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改・スタイルズ荘の怪事件

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6,5章


四庫全書【アーカイブ】第四階層所蔵「ヘイスティングズ機関」

欧州全域で屈指の軍事企業であり、兵器の開発から兵士の教育まで紛争業務の全域に関わっている。母体は統合政府において「機兵」の技術を継承発展させていくことを目的とした部門が、大戦終了後に民営化されたものである。そのため機関は今でも開発部門の全てを統合政府と共有したプロジェクトを三百四持っており、平和維持軍とも深い関係を保っている。
元々が「機兵」に特化した組織であったため、人間の肉体を機械に換装する技術においては他を圧倒し、彼らが初期教育からの全てを受け持った機械兵の中には、単体で戦術レベルに影響を与えるほどの性能を有したものも存在している。その例として、古くは「獅子王」の変、近年では「ネイルシュトローム」における「ガーウィン」の事例を挙げることも可能だろう。
ヘイスティングズ機関はそれらの卓越した機械兵たちを機士と称し、彼らにアーサー王伝説にちなんだ称号を与えることで、内外における自らの地位を誇示する戦略を取っており、機士たちは多くの兵士に恐れ敬われる存在となっている。
しかし、一般の評価に反して、機士の活躍は全体から見た場合、微々たるものであるのが現状である。軍内部では、機関が機士たちに設定している莫大な制約領域が、彼らの柔軟な運用の障害になっていると考えられている。
現在、機関は四体の機士を所有しているが、戦況を変えるような功績を実際に上げたのは、機士の筆頭位である「アーサー」の称号を有した機体だけである。

四庫全書【アーカイブ】第六階層所蔵「第58473987493847非実在戦役」

目的 第286高地の奪取
戦力 味方312(民間人167名) 敵約6200(機竜1)
「従軍した学者による口頭報告」
まず最初に我々に潤沢な資金を与えてくれた機関と政府の礼を述べねばならないでしょう。両者のこの研究に対する深い理解なくしては、今日の成果は決して達成することが出来なかった。
戦果は圧倒的でした。我々が試験運用した「新型」は、一時間と三十七分二十秒で目標の高地を完全に制圧してみせたのですから。
確かに、我々の予測によれば「新型」がこの高地を制圧するに至るまでの時間は約四十五分ではあったでしょう。ですがそれは、敵を効率的に撤退させることを前提とした予測に過ぎません。そう、戦場そのものを支配下におくという当初の目標は達成されたとは言いがたい。そこにあったのは余力を残した敵の統一的な撤退ではなく、どこまでも粗野な殺戮に過ぎなかった。
しかし、我々は神話を得たのです。英雄の物語と共に語られるに過ぎなかった竜殺しを、わたしはこの目で確かに見ました。天高く機竜が吼えたけり、その巨体を大地に沈める瞬間を。羽をもがれた天使が次々と惨めに落下していく姿を。
「新型」は「ガーウィン」とは違います。敵と味方の区別を故意に無視するような異常もなければ、血に対する執着も存在しない。断言しましょう。「アーサー」の空位を埋める機士はこの「新型」の他にいません。
スティーブン、謝らせてくれ。君は正しかった。むろん、正規の育成プログラムを経ない個体に機械化を施すことは今でも反対だが、だからと言って数値が出ている個体への施術を無条件で拒否するのは誤った判断だったようだ。同じ教育者として自分の不明を恥じるばかりだ。