言っていた。
 それは一体誰のことか、ロビンが訊ねるとクシナダは赤面して答えた。
 いつかスサとの間に子が産まれたらそう名付けるつもりだと言っていた。
 ついついロビンも真っ赤になってしまった。そばにいたスサは素っ気なくしていた。
 ウズメからは村を救った礼の品を贈られた。それは片手でも十分な大きさの槍であった。武器というよりは首から下げる事ができそうなアクセサリーのようなものだった。
 これは一体何か、訊ねるとウズメは『三又の槍』と答えた。西の大陸にある漁村、チャンパ村からイズモ村へ魚を売りに来た漁師が昔渡してきた物なのだと言う。
 その漁師は漁師でありながら大の冒険好きであった。チャンパ村から東にあるアンコール遺跡を極めてしまったのである。長年チャンパ村では難攻不落の謎に包まれた遺跡とされていたが、その謎はついに、それも一介の漁師によって解き明かされた。
 砂にまみれた遺跡の塔を登り切ると、最上にあったのはこの槍であった。武器にしては小さく、用をなすようには思えなかった。
 自身は漁師であったので武器を持つ必要はなかった。しかし、捨ててしまうのも勿体無い気がしたので、漁師は交易していたイズモ村へその槍を譲ることにした。
 イズモ村に三又の槍が渡ると、それまで海から魔物が上がってくる事があったが、それが一切なくなった。さらには川に巣くう魔物も姿を消してしまった。
 水に関わる全ての魔除けとなる事が分かり、イズモ村では末永く槍を保管していた。
 しかし、長い年月の間に槍の存在は忘れ去られていた。そこへ偶然にウズメが三又の槍の事を思い出し、水の魔除けになることから航海をするロビン達には丁度いいので、ウズメはお礼に三又の槍を譲ったのだった。
 武器としてはとても心許ないが、三又の槍はオロチとの戦いで武器を壊してしまったイワンへと渡った。元々彼が剣で直接戦うことはそうあるわけではなかったので、別にさしたる問題はなかった。
 船に戻ってきたのはロビン、ジェラルド、イワン、メアリィの四人である。リョウカの姿は見られない。
 村を出る時もせめて別れを告げていこうとしたが、とうとう姿を見かけることはなかった。家にもその姿はなく、ヒナも朝から姿を見ていないという事だった。
 大方名残惜しくて仲間の姿を見たくないのだろうと、彼女を探すのは止めておいた。会ってしまったらロビン達も別れが惜しくなるだろうと思ったからだ。
 こうしてリョウカには会うことなくロビン達は出発する事にした。
 姿を見れば別れが惜しくなると思っていたが、会わなくても別れは惜しかった。せめて一言別れを告げておきたかった、ロビン達はそんな気持ちに包まれた。
「リョウカ、とうとう会えませんでしたわね…」
 メアリィは言った。その顔には別れが惜しいと表れていた。
「せめてお別れはしたかったですね…」
 イワンも、とても寂しいといった様子である。
「あいつの使命は終わったんだ。もうそっとしといてやろうぜ…」
 ジェラルドは言った。
「それじゃあ行こうか」
 仲間との別れの寂しさに、しばしの間沈黙が流れた後、ロビンは出発を促した。
「そうですね…」
 皆が船に乗り込もうとした時だった。
「待て、ロビン!」
 ロビン達の元へスサが駆けつけた。すっかり息を切らし、顔は汗塗れとなっている。よほど急いで来たらしかった。
「スサ、どうしてここに?」
 ロビンは訊ねた。
「このまま…行かせるなんて…、やっぱりオレの気が済まない…、これを…受け取ってくれ」
 息を切らしたまま、スサは腰に射してあった刀を差し出した。
 白い柄巻きで鍔はかなり凝った装飾である。長さは大して長くはなく、片手でも扱えそうな軽めの刀であった。
 手にした瞬間、ガイアの剣のように何か秘められた力があるように感じた。
「これは?」
「オレが教わってた師匠から貰った『菊一文字』って剣だ。そこらの剣とは比べ物になんねえほどすげえぜ」
 スサは弱冠15歳にして師からの教え全てを自分のものとしていた。彼の天才的才能を称え、彼の師は自らが大切にしていた名刀を与えたのだった。
 最早それほどのものはスサの宝物に相違なかった。当然ロビンは受け取りを断った。
「いいから受け取ってくれ、どうせオレの師匠は去年歳で死んじまった。別に怒られやしねえよ」
「そんな、それなら尚更受け取れないよ。これはスサが持っていた方が…」