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コンビニ店員の俺と本田さんと各国の人々。1~21まとめ

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うさぎさんと貴族さんによるフルートとピアノの二重奏





場所 俺んち。ばあちゃんのピアノ部屋。
とき  三時開演
演奏者 うさぎさん(フルート)貴族さん(ピアノ) 




…ってな訳で何とも不思議な顔合わせでばあちゃんのピアノの前には貴族さん、その傍らにフルートを手にしたうさぎさん。開演を待つ聴衆は俺、じいちゃん、ばあちゃん、仕事をキャンセルしてきた親父に、兄貴、母さんとムキムキさん、本田さん、そして、貴族さんの付き添いだと言って付いて来たお姉さん。じいちゃんはこのお姉さん、本田さんとも顔見知りだったようだ。
「おやまあ、エリザさん、本田さんもご健勝で何よりです」
「キュウゾーも元気そうで、久しぶりに会えて嬉しいわ」
「お二人ともお変わりなくお元気そうで。まさか本田さんがご近所にお住まいだとは思ってもいませんでした。世間は狭いですな」
「そうですねぇ。しかし、あの日をまたこうして再現出来るとは思いもしませんでしたよ」
「ええ、本当に懐かしいです」
和気藹々と和み懐かしむ面々に俺もひっそりと和む。その横でうさぎさんと貴族さんは音合せをしているが、うさぎさんは合わせる気がないらしくピアノと微妙にズレて、フルートの音がする。
「…あなたには合わせようという気はないんですか?」
「お前が俺に合わせればいいだろうが」
溜息混じりにそう言う貴族さんにうさぎさんはそう返す。ムキムキさんが言っていたが、このふたり、あまり、仲が良くないらしい。前は顔を見るだけで口喧嘩を始める有様だったとか。今は大分改善されてこの程度で済んでいるらしい。…まあ、プロイセンとオーストリアって歴史的にも犬猿な感じの仲だったみたいだし、それが尾を引いているのかもしれない。
「…ギルベルト、ローデリッヒさんを困らせるような真似したら承知しないわよ」
睨み合うふたりに割って入ったのは夏と冬、俺と数日間だけ顔を合わせる、バイト先のコンビニのコピー機を占拠するきれいなお姉さん。本田さんとも仲がいいらしい。時々、二人にしか解らない会話をしている。…このお姉さんに何でかうさぎさんは弱いらしい。顔色を変え、後退さった。
「べ、別に何もしてないぜ!」
「…ええ。このひとと意見が合わないのは元からです、エリザベータ、フライパンはお止めなさい。はしたないですよ」
お姉さんの手にはどこから取り出したのかフライパンの柄が握られている。それに怯えたようにうさぎさんがムキムキさんの後ろに逃げる。お姉さんはそれに苦々しげな顔をして舌打ちした。…怖い。…ってか、このお姉さんも国なんだろうな。うさぎさんと貴族さんと関係のある国ってどこだっけ?俺は本田さんに訊いて見ることにした。
「本田さん」
「はい、何でしょう?」
「あのお姉さんも「国」なんですよね?」
「そうですよ。彼女は「ハンガリー」さん。ローデリッヒさんのお隣の国の方です」
「…ハンガリー…」
俺が「ハンガリー」と訊いて思い浮かぶことは、クラシックのハンガリー舞曲だ。ぼんやりと、元騎馬民族な国とイメージがあったので、女性だとは思わなかった。何か「姐さん」と呼びたくなるようなお姉さんだ。
「素敵な方ですよ。お料理も上手な方で。何度かご相伴に預かったことがあります」
「へぇ。…何か、ギルベルトさんとは余り、仲が良くなさそうですね」
「良くないとは、私は思いませんが、…フェリシアーノくんから聞いたことがありますが、エリザベータさんとギルベルトくんは幼馴染みだそうですよ」
「そうなんですか?」
「だからでしょうか。エリザベータさんはギルベルトくんに容赦がないですよねぇ」
本田さんは苦笑交じりにそう言って、二人を見やる。ムキムキさんを挟んでジリジリと無言で睨み合っているが、うさぎさんの腰がかなり引けているのが可笑しい。そんな二人を仲裁するようにムキムキさんが仲介に入り、演奏会は漸く開演となった。

 曲目はうさぎさんが親父と慕うフルードリヒ大王が作曲したフルート協奏曲に貴族さんがピアノアレンジを加えたものを4曲。

 じいちゃんがうさぎさんの演奏はクセがあると言っていたが、かなり独特で、でも、下手とかそういう訳でもなく、貴族さんのピアノが上手いことフォーローしているお陰で調和していて、うさぎさんの個性が前面に出て来て生かされてるなって感じ。…と言うか、俺はうさぎさんに訊くまで、フリードリッヒ大王がフルートの名手で作曲も手がけ、フルート奏者の間では「フルートキング」と呼ばれていることも知らなかった。うさぎさんの話を訊くに、大王はとても有能で万能なひとだったようだ。そして、うさぎさんにフルートの手ほどきをしたのは大王本人だと言う。

「絶対、無理!俺、剣しか握ったことねぇし!」

と、何というか芸術方面にはとことん疎いうさぎさんはそう言って、フルートを手ににじり寄ってくる大王から逃げ回っていたのだが、ある日、とうとう捕まって、泣き落としにあってフルートを始めざる得なくなった。

「お前とフルートを奏でるのが、老い先短い私の願いで望みだ。お前のために曲も作ったというのに、お前はそれを叶えてくれないのかね?…ヨヨヨ…」

…と、言う感じだったらしい。大王はうさぎさんの弱い所を熟知されていたようだ。まあ、そんなことがあってフルートを始めたうさぎさんは元々、器用だったらしく、あっという間に短い曲なら吹けるようになり、大王はそれは喜んで、二重奏を奏でるのを楽しみしていたそうだが、それは叶わず、大王はこの世を去ってしまった。それと同時にうさぎさんはフルートを見ると大王を思い出して、気が塞ぐという理由でフルートをやめてしまった。それを再開させたのが、貴族さんだった。

「…王に譲られたものなのでしょう。大事にしたいのなら、吹きなさい。あなたが吹くことを王は喜んでいたのでしょう?」

手入れはされているものの飾り物になっている大王の形見のフルートを見て、貴族さんがうさぎさんに言ったそうだ。その後、「余計なお世話だ!」大喧嘩になった…と、ムキムキさんが溜息混じりに言っていた。
 ムキムキさんが言うに貴族さんはうさぎさんが少しだけ羨ましかったのだとか。ハプスブルク家はお抱えの宮廷音楽家を何人か抱えていたが、上司が作曲をしたり、奏者になっての演奏会はなかったそうだ。大王は自ら、作曲を手がけ、奏者としても一流。戦争がなければ、一度、そのフルートを聴いてみたかった、一緒に演奏してみたかった。「音楽家」として貴族さんはうさぎさんの立場が羨ましかったのだろうと。
 戦争がなければ、貴族さんと大王は話が合ったことだろうと思う。…と言うか、マリア・テレジアとフリードリッヒ大王の婚約が実現していれば、後世に残る名曲が生まれていたかもしれない。歴史には、「if」がいっぱいだ。でもそうなっていたならば、大王は「大王」になれなかったし、ムキムキさんは生まれてなかったかもしれない。この演奏会は開催されてはいなかっただろうけど。