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二年目八月下旬 パンパシフィック選手権 二日目



パンパシフィック選手権二日目に行われる試合には男子フリー100メートルもある。
午前中に行われた予選では、凛と遙を含めた十一人の日本代表選手が出場したが、決勝まで駒を進めたのは三人だけだった。
その三人のうちひとりはB決勝であり、A決勝に進出したのは凛と遙のふたりだった。

夜、男子フリー100メートルA決勝。
プールサイドを遙と凛が進む。
その姿を日本のテレビ局のカメラも追っている。
日本とオーストラリアは北半球と南半球で位置は離れているが、経度の関係で、時差は一時間だ。そのため、日本においてもちょうど良い時間、ゴールデンタイムと呼ばれる時間に生放送できる。
実況の男性アナウンサーが説明する。
『予選を、七瀬選手は三位、松岡選手は五位のタイムで突破し、A決勝に進出しました。日本人選手が強いとは言えないこの種目では、良い成績と言えるでしょう。まして、このふたりは一緒に泳ぐとタイムを爆発的にあげてきます。メダルはもちろん、日本選手権で七瀬選手が樹立した日本記録の更新も期待されます』
解説の水泳関係者も話す。
『このふたりは本当にすごいですね。これまで国際大会未経験というのが信じられないぐらいの強さです』
『日本選手権とジャパンオープンの決勝でのふたりの泳ぎは、見る者に鮮烈な印象を残しました』
『ふたりとも日本選手権もジャパンオープンも初出場で、他の選手を圧倒してましたからね』
『今回はセンターレーンからやや離れましたが、日本選手権とジャパンオープン同様、隣り合わせのレーンです』
凛と遙はスタート台に立った。
「やっぱりおまえがいねぇとな」
抑えた声で凛が言った。
遙は凛のほうを向く。
凛も遙のほうを向いていた。
そして、凛は笑った。
じゃねぇと、張り合いねぇからな。
そう言葉に出さずに伝える。
遙も少し笑う。
それから、ふたり同時に真剣な表情になりプールのほうを向く。
"Take your marks!"
選手たちはスタート体勢に入る。
そして。
合図の音が響き渡った。
一斉に、選手たちはプールへと飛び込んでいく。
『さあ、どうなる!?』
『どうなるでしょう。七瀬選手と松岡選手には日本選手権とジャパンオープンのままの勢いで行ってほしいです、あ、松岡選手がトップです!』
『松岡選手はスタートとターンが得意ですからね。本人もそのふたつには自信があるでしょう』
『しかし、トップとはいえ、まだ他の選手とはそんなに差はありません』
『いや、差がどんどん開いてきてますよ……!』
『そうですね、ついていっているのは七瀬選手だけ!』
『七瀬選手が追い上げてます』
『これはもうすぐ並びますね』
『そうさせないように松岡選手は速度をあげてます』
『もうすぐターンです!』
『松岡選手得意のターン!』
『これは、ふたりほぼ同時……!』
『でも、やっぱりターンで松岡選手は七瀬選手に差をつけましたよ』
『ですが、七瀬選手は追い上げますよ、きっと!』
『前半あれだけのスピードで来て、後半スピードが落ちない。むしろ、スピードがあがっている!』
『追い上げたい七瀬選手と、逃げ切りたい松岡選手。ふたりのライバル心がいい方向に働いているようです』
『まさに、好敵手、という感じですね』
『他の選手たちとの差はさらに開いています』
『もう金と銀はこのふたりで間違いない! あとは、どちらが金でどちらが銀か、です!』
『七瀬選手が、松岡選手とほぼ並んだ!』
『やっぱり来ましたね!』
『でも、ゴールはもうすぐだ!』
『松岡選手、逃げ切れるか!? 七瀬選手、追い越せるか!?』
ふたりがゴールする。
プールの壁にタッチしたのは同時に見えた。
しかし。
順位が表示される。
『一位は、七瀬選手だー! 世界デビューで、いきなりの金メダル!!』
『でも、松岡選手もよくやりましたよ! 本当に僅差の、二位です』
『ええそうですね。タイムは、あっ、これは、日本記録をまた更新しましたよ!』
『しかも、このタイム! 世界記録との差を一秒以内にまで縮めました!』
『すごいですね!』
『このふたりなら、いつか世界記録も更新するんじゃないですか!?』
『ええ! 期待できます!』
会場内はふたりの勝負で沸いた興奮が冷めやらず、観客席からプールへと拍手が降り注いでいる。
優勝した遙はぼうぜんとしていた。
「ハル!」
凛が呼びかけてきた。
遙は凛のほうを向く。
凛が手を差し出してきた。その顔は笑っている。心から嬉しそうに笑っている。
遙も手を差し出した。
そして、ハイタッチをした。







作品名:For the future ! 作家名:hujio