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綾瀬しずか
綾瀬しずか
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あゆと当麻~嵐のdestiny~

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当麻はそう考えて本の少しだけ妖邪との戦いを話すことにした。意外に話しこんでいた当麻は言葉を切って回りを見回した。まばらといえど、しっかり人の気配があったのにすっかり消えうせている。命の気配、というものがまったくない。当麻は立ちあがって後ろ手に亜由美をかばうと身構えた。
「そこを離れるな」
硬い声で告げられて亜由美は怯えて当麻の服を握る。
ゆらり、と鎧武者の幻影が現れる。
亜由美は恐怖に声を上げようとしたが縛られているかのように声が出ない。
当麻は防具を纏う。亜由美の背後に何も来ていない事を確認して当麻はその幻影に向かっていった。
だが、幻影であって実体で無い鎧武者は当麻の攻撃にゆらりと姿を消してはまた現われる。いくら攻撃しても通用しない。
亜由美のほうを警戒しながら戦っていたが次第に亜由美との距離が離れていく。
亜由美はその様子をただ目を見張って見ていた。
頭のどこかで奇妙な感覚が広がっていく。
自分はこれを知っている、と亜由美はふいに思った。
この鎧武者達がどこから来て何者なのか知っている、と思った。
当麻では勝てない。
変な確信が亜由美を支配する。
鎧武者の一体の視線が亜由美を捕らえた。
ぞくり、と悪寒が背中を駆け上る。
いや、と亜由美の口から小さく言葉がもれた。
「来ないで・・・」
亜由美はじりじりと後退する。だが、すぐに岸に行き当たってしまう。コンクリートで護岸された岸は一歩踏み外せば河の中である。
鎧武者が近づいてくる。
当麻は戦いに夢中で気がついていない。
”我ラガ仇ナスモノ・・・。次代ノ長・・・”
亜由美の頭に直接声が響く。
「いやっ!」
亜由美は耳を押さえ、声を上げた。
”殺セ・・・。殺セ・・・。我ラガ仇ナスモノヲ殺セ・・・”
ぞっとするような声音に亜由美は激しく頭を振る。
「来ないで・・・。来ないでっ!」
亜由美は思わず後退しようとして足を踏み外す。
がくん、と河に落ちようとする亜由美の頭の中で恐怖がスパークした。
駈けつけた当麻が間一髪の所で亜由美の手を掴んで引き寄せたその時、周りが一気に発光した。
目もくらむばかりのまぶしさに当麻は亜由美を腕に抱きしめながら目を閉じた。ほんの一瞬で光は消えうせた。
目を開けた当麻はちかちかする目をこらして周りを確認する。公園は元の公園に戻っていた。慌ててまとっていた防具をはずす。
周りの人間は今の出来事を何も察知していない様だった。幸いなことに発光現象も目にされておらず、人が集まる様子も無い。
現状を確認してから亜由美の様子を確認する。腕の中の亜由美は青白い顔をして目を閉じていた。
「あゆっ。あゆ・・・っ」
気を失っているのかと思いながら当麻は名を呼ぶ。何度か名を呼び、揺さぶると亜由美は閉じていたまぶたを開けた。
奇妙なものをみるような目つきで当麻の顔をじっと見る。
「お前、大丈夫か? 怪我は無いか?」
立たせながら当麻が尋ねると亜由美はきょとんとする。
「何があったんですか?」
中学校で再会したときのような敬語で話されて当麻はやや不審に思いながら亜由美を先ほどのベンチへ連れていく。
妖邪との戦いを目にしても記憶にとどめている人間は少ない。もっとも異空間、妖邪空間にとらわれていた人々はまだ帰ってきてはいないし、例え、難を逃れた人々であっても奇妙な出来事は意味無く科学的な意味付けをして自然と忘却の河に流す傾向があった。
だから、亜由美が覚えていなくともなんら不思議ではなかった。
「覚えていないのなら、別にいい。何か飲むものでも買ってこようか?」
言って当麻が立ちあがると亜由美は怯えた様に当麻の服を握る。
「ここどこなんです? 私は誰なんですか?」
当麻はその言葉に耳を疑った。

「弱ったな・・・」
ベッドの上ですがるような目をして当麻を見ている亜由美を見て当麻は小さく呟いた。
亜由美は今までの記憶をすっぽり失っていた。日常生活に支障はない。ただ、人間関係や思い出、固有名詞などを完全に忘れていた。
公園でその事に気付いた当麻は京都の研究所にいる父親を強引に呼び出すと父親のコネを使って大学病院へ連れていった。
そこで当麻は我ながら陳腐だと思うような言い訳をして亜由美が記憶喪失になった事を医者に伝えた。
まさか鎧武者に襲われててこうなったとは言えない。さらに事件性を匂わすような言い訳も出来ない。そうなれば、警察に通報されるからだ。
当麻の父親の連絡を受けて亜由美の両親が駈けつけた。
その両親の顔を見ても亜由美は怯えるばかりで当麻の背中に隠れてしまった。
ともかく精密検査をしなくてはならない、ということで入院の運びとなったが、当の本人は当麻にしっかりとしがみついて離れない。
当麻以外のものは何もかも怖い、といった風で流石の当麻も弱ってしまった。とりあえずそばにいるからと言ってベッドに入らせた次第である。
妖邪とは断定できないが、そのようなものに出会った当麻としては一刻も早く東京に戻って調べたかったのだが、目に涙を浮かべて怯えている亜由美を見ているとどうしても放ってはおけなかった。
とりあえず、急用が出来て日帰りが出来なくなったとナスティに連絡する。妖邪の件は、直接言えるまで伏せておくことにした。
面会時間ぎりぎりまでいた当麻は明日、朝一で来るからと必死になだめて病院を後にした。
精密検査の結果、異常は見つからなかった。何か精神的な理由でそうなったと結論つけられた。
確かに、普通の女の子にあの戦いはショッキングだろう。だが、そうと知っていて話せる話ではない。当麻は頭を痛めた。さらに頭を痛めたことに、通院で治療を続けることになった亜由美がどうしても両親の元へ帰りたがらないのだ。弱った両親や医師達は入院させようとしたが、それを察知した亜由美はいち早く当麻の背中に隠れてしまった。それからひっついて離れない。
何も物を口にせず、断固として離れない亜由美に当麻は困り果てた。
自分は一刻も早く東京に戻らねばならない。かといってこの様子の亜由美を放っておくわけにはいかない。
自分が亜由美の側に立ってやらねばそれこそ彼女は孤立無援になってしまう。ただでさえ、記憶を失って心細いのに頼っている相手に突き放されるのはもっとつらいだろうと当麻は思うのだ。
それに亜由美は何といってもただの他人ではない。自分に人といることの暖かさを教えてくれた人間の一人なのだ。弱った当麻はついに父親に頼った。
電話で父親に話す。
当麻は自分が一刻も早く、東京に戻らねばならないこと、だが、こんな亜由美を放っていくのは忍びないことを簡単に告げた。
当麻の父親は当麻のごく簡単な話を聞いていきなり切り出した。
”お前、結婚して責任取れるか?”
はぁ?と当麻はぞんざいに問い返した。
「齢、14の俺にどうやって結婚できるんやっ」
当麻は父親に相談したのが間違いだったかと頭を抱えた。
”東京の知り合いに優秀な精神科医がいる。その病院に連れていきたいと言えば問題はないだろう。
だが、子供と言っても男と女だ。何か間違いが起こっては困る。だから何かあったときに将来責任を取るという事で婚約でもしておけばなんとかなるだろう”
「本人同士の意思はどこにあるっっ」