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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 20

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第72章 開幕


 エナジーを一点に集中し、徐々に増幅させることによって、それを結晶化する。
 空間に形成されていく結晶は、最初は棘のある、触れただけで手が切れそうな、鋭利なものであったが、エナジーが込められるにつれ、少しずつ丸みを帯びていく。
 エナジーの結晶が完全な球体となった所で、ハモはエナジーを止めた。
「ふう……、できたわ」
 ヒナからもらった超兵糧丸の効果でエナジーが高まったハモは、エナジーを結晶化させることにより、自らの力をその結晶に込めていたのである。
 ハモは、人の顔ほどありそうな紫の球体を、手の上に浮かべている。
「ハモ様、それは一体?」
 ロビンは訊ねた。
「これは、私のエナジー、というよりもアネモスの力を込めた球。言うなればアネモスオーブ、って所かしら」
「アネモス、オーブ?」
 体力を回復し、エナジーも強化された所で、ハモが何をこしらえているのかと、ロビンは不思議に思っていた。
 そもそもエナジーを結晶化する事自体、初めて目撃したことだ。
「エナジーを結晶化なんて……、ハモ、どうしてそんな事ができるの?」
 ヒナもエナジーの結晶化という現象は、初めての体験である。
「私のエナジーは、どういうわけか、とても大きいのです。ですが大きいといっても私には、相手を攻撃するための、強いエナジーはありません。代わりに私には、戦闘に直接関わらない能力があるのです。真実を見通す力、予知能力、心を読む力、瞬間移動能力……」
 ハモが列挙した力は全て、特別と言えるものばかりであった。
 それぞれ、『イマジン』、『プリディクト』、『リード』、『テレポート』といった風のエナジーの神秘性を強く持つものである。
「そして、こうしたエナジーを結晶化させて、他の人にも使える媒体を作り出すこと。これは、ヒナさんのくれた丸薬のおかげでできるようになりました」
「それはすごいわね、作ったあたしも少し鼻が高いわ」
「ではそのアネモスオーブを使えば、ハモ様と同じエナジーが使えるように……?」
「なれるわ、メアリィ。でも、これには制限があるの……」
「制限、ですか……?」
 ええ、とハモは頷いた。
 ハモのエナジー結晶化の能力は、まだ完成しきっておらず、他のエナジストに、自分と寸分違わないエナジーを使えるようにする事はできなかった。
 とりわけアネモスの力、などと呼ばれる特殊なエナジーを、完全に他人へと譲渡する事は難しく、エナジーの結晶を使ったところで、中途半端な力しか授けることはできないのである。
「このオーブを使えば、『テレポート』が使えるようになります。でも、イワンの持っている指輪と違って、誰でも使える代わりに、決まった場所にしか行けない上に、二回力を解き放つと、壊れてしまうのです……」
「たったそれだけで……。ですが、どうして二回なんですか?」
 ロビンが訊ねる。
「このオーブは、空間を往復できるようになる道標のようなものなの」
 オーブを用いることにより、使用できるようになるエナジーは、『テレポート』であるが、ハモは予知能力によってある場所を特定し、そこにしか行けない特別な力を込めた。
 そのある場所、というのがまさしく、デュラハンのしもべがいる場所である。
「まさか、奴らの居場所が分かったのか!?」
 意気込んで訊ねてくるジェラルドに、ハモは頷いた。
「彼らの居場所は調べました。『プリディクト』でね」
 ハモはデュラハンが暗黒錬金術を生み出すべく、エレメンタルの灯台に代わる礎を築こうとしている意図を読み、三人のしもべをウェイアード各地にやった事を予見した。
 そして更に、彼らが礎を築かんとしている場所を探り出し、オーブにその場所へ行くことのできる、『テレポート』の力を込めたのだ。
 ふと、ハモはアネモスオーブを三つに分けた。それにより人の顔ほどだったオーブが、手のひらに収まるくらいの大きさになった。
 ハモの手の上にて、ふわふわと浮かぶ三つのオーブはそれぞれ赤茶、群青、深緑の色を持っている。
「小さくなっても、効果は変わらないから安心してください」
 ただでさえ力に制限があるというのに、分けたせいで多少力が抑えられてしまうのではないか、という皆の考えを読んだようにハモは言う。
「ハモ様、どうしてその球、色が違うんですか?」
 ロビンは訊ねる。
「この三つの色は、デュラハンのしもべの潜伏する場所を示しているのよ。色は、デュラハンの手下の特徴から付けたの。例えば、どんなものを身に纏っているかを見通してね」
 ハモはデュラハンの手下がどこにいるのか特定した上、どのような姿なのかも定めていた。
 スターマジシャンを名乗る魔女は群青色のローブを身につけ、ビーストサマナーという野獣は、赤い肌に、茶色の毛を生やしている。
 そして、デモンズセンチネルという剣士は、深緑の鎧を着込んでいた。
 ハモは彼らの容姿に似た色をオーブに出現させ、同時にどのオーブを使えば誰の所へ行くことができるかを示したのである。
「オーブは三つ……、ならみんなで手分けして、討伐に行くのはどうかしら?」
 ヒナが提案した。
「手分けするって、オレ達が束になっても勝てるか分からないのに、無茶だろ!」
 ジェラルドはすぐさま提案に反対する。
「確かに戦力の減退は避けられないわ……。でもよく考えて、ジェラルド、もうデュラハンは計画を実行に移してる。全員で奴らの所に行って戦ってたら、よけいな時間を食うことになるわ」
 デュラハンらの手に掛かれば、今日明日にでも、彼らの計画を実行する事ができるのは、誰もが予想できた。デュラハンからの宣告を聞けば分かることである。
 その計画を阻止するためには、一日はおろか、一時たりとも無駄にはできない。戦力を分散したとして確実に勝てる保証はないが、そもそも計画を実行されては元も子もない。
 時間を無駄にしないためにも、皆で手分けしてデュラハンのしもべを倒すことが不可欠であった。
「ジェラルド、ヒナさんの言う通り、だと思う」
 ロビンは賛成していた。
「ロビン、お前本気か!?」
 ロビンは真剣な眼差しをしながら、頷いた。
「戦力を分散させながらでも、奴らに勝てる位じゃないと、デュラハンにはとても適わないと思うんだ」
「けど、いくらオレ達がこれまでの修行や、あの激マズ玉で強くなってたとして、奴らに追い付いてるか分からないだろ!?」
 ジェラルドはやはり強く反対する。
「ジェラルド、もしかしてあなた、恐いの?」
 事が重大であるためか、ヒナは珍しく真顔で言った。
「なっ!? そ、そんなんじゃねえ! そんなんじゃねえ、けど……」
 ジェラルドの心には、ヒナの言う通り、少なからず恐れの感情はあった。しかし、それ以上にある種の不安があったのだ。
「ただ、その……、オレにはみんなみたいに役に立てんのか、それだけの力があんのか分かんねえんだ……!」
 ヒナには力通眼という特殊能力に、類い希なる剣の腕がある。他方、ロビンには、そのヒナさえも圧倒するような力が宿っている。
 同じように、ガルシアにも他の者に負けない、黒魔術という力を持っており、イワンも『ブレイン・コネクト』という最強に等しいエナジーを持っている。