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改・スタイルズ荘の怪事件

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5,5章


さいとうりきの日記

7月23日
今日は、お兄ちゃんといっしょにあそびんだ。わたしがベッドの上でぼーっと空を見ていると、お兄ちゃんがやって来て、本を読んでくれた。
体がぼーっとして、お兄ちゃんのこえがきこえないと、ごめんなさいして、まきもどしてもらった。あたまをなでるお兄ちゃんの手がつめたかった。
名たんていのホームズは、赤毛の人のふしぎなじけんを一発でかいけつしてしまって、すごいと思う。お兄ちゃんもすごいすごいと言って、とても楽しかったよ。

9月3日
びょう院のごはんはなんで味がしないんだろう。ここに来てから一しゅう間、くすりをのむか、けんさをするか、ベッドにいるか。
お兄ちゃんがもってきてくれた怪盗21面相の本も3回ずつよんでしまった。明日は、お兄ちゃんが来る日だから、はやく起きたい。

4月22日
そろそろ小学校がはじまる時間。新しいクラスになる前に元気になれなかった自分がくやしい。お兄ちゃんたちは気にするなって言ってくれるけど、やっぱりくやしい。かなしい。
よし、これでリセット。今日ののこりは元気に過ごそう。お兄ちゃんは来るだろうか。はなしのわだいに困らないように、ミス・マープルのように安楽椅子探偵をしているのに。
おい川先生と三木さんは本当はなか良しなのだ。わたしが寝たフリをしていると、二人で何か言い合っているのがきこえるから。

3月25日

お兄ちゃんが高校の制服を見せに来てくれた。
わたしを置いて、お兄ちゃんの時間はどんどん進んでいく。今日だって、お母さんが言わなければ病院になんか来なかったはずだ。
それでも来てくれるんだからお兄ちゃんは優しいと思う。制服も格好良かった。わたしの薬臭い身体が嫌なのか、決してわたしには触ってくれなかったけど、それでもわたしには十分だ。戯言だけどね。

8月5日
蝉の声がこの部屋まで聞こえてくる。彼らのように短く生き抜くことが出来たなら、私もお兄ちゃんに愛想をつかされることは無かったのだろうか。
父さんたちは隠しているけど、私の病気のせいでうちの家族は崩壊してしまったらしい。治る見込みのない病気のために娘をアメリカに行かせようとする母と、その資金を工面するため家にほとんど帰らないほど働いている父。お兄ちゃんが私を恨むのも当たり前の話だ。
それでも死にたくない。推理小説を読めば分かる。どんな理屈をこねようと死んだ人間になど価値はないのだ。探偵の、犯人の、十分の一だって死者の名前など覚えられてはいない。それが現実だ。忘れられるなんて嫌だ。

2月3日
あの老人の言うことを信じることに決めた。
だからこれは遺言じゃなくて挑戦状だ。
あなたのことが好きです。