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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 18

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第65章 暗黒へ進む世界


 デュラハンが一ヶ月後に人々を殺し、ウェイアードを暗黒の世界へと変える宣言を、全世界の人々に宣告してから、一週間の時がたった。
 デュラハンの女、スターマジシャン、シレーネにより、世界に点在するエレメンタルの灯台を全て消し去られたことによって、世界のエレメンタルパワーは再び著しく減少した。
 四つの内、三つの灯台が灯されたことにより、エレメンタルパワーのバランスを崩し、世界に危機が訪れていたが、一気にエレメンタルパワーが消失したことにより、世界はより危険な状態となった。
 ウェイアードという名の天秤に注がれた、エレメンタルパワーという水が、急にこぼれ出たことによって、天秤は左右に激しく揺れ動く。ウェイアードはまさに、そのような激しく動く天秤の状態であった。
 ウェイアードの東西の果てに存在する滝、ガイアフォールは急速に浸食を強め、ガイアフォールに隣接する島、ガラパス島は、遂に一部分が飲み込まれ、崩壊した。
 浸食の異常な早さで、レムリアの王、ハイドロに恐れられていた闇の空間を形成する、通称暗黒ガイアフォールは更なる浸食の早さを得てしまった。
 一月後に魔王デュラハンに滅ぼされるより先に、暗黒ガイアフォールにマーズ灯台が飲み込まれ、消滅する危険があった。
 世界の人々は、日に日に迫る死に怯え、暮らしていた。しかし、ロビンら、運命に選ばれたエナジストは、浚われた仲間を救い、そしてデュラハンを倒ことを諦めてなどいなかった。
    ※※※
 一週間前、デュラハンが破壊の宣告をしたその日。
「ひとまず、レムリアへ行こう」
 提案したのはシンであった。
「どうしてレムリアなんだ?」
 突然の提案に、仲間を代表して訊ねたのは、ロビンである。
「外界から遮断された状態のレムリアなら、多分、あの黒い光も瘴気の影響も受けちゃいないだろう。それに、レムリアには、外界にはない優れた医術がある。ロビン、ガルシア。お前達の親も助けられるかも知れないだろう?」
 ロビンは納得した。
 確かに、常に霧の中に包まれており、その中で独自の理を持つレムリアならば、デュラハンによる被害が、あったとしても少ないと考えられた。
 更に、父、ドリーは未だ昏睡状態である。もとより、ハイディアにはすぐれた医術使いがいない。村へ帰したところで解決策は皆無である。
 その上、ただでさえ、ウェイアードの医者では、とてもどうにかなる状態ではないというのに、ウェイアードはデュラハンの出現により混乱している。
 人を二百年以上、生き長らえさせるような薬を調合できる医術の力のある所へ連れて行った方が、ドリーやシェルス達を助けられるやもしれなかった。
「確かに、君の言うとおりだな。でも、どうやってレムリアまで行こうか? シバがいないんじゃ、『テレポート』も使えない……」
 ロビンは先ほど、水の者が弾けたときに拾った、テレポートのラピスを取り出した。
 シバが持っていた時は、瑠璃色に光沢を放っていた指輪だが、ロビンが持っていても、輝きは放たれない。
 ロビンは何度か自らのエナジーを込め、指輪に秘められた力を引き出そうとした。しかし、持ち主の能力と指輪の力が合わない限りは、その力は決して出ることはなかった。
 そのため、シバ以外にはテレポートのラピスは使えないのではないかと、ロビンは思ったのだ。
「ロビン、その指輪、ちょっと貸してもらえるか?」
「あ、ああ……」
 ロビンはテレポートのラピスをシンに手渡した。
 しかし、シバが持った時のような変化が起きるかと思いきや、何も起こらなかった。
「こいつはどうやら、風の力に反応して、持ち主にエナジーを与えてくれるらしい……」
 シンは指輪を摘むように持ちながら、それを回して見回していた。
「それじゃあ、お前が持ってても意味ないんじゃねえのか?」
 ジェラルドが訊ねた。
「一応、オレは風のエレメンタルに属しているらしいが、シバほど深くないんだ。あいつのように持っただけじゃ、どうやらこいつは反応してくれないようなんだ」
「じゃあ、やっぱり意味ねえだろ」
「早とちりだぞ、ジェラルド。オレは持っただけ、では反応しないと言ったんだ」
 言うと、シンはテレポートのラピスを掲げ、エナジーを詠唱した。
『颯の術!』
 両足首に、風のエレメンタルを示す、紫色の光が発せられ、地面から少し浮く力がシンに備わった。
 すると、その力に反応するかのように、テレポートのラピスは、シバが持っている時ほどではないにしろ、瑠璃色の光沢を放った。
「……こんな感じに、オレが風の力を纏った時にだけ、こいつは反応してオレにエナジーを授けてくれるらしいんだ」
 皆が驚く中で、シンは更にエナジーを発動した。
『テレポート』
 シンの全身が、光に包み込まれると、無数の粒へと姿を変え、四方に散っていった。
「消えた!?」
「こっちだ」
 背後から声が聞こえ、ロビン達が振り向くと、シンの姿がそこにあった。
 彼が纏う、風の力が消えると、同時に指輪も、光沢を放たなくなった。
「風のエナジーが強い奴なら、オレみたいに別のエナジーを経由しなくても、この指輪は反応して力を与えてくれるだろう……」
 シンは、驚く一同の間をつかつかと歩き、イワンの前で立ち止まった。そして、テレポートのラピスを差し出す。
「イワン、お前にはシバと並べるくらいの風の力がある。こいつを使ってオレ達をレムリアまで連れて行ってくれ」
「ボクが、本当に……?」
 イワンは怖ず怖ずと、テレポートのラピスを受け取った。それから、まるで汚れが付かないよう、注意するかのように、イワンは両手の指先で指輪の縁を持った。
 しかし、風のエナジストであるイワンが持っても、指輪はいっさい反応を見せようとしない。
「やっぱり、ボクじゃだめなんじゃ……」
「そんなことないぞイワン。指輪に風の力を込めてみろ。指輪が満足するようにな」
「は、はい……」
 イワンは集中し、テレポートのラピスへエナジーを送った。すると、ようやく反応を見せたそれは、シンが持った時より遙かに大きな輝きを見せ、イワンにエナジーを授けた。
「不思議な力……、これが『テレポート』……」
 イワンは、頭の中に流れ込んできたエナジーに、思わず魅了されてしまった。
「よし、取りあえず『テレポート』でここから出よう。できるよな、イワン?」
「はい、ここにいる皆さんでしたら、一気に飛ばせます!」
「頼もしいな。それじゃあみんな、イワンに触れるんだ。脱出するぞ」
 シンの言葉に促され、ロビン達は、手負いのドリー達を担いで、イワンの背中に触れた。
「行きますよ……!」
 イワンは目を閉じて集中し、両手で持つテレポートのラピスに、エナジーを込めた。
 指輪が反応し、ラピスラズリに込められた力が解放される。
『テレポート!』
 イワンを中心に、ロビン達は光に包まれ、無数の粒へと変身し、風に舞う粉のように散っていくのだった。
    ※※※
 ロビン達はレムリアへ来た。
 レムリアへ来るのはこれで二度目であるが、その姿は、かつて来た時と比べ、特に変化はなかった。