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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 22

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第79章 復讐の女神、メガエラ


 ジャスミンの突然の助けにより、ザガンはジャスミンの前に跡形もなく消え、バルログは行動不能になっていた。
 ジャスミンの攻撃により、瓦礫の山と化した城壁の下に埋められたバルログは、死んだのか、それともまだ息があるのか。定かではなかったが、バルログは起き上がってこない。
 ガルシアは、驚きのあまり、何も言えない状態になっていた。
 ピカードをボロボロにしたザガンを一撃で倒し、間髪いれずにジャスミンは、バルログをも強力な攻撃で地に沈めている。
 これまで一番ジャスミンの近くにいたガルシアだからこそ、彼女がどのような人物かわかる。根っからの臆病で、戦いになっても後方支援しかしないような少女だった。
 それが今や、強力な炎を自在に操れるほどになっていたのだ。ガルシアでさえ、本当に妹のジャスミンなのか信じられない。
「久しぶりね、兄さん。どうしたの、私の顔見て固まっちゃって?」
 ジャスミンは不思議そうに訊ねる。
「いや、すまん。ずいぶん見違えたものでな……」
 ジャスミンは、性格がとても強気になったようだが、顔つきもどこか違っていた。臆病者のジャスミンの顔は、今は見られない。
「うーん、シンとの練習は結構大変だったからね。きっとそのせいじゃないかしら?」
 ジャスミンは、ここに来る前日まで、ジパン島北部の島、エゾ島にて激しい戦いの日々を過ごしていた。
 そして今日の朝、ジャスミンとシンはそれぞれ宿敵であるデュラハンの手下のもとへと飛び立ったのである。
「シンはまっすぐに、センチネルとかいう相手の所に行っちゃったけど、私は一度ハイディアの方に行ったわ。そこでハモ様から兄さんの居場所を聞いて、急いで飛んできたの。けど、さすがに遠かったわね。エゾ島から合わせて三時間はかかっちゃった……」
 なんとジャスミンは、船で旅すれば数週間はかかろうという距離を、エナジーで作り出した炎の翼で飛行して来たのだと言う。
「三時間でここまで……」
「もう、人間じゃありませんね……」
 ガルシアとピカードは言葉を失うのだった。
「失礼ね、二人とも。確かに結構強くなったと思うけど、私は十七才の美少女よ」
 ジャスミンは顔を膨らせる。自ら美少女と言う辺り、やはり性格の変化はあるようだ。
「そういえば兄さん、そのガウンどうしたの? ひょっとしてお洒落? よく似合ってるわよ」
 ジャスミンはうって変わって目を輝かせた。
「ああ、これか。これは、黒魔術師が身に付けるガウンで、アカフブから……」
 ガルシアが言いかけたところで、瓦礫の山から手が伸びた。
「ぐうう、いててて……」
 死んだかと思っていたバルログは、何とまだ生きていた。しかし、さきほどのジャスミンの攻撃を受けたためか、さすがに傷は目立っている。
「兄さん、ピカード、積もる話は後。まずはこいつの息の根を確実に止めるわ!」
 ジャスミンは、ガルシアとピカードの前に立った。
『プロミネンス・ファイナル!』
 ジャスミンは詠唱した。すると一瞬、大きな炎が渦巻いたかと思うと、炎はジャスミンを纏う緋色のマントに変化し、ジャスミンは空中に少しだけ浮いた。
「さっさと片付けてくるから、二人は後ろに下がってて」
「あ、ああ……」
 ガルシアの返事を聞き、ジャスミンは浮遊しながら、まだ瓦礫の山に首の下が埋まったバルログへと近付いた。
 ジャスミンは近付いたが、バルログはまだ抜け出せずにいる。
「ふふ、あれを受けてもまだ生きていられるなんて、さすが獣は頑丈ね」
 ジャスミンは挑発するように言う。
「ほら、待っててあげるから、早く出なさいな」
 ジャスミンは両手を腰に当て、見下している。
「ぬぐぐ、小娘が、図に乗りおって……!」
 バルログは瓦礫を振り払い、ようやく立ち直ることができた。
「食らえぃ!」
 バルログは力任せに殴りかかった。しかし、ジャスミンは横にかわし、変幻自在のマントの裾をバルログの足に巻き付け、更に喉元に指を突き出した。
「がっ!」
 バルログは再び地に転がる。
「そんな攻撃が当たると思った? だとしたら見くびりすぎよ」
 ジャスミンはまた、バルログを見下しながら言った。
「くぬう、うおおお!」
 バルログは起き上がることなく、口から火を出した。しかし、ジャスミンには全く効果がない。
「生温い炎ね、魚もろくに焼けないんじゃないかしら……?」
 ジャスミンは尚も煽る。
 バルログは起き上がりながら蹴りを放つが、ジャスミンにはかすりもしない。
「本当に熱い炎ってのは、こういうものよ!」
 ジャスミンは手に炎を出現させ、それをバルログへと投げ付けた。
「うお、ぐあああ!」
 バルログは一瞬にして炎に巻かれた。熱さなど感じられない。ジャスミンの放つ炎は、それを通り越して激痛を受けるものだった。
「どうかしら、かなり効いたでしょ?」
 バルログの焼け爛れた肌を見ながら、ジャスミンは笑いながら言った。
 バルログは大火傷に苦しみ、喘いでいた。
「どうしたの、まさかこれで終わりなんて事、ないわよね?」
 ジャスミンは指先から炎を出し、それをバルログに向ける。
「ぐうう……、んぬう……!」
 バルログは震えながら何とか立ち上がった。
「あらあら、これは驚いたわね。まさかまだ立てるなんて」
 ジャスミンは余裕の笑みを浮かべる。
「出よ、魔の毒蜂!」
 バルログは苦し紛れに魔虫の大群を召喚した。
「まずい!」
 ガルシアは叫んだ。
 先ほど戦っていた時は、死神タナトスの力を得ていたため、慌てることはなかったが、先に召喚された時に、魔虫の群れの恐ろしさを聞かされていた。
 いくらジャスミンの炎が強くても、素早く動き回る魔虫に当たらなければ意味がない。
「ふはは……! 刺し殺されろ!」
 バルログが合図すると、魔虫の群れは恐ろしい羽音を立てて、すばやくジャスミンへと攻めかかった。
「……趣味の悪い虫ね」
 しかしジャスミンは、向かってくる虫の大群を前にしても、一切驚く様子を見せない。
「はあああ……!」
 ジャスミンは気合いを込めた。すると、身に付けた炎のマントの裾が、どこまでも長く伸びていった。
「はっ!」
 ジャスミンはマントを周囲に大きく広げて操った。裾を連続で伸縮させ、素早い動きで迫り来る魔虫を、一匹たりとも逃がさず燃やし尽くしていく。
「な、なにぃ!?」
 ついには、バルログの召喚した魔虫は全ていなくなってしまった。
 ジャスミンはマントを手繰り寄せ、もとの丈に戻した。
「あら、もう終わりかしら? 素早い動きで私を翻弄しようとしたようだけど、残念だったわね。あんなの、まだまだ遅いわ」
 ジャスミンは嘲笑うように言った。
 ザガンに次ぐ、取っておきの魔物をあっさりと撃退され、バルログにはもう、打つ手がないように思われた。
「くぬぅっ! こいつだけは使いたくなかったが……」
 ふと、バルログは一枚のカードを空間に出現させた。どうやら、まだ召喚していない使い魔がいるようである。
 カードは七色のエナジーの輝きを放ち、片面に絵が描かれていた。大アルカナの寓画のように、カードには炎を背景にした、二本の剣を手にする、背中に翼を持つ少女が描かれている。
「あいつめ、何をする気なんだ……!?」