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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 11

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 斬っても斬ってもまるでダメージを受けないアビス・サラマンダー。その感じはまるで形はあるが、留めていないもの、泡でも斬っているようなものだった。
 そこから勘の鋭いフォイアーは魔物が結界を張っている事に気が付いた。しかし、それを破る術までは見いだせず、完膚無きまでに叩きのめされてしまったのであった。
『イマジン!』
 シバの瞳が青白く輝いた。真実を見通すエナジーを使い、それを通してアビス・サラマンダーを見た。
 魔物の鉄仮面をかぶったような顔、実際にそれは顔を保護する魔物の鎧であった。鎧のその奥、何か光るものが見えた。
「ガルシア、フォレアの言うとおり、バリアを張っているわ!あいつのおでこの辺り、光ってるものが見える。それが弱点よ!」
 シバはエナジーを転換し、辺りに真実の領域を開いた。そこにいる全ての者にシバの言っていたアビス・サラマンダーの弱点と思われるものが見えた。
「見えたぜシバ、あれだな!」
 シンは嬉々として言った。弱点を見破り、勝機が見えた。しかし、まだ問題があった。
「けど、奴の鎧を砕くにはどうしたら…?」
 ピカードが言った。攻撃は全て弾かれてしまう上に、相手の弱点であるはずの水も通用しない。結界を破るどころか、敵にかすり傷一つつけることすらもままならない状況であった。
「私に一つ、考えが…」
 フォレアが作戦を出した。
「強い衝撃を与える、というのはどうでしょう?」
「衝撃って、半端なもんじゃ奴はびくともしねえぞ」
 シンが反論する。
「ええ、ですから、魔物の結界でも耐えきれないほどの衝撃を与えるのです」
「ごり押しするってのか」
「いくらなんでも無策ではないか?」
 ガルシアがフォレアの策に疑念を持った。ガルシアの言葉に答えず、フォレアは皆に問いかけた。
「皆さんの中で強い衝撃を出せる力を持っている方はいませんか?例えば、私のように爆発を起こせるような」
 爆発と言う言葉に反応したのはシンだった。
「それならオレが使えるぜ」
 シンには特技としている忍術の中に『爆浸の術』というまさに爆発を起こすものがあった。その威力はフォレアのエナジーには及ばないが、大きな岩をも砕けるほどの力はあった。
「私の『バースト』だけでは打ち破るに至らなくても、それに相当するほどの衝撃を連続で与えることで結界を一時的に破れるのではないでしょうか?」
 全員が納得した。
「なるほど、それならば奴のあの鎧を砕く事もできるかもしれないな」
「けど、至近距離でぶつけるくらいじゃないと、あの鎧は砕けないんじゃ?」
 ピカードの言葉は、この策を実行する事はフォレアが危険にさらされるということを意味していた。
「そんな、危ないわフォレア!」
「そうよ、あなた私達と違ってただの女の子なんだから無茶な事は止めた方がいいわ」
 ジャスミンとシバは引き止めた。しかし、フォレアも引き下がらない。
「ありがとう、二人とも。でも私はあの魔物を倒したいの。お祖父ちゃんをひどい目にあわせたあいつが許せない…!」
 フォレアはキッとアビス・サラマンダーを睨んだ。魔物は物ともせずこちらに不気味な目を向けていた。
 ふと、シンが小さく笑った。
「ふっ、フォレア。やっぱりお前はとんでもない頑固者だな、それもオレが思ってた以上にな」
 でも、シンは八重歯を見せて笑った。
「そんな女は嫌いじゃないぜ?」
 フォレアは驚いたように目を見開いた。
「よし、ここはフォレアの作戦に賭けてみようぜ!」
 ガルシア達は驚いた。
「本気か!?」
「ちょっとシン、フォレアに何かあったら…」
 シンはそれ以上言うな、と言わんばかりにシバの口元に指を立てた。
「大丈夫、オレに任せな。言ったろ、フォレアはオレが守るってな」
 シンはフォレアに向き直った。
「よし、行くか!」
 フォレアは力強く頷いた。
「ちょっと…!」
 今度はガルシアがシバを止めた。
「ここはあの二人に任せよう」
「兄さんまで!?」
「大丈夫だジャスミン、彼らはやってくれるさ」
 ガルシアがシバ達を説得している間にも、シンとフォレアは具体的にどのように攻めるか話し合っていた。しかし、そこで出た作戦はほとんどシン一人の意見であった。
「いいなフォレア、オレごとぶち抜くつもりで撃つんだぜ」
「ちょっと待って、シンさん!」
「行くぜ、トカゲ野郎!」
 話を聞かずにシンはアビス・サラマンダー目指して駆けだしてしまった。そして至近距離、ほぼすれすれの位置まで近寄ると、爆発を起こした。
『爆浸の術!』
 爆発は魔物を包み込んだ。しかし、爆発の最中にありながらも、魔物は物ともしない。淡く薄い光のドーム状のオーラで魔物は身を守っていた。
――やっぱりオレだけじゃ破れねえか――
 エナジーを放出し続けるシンの後ろへフォレアが駆け寄ってきた。そしてシンの真後ろに立つ。
「フォレア!言ったとおり頼んだぜ!」
 これこそがシンが立てた作戦であった。
――いいかフォレア、やつの結界を破るにはお前が言ったとおり、かなりの衝撃が必要だ。オレ達一人一人の力が不十分でも、それが重なればとてつもない力になる。
――そのためには間を置かず衝撃をぶつける必要がある。そこでだ、オレが先に行って『爆浸の術』を撃つ。フォレアは後ろからついて来てオレのエナジーが少しでも弱まったと思ったらすぐにエナジーを撃て、いいか、オレごとぶっ飛ばすつもりでだ
 一度はフォレアもこの作戦に賛成しなかった。シンが爆発に巻き込まれたらひとたまりもない、そう思ったからである。
 しかし、シンはすんでのところでかわす、とだけ言い、フォレアの意見を聞くこともなく走り出したのだった。
 フォレアは集中し、シンのエナジーから目を離さない。シンの起こした爆発はまだ威力が落ちてはいない。このまま魔物の結界を打ち破れるのではないか、そう思えるほどに威力は十分だった。
 しかし、シンの思った通り、結界を打ち破るにはいたらなかった。今、爆発の威力が落ち始めた。
「今だフォレア!」
 シンが叫ぶとほぼ同時にフォレアは詠唱した。
『バースト!』
 シンが起こしたものよりさらに大きな爆発が起こった。その瞬間シンは空中を舞い、爆発に巻き込まれることなく地面に着地した。フォレアのエナジーは魔物の纏うオーラにひびを入れ、粉々に砕いた。
「結界が!」
 後方にいるガルシア達が叫んだ。
「よし、そのままヤツの鎧を打ち砕け!」
 シンとフォレアのエナジーによって一時的に魔物の結界を砕くのに成功した。後はそのまま無防備となった魔物の鎧を砕くのみである。フォレアのエナジーは魔物の鎧にひびを入れた。
 しかし、ひびを入れた所で爆発は威力を落としてしまった。結界を打ち砕くのに威力がほとんど殺がれてしまったのだ。
「フォレア!」
 再びオーラが戻りゆく中でアビス・サラマンダーは反撃と口を広げ、火を吹こうとした。
「シン、フォレアを抱いて伏せろ!」
 ガルシアが叫ぶと、シンはすぐさまフォレアの肩に手を回し、一緒に倒れ込みフォレアの背中の上に覆い被さる形となった。
『ラグナロック!』