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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 18

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第66章 天眼巫女


 冬も深くなり、尚且つ悪魔の放出した、大気に蔓延する瘴気により日当たりが悪くなって、ウェイアード極東の島、ジパン島は例年より冷え込んでいた。
 加えて世界のエレメンタルの灯台が消え、エレメンタルパワーが著しく減少したおかげで、各地で異常気象が起こっていた。
 イズモ村とて例外ではなかった。
 かなりの寒波に襲われ、島中が大雪に見舞われていた。
 四季の変化の安定しているイズモ村でも、イミルやプロクス並みの雪が降りしきっていた。
 大雪の波は一旦引き、今はちらちらと粉雪が舞っている。それでも気温は最低値である。
 そんな極寒の中、凍てつく雪道を、沢を目指して歩んでいる者がいた。
 呼吸さえも氷になりそうなほどの中、白い吐息を出しながら歩くのは、全身を真っ白な、薄い白装束で包む女であった。
 すらりと背の高い女であり、艶めく黒髪を肩まで垂らし、頭頂部にて細く一束にしている髪は、毛先が極端に曲がっており、それはまるで猫の尾のようである。
 少しつり上がり気味の目は、長い睫毛が伸びており、頬の引き締まった、中性的美女であった。
 女の名は、ヒナといった。
 数千年前、初めて村を襲った魔龍オロチを、命懸けで封じた戦士、ミコトの実の姉であった巫女、アマテラスの末裔である。
 ヒナは、家から出て数分とかからない沢へ、辿り着いた。その後、彼女の取った行動は、普通の人からすれば見ているだけで震え上がるものだった。
 氷のような水がさらさら流れる沢の水を、ヒナは両手ですくい上げ、それを頭からかぶったのだ。
 ヒナは尚も水をすくい、体中に浴びせた。薄手の白装束が水に濡れ、ヒナの体は透けて見え、体の線がよく現れていた。
 白装束の裾や袖からポタポタと水を滴らせながら、ヒナは立ち上がり、家に戻っていった。
 家に帰り、ヒナはずぶ濡れの白装束を脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿となる。
 手拭いで濡れた体を隈無く拭き取り、手拭いを放ると、用意しておいた着物に手を伸ばす。
 床に綺麗に畳まれているのは、白い襦袢に、振袖に赤の刺繍、そして緋色の袴に、足袋である。その傍らには、白鞘の刀も置いてあった。
 ヒナは襦袢に袖を通した。
 何故彼女が、身を切る寒さの中、水を浴び、巫女装束に身を包もうとしているのか。それは昨日、ある男に戦いを挑まれたからだった。
    ※※※
 世界がどのような状態と化しているのか。レムリアの王、ハイドロによって知らしめられたロビン達は、デュラハンが人間に与えた一ヶ月の猶予の間に、何か対抗策はないか話し合っていた。
 デュラハンにはシバとイリスを浚われていた。デュラハンの思惑ははっきりとは分かりかねたが、一ヶ月の時が経てば、彼の悪魔が人間を滅亡へ追いやるのは確実であった。
「オレに一つ考えがある……」
 ふと、シンが申し出た。事態は深刻であるので、重々しく口を開くが、それにしてはかなり真に迫っていた。
 まるで彼までも死を覚悟しているかのようだった。
 事実、シンの申し出は、彼に死をもたらす危険のあるものだった。
「考えだって、それは一体!?」
 ロビンがすぐに訊ねるが、シンは、自らの死の可能性があることを思い、深くを話さないことにした。ただ、一言だけ告げて。
「レムリアの時間で、明日帰ってくる。外界では、だいたい一週間、オレに時間をくれ」
 一月という制約の元、一週間は長すぎた。
 仲間達はほとんどが、シンの発言に否定したが、一人だけ彼を信じる者がいた。
「シンの考えとやら、懸けてみても良いのではないか?」
「ガルシア、正気か!?」
 ロビンが思わず、ガルシアまでもおかしな事になったのではないか、と疑ってしまった。
「シンを信じてないわけじゃないけど、いくら何でも無茶よ、兄さん!」
 ジャスミンも同意していた。
「みんな、確かに一週間ごときでは、得られる力はたかが知れている。しかし、俺は信じる。きっとシンの考えとは、きっと深い意味のあるものに違いない……」
 シンの申し出に食い下がる仲間達を、ガルシアが宥め、黙らせる。
「シン、そうであろう?」
 この頃のシンの力を見ての決断であった。
 ジャスミンに現れた、『プロミネンス』の最終形態や、イワンの憎しみと怒りによって、顕現した『ブレイン・コネクト』の対処法を瞬時に見破るなど、シンの、相手の力を読み取る能力は、目を見張るものだった。
 そして何より、シンと付き合いの長いガルシアは、彼の本当の実力を様々目にしてきた。こうした理由から彼を信じることにしたのだ。
「ああ、みんな、今はオレを信じてくれ。何としてもオレはイリスを救い出したい。もちろんシバもな。だから、オレに一週間、時間をくれ、どうか頼む……」
 シンは頭まで下げてきた。
「シン……、分かったよ。オレももう、君を止めない。君を信じる」
 ロビンはついに、シンの考えに懸ける事にした。
「みんなも、もう何も言うな。きっとシンなら、何とかしてくれる」
 ロビンは、シンに異議を唱えないよう、仲間達に言う。
 ロビンもガルシアも、シンを信用し、彼のいつになく真面目な様子に、ついに仲間達も彼を止めようとしなくなった。
「ありがとう、みんな……!」
 シンの考えは、自ら命を落とすような事であったため、深く語ることができず、信用を得る事は難しいと、シン自ら考えていた。
 しかし、仲間達の信頼は、予想以上に高いものだった。感謝の気持ちは、溢れ出んばかりである。
 シンはもう一度仲間達に礼を言うと、イワンからテレポートのラピスを拝借した。
「みんな、一週間、いや、明日必ず帰ってくる。ありがとう、オレを信じてくれて……!」
 シンはテレポートのラピスを指に填め、エナジーを発して指輪を反応させる。
『テレポート!』
 シンの姿は輝きに包まれ、何処かへと消えていった。
    ※※※
 迫り来る死に、民が怯えて過ごすウェイアード極東の島、ジパン島イズモ村に、怪しげな者が足を踏み入れていた。
 編み笠をかぶり、黒い外套を羽織った者が村へと来ていた。降雪により、雪の積もった編み笠をかぶり、更に笠の下の顔には、包帯が巻き付けられており、目以外一切顔が窺えない。そのため男か女か分からない姿をしていた。
 そのような不審な人物が現れながらも、民に気付かれることはなかった。村の中が静寂に包まれ、外を歩く者はほとんどいなかったからだ。
 編み笠の者は、村の中心部を避けて通り、人目に付かないように移動した。編み笠にも、村人に気付かれるのは都合が悪かったらしい。
 村を出歩く者が少なかったのは、編み笠には思わぬ幸運であった。
 編み笠は里を通り抜け、村はずれの林へと足を運んだ。そこには、ある人物が住んでいるはずだった。
 そして、発見した。人里離れた所に一軒だけ存在する、里にあるものよりも少しばかり大きい家を。
 探す人物は、かなり腕の立つ女剣士であった。そして、彼女は家の外で立っていた。世界中に満たされた瘴気だけでなく、雪で灰色に包まれた空を、その者は物憂く見上げている。
ーー見つけた……!ーー
 編み笠は、左が漆黒、右が白銀の双刀を抜き放ち、ざっ、ざっ、と足音を立てながら、女に駆け寄った。そして、剣が僅かに届かない間合いで足を止める。