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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 11

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第42章 絆の力


 辺り一帯マグマがたぎり、部屋全体が炎に包まれている。ごぽごぽ音を立てて煮えたぎるマグマが時折はじけ、それがさらに炎の威力を強めている。
 マグマの上、巨大な体躯をし、先は棘付きの鉄球のようになった尾を持ち、まるで鉄仮面を着けているかのような顔におぞましいまでの眼光を見せている。
 アビス・サラマンダー、これが話に聞いた魔物であると想像するのは容易いことであった。
「お出ましのようだぜ」
 シンは短剣を取り、言った。
「ああ、みんな、油断するな」
 ガルシアもシルバーブレードを抜いた。
 このマグマロックの最深部へたどり着くのはかなり長く、険しい道のりであった。
 険しい荒れ地の中にマグマロックは佇んでいた。かなり離れた位置にいるというのに、周辺は火山特有の匂いが立ちこめており、熱も相当に伝わってきた。
 ただでさえ暑い大陸であるのに、マグマロックへ近づくにつれて暑さは更なるものへと変わっていった。
 この暑さにすっかり参っていたガルシア達であったが、さすが暑い土地に住んでいるだけあってか、フォレアは平気な顔をしていた。
 マグマロックの麓にたどり着くと、暑さは頂点に達したように思えた。
 ガルシア達は気力を振り絞り、流れる汗には目もくれずただひたすらに岩山を登った。
 頂上付近に差し掛かると、マグマロック内部に入るための入り口らしきものがあった。しかし、アビス・サラマンダーが起こす度重なる地震のせいで、岩が崩れてしまい、入り口は閉ざされてしまっていた。
 この問題を打開したのはフォレアであった。彼女の持つエナジー、『バースト』によって崩れた岩は炎の起こす爆発によって一瞬にして粉々に砕け散った。
 それは何とも物凄い威力であり、ガルシア達はかなり驚かされた。シンも爆発を起こす力を持っていたが、それさえもあっさり超えているように思えた。
 マグマロック内部へと入り、各所でマグマの煮えたぎる中を突き進んだ。マグマの上に浮かぶ石板に乗り、マグマの上を行くという、一歩間違えれば命を落とす危険を冒し、ガルシア達はひたすら最深部を目指した。
 マグマを渡り、爆発で道を切り開きながらガルシア達はついに最奥へたどり着いた。謎の紋章の施された扉によって閉ざされた部屋がそこにはあった。
 扉へと近づくにつれ、ジャスミンの中で渦巻く力は次第に大きなものとなっている、と当人は言っていた。その証拠として、彼女は手のひらに大きな炎を作り出した。非常に大きな、人の顔以上の大きさの炎を出しているのだが、大した力を込めていないとの事だった。
 異変はガルシアにも起こった。ここへ来るまでに何度かあった事だったが、ここへ来てそれは更に大きくなった。
 本が、魔導書ネクロノミコンが震えていたのだ。手も触れていないのにパタパタ音を立てて震えている。
 ガルシアが本に手をやり、軽く叩くと揺れはおさまった。本が何かから影響を受けている、それは明白だった。
――一体、この先に何が…――
 地面から氷の棘が突き出た。
『パーキィクール!』
 ピカードの得意とする水のエナジーであり、アビス・サラマンダーの苦手とするエレメントでもある。しかし、魔物の炎の息によっていとも簡単に打ち砕かれてしまった。
「これでは駄目ですか、ならこれで!」
 ピカードは再び詠唱する。
『ダイヤモンド・ダスト!』
 ピカードがメイスの先を魔物へと向けると、そこに青白い光が集まり、弾けると数多の粒子が魔物に向かって飛び出した。
 エナジーの力を最大限に利用して空気を一気に凍結させ無数の氷として打ち出す。凝固した空気中の水蒸気はかなりの硬度を持ち、その硬さはダイヤモンドにも匹敵するのである。
 これほどのもの、さすがのアビス・サラマンダーであっても耐え切れまい、そう思っていた矢先だった。
「そんなバカな!ダイヤモンド・ダストが、砕けていく…!?」
 ダイヤのように硬い氷であるというのに、アビス・サラマンダーの顔の前で砕け、飛び散った破片はそれの放つ高温によってその姿を再び水蒸気へと変えていくのだった。
「僕の氷の力は通用しない…」
「何やってんだピカード、炎に氷で攻撃したって無駄だぜ!」
 シンが飛び込んできた。
「まどろっこしい攻撃はいらねえ、急所をついてやりゃ一発だ!」
 シンは短剣を片手にアビス・サラマンダーへと突っ込んでいった。
 魔物は迎え撃つべく口を大きく開き、炎を吐き出した。シンは炎に包まれた。
「遅い、こっちだぜトカゲ野郎!」
 シンは残像を残して空中に跳んでいた。転影刃の要領で身を翻し、勢いそのままに飛び上がっていた。
「くらいやがれ!」
 シンは短剣の刃を下へ向け、魔物の延髄目掛けて落下した。
「ふっ、手応えあったぜ…!」
 シンの短剣は魔物の鉄仮面のようなものの隙間を通り、その奥にある延髄を貫いていた。如何なる生物でもここを突かれたら即死するはずだった。
 あばよ、化け物、シンは呟いた。しかし、アビス・サラマンダーの動きは止まらない。魔物の生命活動は一切停止していなかった。
「…っ、死んでねえだと!?」
 魔物は頭上のシンを振り払うべく、鉄球のような球体を持つ尾を振った。シンは急ぎ飛び跳ねてかわした。
 仕損じた。魔物の急所は的確に捉えていたはずだった。しかも確かな手応えがあった。皮膚を貫き骨を断つ感覚が。
――一体どうなってやがる…?――
 シンは一旦ガルシア達の所まで退いた。
「シン、無事か?」
 ガルシアが訊ねた。
「ああ、オレは平気だ。それよりあのトカゲ野郎、急所を突いたってのにピンピンしてやがる」
 魔物は依然として一切損傷を受けておらず、敵意をこちらへ向け続けている。ガルシア達が様子を窺っていると魔物は炎を吹いた。
『レジスト!』
 シバが詠唱し、発生した透明な壁がガルシア達を炎から守った。
「ぼんやりしないで、カバーしきれないわよ!」
「すまない」
 炎が収まると、ガルシアは魔物へ向き直った。そしてシルバーブレードへ心を集中し、剣からの脈動を受ける。
「どんなに頑丈な奴でも弱点を突けば…!」
 ガルシアは魔物目掛けて走り出した。そして魔物の手前で剣を振りかぶる。
「アクアストライク!」
 地面から水柱が上がり、魔物を包み込んだ。氷による攻撃は今一つであっても水に包まれたとあってはさすがのアビス・サラマンダーも終わりである、かに思われたのはほんの一瞬であった。
「何だって!?」
 ガルシアは己が目を疑った。何と極太の水柱が魔物に触れた瞬間湯気を立てて消え去ってしまったのだ。魔物の高温によって弱点であるはずの水までも無力化してしまったのである。
 次の瞬間魔物が反撃を仕掛けてきた。尻尾の鉄球を振り回すが、ガルシアは飛び退いた。
「アクアストライクまで効かないとは、本当に一体どうなって…」
「兄さん!」
 後方からジャスミンの声が投げかけられた。ガルシアは振り返る。
「あいつには結界があるそうよ!」
「何だって、それは本当か!?」
「本当よ、フォレアが言っていたわ!」
 続きはフォレアがした。
「本当です、ガルシアさん。お祖父ちゃんも言っていたわ、戦っていた時手応えはあるけどちっとも倒れる気配がなかったって」