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綾瀬しずか
綾瀬しずか
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あゆと当麻~嵐のdestiny~

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第一話嵐のdestiny 動き始めた運命




三度の出会い。
それがすべての始まりだった。
一度目は大阪の蔵の中で出会った。当麻五才、亜由美四才の時である。
二度目は亜由美の中学校に当麻が転校してきて再会した。
三度目は当麻が仲間と東京で共同生活を始めた頃になる。
異空間の悪の帝王、阿羅醐を倒した当麻達は小田原の柳生邸で休養を兼ねて、仲間たちと過ごしていた。仲間は五人いた。仁の心を持つ真田遼、義の心を持つ秀麗黄、礼の心を持つ伊達征士、信の心を持つ毛利伸。そして戦いに巻き込まれた幼い山野純。またこの休養に屋敷を提供し、また鎧戦士の出現を亡き祖父と共に待っていたナスティ・柳生。これだけのものが阿羅醐にはむかっていた。そして彼らは壮絶な戦いの末、阿羅醐を倒した。しかし、まだ本当に阿羅醐が倒れたか皆、自信が無かったからだ。異空間、妖邪界にとらわれた人々はまだ帰還していない。巻き込まれた山野純の両親が帰還していないのがそのいい例だろう。
それに遼は最強の鎧、輝光帝を発動させた後、こんこんと眠り続けていた。ある時、秀が実家に電話しているのを見ていた当麻はふいに留守番電話を思い出した。ナスティに言って電話を借りる。まわりに誰もいないのを確認しつつ、子機を操作する。
”私だ。研究が続いていてしばらく研究室に泊り込む”
「親父だな」
”とうまくーん。もうちょっとしたら日本に帰るから。おみやげ待っていてねー。また電話するわー”
「相変わらず、お袋は騒々しいな」
思わず、当麻は小さく笑う。
”亜由美です。たまにはこっちにも顔を出してください。会いたいです。それでは”
「こいつも相変わらず、馬鹿丁寧な奴だな」
一つ下で親戚の女の子の声を聞いて当麻の顔にまた笑みが浮かぶ。
人見知りの激しい当麻だったが、彼女は珍しく当麻と親しい関係にあった。彼女との関係を一言で現すのは難しい。親戚、後輩、妹分、友達のいずれをも満たしていたからだ。仲間以外で当麻と親しい唯一の人間であることは確かだった。
一度、関西に戻ってみるか。日帰りぐらいできるだろう。
そう思った当麻は留守番電話の操作を終えると、亜由美の家のダイヤルを回した。

当麻は改札口を出るとすぐに亜由美を見つけた。
「久しぶり」
軽く手を上げて言葉をかける。
相変わらず、亜由美は黒縁の眼鏡を無造作にかけ、肩胛骨までのびた髪を後ろで三つ編みをしている。
別れた頃は肩にとどくか届かないぐらいだった。
たった半年なのに時の長さを感じてしまう。
「これ東京の土産」
当麻は手に持っていた紙袋を手渡す。
「ありがとう」
亜由美はうれしそうに受け取って中身を見る。
「雷おこしに草加せんべい・・・。いかにも東京って感じ〜。おじんくさい〜」
「つべこべ言うな。折角帰ってきたんだから。電話一本で帰ってきたんだぞ」
からかう亜由美に向かって当麻が言う。
「ごめんなさい、です」
亜由美がぺこり、と頭を下げる。
律儀なその様子を懐かしげに見るとぽん、と軽く頭を叩く。
「とりあえず、喫茶店でも行くか」
そう言って当麻はすたすたと歩き出す。
もうこの辺ならばどこに何があるのかはしっかり頭に入っている。
亜由美は紙袋を手に下げてぱたぱた小走りして後ろにつく。
デートと言えるのか分からない二人のデートはいつもこんな具合だった。
勝手に当麻が第一目的地を決めて、亜由美がちょこまかとついてくる。
途中で亜由美が何か言って第二目的地が決まる。

喫茶店はクーラーが効いていてかなり涼しかった。いや、寒いぐらいと言ってさしつかえないだろう。
当麻はアイスコーヒー。亜由美はチョコパフェを頼む。
当麻は亜由美が話す近況報告を聞く。
たいして問題のない様子を満足げに聞く。どこかおっちょこちょいの亜由美をいつも当麻が陰からフォローしてやっていたからそれなりに気がかりであったのだ。亜由美はひとしきり話すときょろきょろと周りを見まわして口を開く。
「東京・・・大変そうだったけど・・・大丈夫やったの?」
亜由美には自分が戦士として東京に行くということだけは簡単に知らせてあった。
両親には必要があって上京するとは言ってあったが、このことに関しては亜由美にしか告げていない。何も言わずに上京するのはなんとなく気が引けたからだ。始め、それを聞いた亜由美は目を丸くしていたが、従来の素直さですぐにその事実を受け入れていた。亜由美自身、幼い頃、当麻共に鎧伝説の書かれた古文書を見ていた記憶があるからだろう。
東京の騒ぎは全国に余波が広がっていた事は当麻も知っていた。
大阪に作られた臨時政府が解かれたのもつい先ごろだ。
だが、すべて丸く収まったかのような今では皆、喉元過ぎれば熱さ忘れると言った状態である。
「たぶん、な。そういう話は外で話してやるよ」
当麻はそれだけ答えて話を仲間の事に切り替えた。
不満そうに仲間の事をさんざんぼやく当麻を亜由美は面白そうに見る。
「・・・一番の被害は征士の素振りだぞ。部屋で朝の五時からしてるんだ。こっちはまだ寝てるっての。安眠妨害するなって」
その自分は集団行動を乱しているとは露とも思っていない当麻である。
「とかなんとかいって、本当はすっごく大事なんやない? 友達の事話してる当麻君、めっちゃ楽しそう」
確かに亜由美以外が入ってこなかった領域まで彼らが入ってきているのは事実である。
三日いれば猫でも情が沸くんだ、と思っているのは当麻の強がりである。
実際は気がね無い友人として認識し始めていた。
亜由美に指摘されて当麻は顔をしかめる。
「図星や〜」
亜由美が面白い物を見つけたかのように笑う。屈託無い笑顔を久しぶりに見て当麻の心がなごむ。亜由美は仲間の事を根掘り葉掘り聞き出す。共にいて知り得た性格や趣味、行動様式、癖、家族構成など答えているうちに最後は眠り続けている遼の事になる。
ちょうど、二人とも飲食し終わったので喫茶店を出て、河川公園へ向かう。お金をつかわない所という亜由美のリクエストに答えていると自然にそうなるのだ。
「遼さん、早く目がさめるといいね」
歩きながら、亜由美はまるで遼が自分の友達のように心配げな声を出す。
「たぶん疲れてるだけだから」
言いながらひどく自分も気にかかっているのを自覚する。
「そういうわけだから、今日の夕方にはとんぼ帰りすることになっている。悪いな」
言うと亜由美はほんの少しさみしげな表情をしたがすぐに納得する。
「お友達が寝こんでたらめっちゃ心配やもんね。ほんと、はやく良くなるといいね」
「あゆは優しいな」
当麻が優しく目を細めて言うと亜由美はさも当然と言った顔をする。
「当麻君の友達やもん。私だって心配やよ?」
はんなりとした京都弁がより一層優しげに聞こえる。
「京都弁もなかなかいいもんやな」
久しぶりに関西弁を話す。
「さっきの当麻君ってきっちり東京っ子やったもんな〜」
おかしそうに亜由美が笑う。
「各地方から集まっているからな。標準語の方が通じやすいんや」
「標準語ってどうやって話すの?」
亜由美にせがまれて標準語講座をしながら河川公園のベンチに座る。
一級河川の中州は塔の島と呼ばれて人々に愛されているが、暑い夏という事もあって人はまばらだ。
ここなら気がね無く東京の事が話せる。