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時空省奇伝 次元と時を超える者たち

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一章-プロローグ 三人の聖職者



二人の囚人が鉄格子の窓から外を眺めたとさ。 一人は泥を見た。一人は星を見た。
『フレデリック・ラングブリッジ 』『不滅の詩』の扉絵にはこのような言葉が乗っている。

━ここは現代より少し未来の日本。冬木市にある丘の上の教会、通称『言峰教会』では今日も礼拝が行われている
?「…『落ち着いているならば救われ、穏やかにして信頼しているならば力を得る。』人は力というとどうしても、表面上の力にとらわれがちですが、
真の強さとはその人のうちにあります。穏やかさはその中でも内なる強さを最もよく表しているものです。穏やかとはおとなしいとは違います。
暴をふるうものはそれがよく分からぬものだが、穏やかなものはいかなる時分でもその広い視野で様々な物事に対応できる。私たちも、そうありたいものですね。」
神父が説教を終わると、ちょうど鐘が鳴り始める。本日の礼拝はここで終わりのようだ。礼拝に来た人々は、各々今日の言葉を心に刻み、家路につく。
この教会の神父である『言峰綺礼』は評判のよい男だ。まさに完璧な、皆が思い描く通りの神父である。ただ一つ、生まれ持っての『異常性』を除けばであるが。
夜になった。空には美しい星が瞬いている。万人にとってはそう思える光景だが、彼には少しも美しいと思えない。いや、そう思ってもどこか否定してしまう。
この神父の異常性とはそこにある。人が『悦』とするものをそう思えず、万人が『歪』や『嫌』、『いびつ』といったものに『悦』と感じてしまうのだ。
生来の異常性について、彼はその答えを『神』に問おうとしている。結果は理解しているが、理由を探すために。
言峰「さて、もう夜も更けたものだ。そろそろ、教会を閉めなくてはならないか。」
言峰神父は教会の入り口にたち、扉を閉める準備をしようとする。しかし、今日はほとんど風も吹かなかったというのに、突如一迅の風が吹き抜ける。
言峰「━!!」
思わず右手で顔を覆い隠すほどの強風だ。一体どこからこのような風が吹いてくるのか皆目見当もつかない。
少し経つと、風は収まった。言峰神父は、教会から一旦外に出て辺りを見回す。しかし、街はいつもの静けさだ。
奇妙なこともある。そう思い、再び教会へ戻ろうとする。だが、いつもと何か様子が違う。誰か中にいる、そう感じるのだ。
言峰は静かに、落ち着いて自分の教会の内部を扉の影からみる。すると、誰もいないはずの教会から、『カツン カツン』と音がするのだ。