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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 22

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 ピカードが言った。
「こいつだけは、危険だから使いたくなかったが、こうなっては仕方ない! いでよ!」
 バルログは空中に魔法陣を描き、その中心にカードを放った。
「復讐の女神、メガエラ!」
 バルログはこれまでのように、空中に展開した魔法陣の中心を槌で叩きつけた。すると、カードは砕け散り、丸めた四つの羽を広げ、カードの寓画として描かれていた少女が姿を現した。
 少女は茶色の短髪で、肩の出た青いワンピースを着ている。腰に巻いた太く、長い革のベルトが特徴的である。
 今回のバルログの召喚は、これまでと少し違っていた。
 これまではバルログが空間を部分的に破壊し、そこを異世界と繋ぐことで魔物を召喚していた。しかし、今回はまるで、封印していたものを解き放ったかのようである。
「ふうん、少しは手応えのありそうなのが出てきたじゃない」
 ジャスミンは身構えた。
「ふん、調子に乗るのもここまでだ。後でまた封印し直すのは骨だが仕方ない。さあ行け、メガエラよ! あの小娘をその剣の錆にしてやれ!」
 メガエラという女神は、両手に形の異なる、柄にリボンのような装飾の剣を出現させた。そして右を下に、左を上にして構える。
 メガエラは一瞬にして斬り付けた。
「うおっ!? メガ、エラ……!?」
 メガエラはジャスミンに斬りかかると見せかけ、振り向いてバルログを十字に斬っていた。
「なんで、俺様を……!」
 バルログは無惨にも、身体を四つに分断され、息絶え霧散していった。
 バルログの内臓が露出する惨死体を見下ろすメガエラの双眸は、冷酷で、つり上がり気味の恐ろしいものだった。
「……やっぱり満たされない……」
 メガエラは、霧散していくバルログの死体を見ながら呟いた。
 瞬間、剣閃が走った。金属が岩を打つような、鋭い金切り音が響く。
「ジャスミン!」
 メガエラは再び振り返り、その剣をジャスミンに向けて振るっていた。しかし、ジャスミンは纏った炎のマントの裾を顔の前まで伸ばし、攻撃を受け止めていた。
「これは、一体何の真似かしら?」
 自らを解き放った主を斬り捨てていながら、メガエラはバルログの命に従って攻撃したかのようだった。
「……あんな手負い、倒したところで何も感じない。……私の気持ちも晴れない」
 メガエラは冷たい瞳で淡々と喋る。
「奴は、私が倒したかった。完膚なきまでに追い詰めて、そして殺したかった……!」
 メガエラの表情に、少しずつ怒りが見え始めた。
「私は復讐の女神。私の敵の敵は、紛うことなき敵! あなた、私と勝負なさい!」
 何故このようになったのか理解し難いが、新たなる敵が出現してしまったようだった。
「なるほど、自分より強い存在が許せないってわけね。分かりやすくていいじゃない。いいわ、私の方もあっけなく終わって拍子抜けしてたところよ。全力をもって相手してあげるわ!」
 ジャスミンはマントの縁で刃を弾き、メガエラと距離をとった。
「ジャスミン、まさか戦うつもりですか!?」
 ピカードは叫ぶ。
「当然じゃない。相手は勝負をご所望なのよ。だったら全力で当たるのが戦士としての礼儀じゃない!」
 ジャスミンはすっかりやる気になっていた。
「しかし、ジャスミン。どうやら彼女は、バルログが召喚した魔物ではないぞ!」
 黒魔術によって、バルログと似たように魔物の類を召喚できるガルシアには、バルログが解き放ったメガエラが特殊なものに感じていた。
 メガエラから感じられる力は、バルログの召喚する魔物のように禍々しいものではなく、多少荒々しいが清らかなものであった。
「彼女からは、魔の気を感じられない。女神と言っているが、恐らく本当だ。彼女からはイリスに似た雰囲気を感じるのだ!」
 メガエラは、イリスの名に反応する。
「イリスは、私が唯一私より強いと認め、従う主……。私はイリスを生涯守護する事に決めた。だから、イリスに仇なす者は、徹底的に排除する。デュラハンの手下、バルログのように……」
 ガルシアは合点がいった。やはり、メガエラから感じた清らかなる力は、イリスと同様のものだったのだ。
 加えて彼女は、自らをイリスを守護する存在と称した。共闘すべきであることは自明である。
「メガエラ! 俺達は、イリスとシバという仲間を囚われている。今我々がすべき事は戦いではないはずだ!」
 ピカードも賛同する。
「そうですよ、メガエラさん、僕達はイリスを助けようとしています。どうか力を貸してください!」
 メガエラは、何かを考えるように目を閉じ、そして言った。
「……お断りよ。私を従えたくば、私より強い力を見せなさい」
「そんな……!?」
「私に負けるようじゃ、絶対にイリスを助けられっこない。そんなのに従うなんて、絶対にごめんよ」
「くっ……!」
 ガルシアとピカードは、どうにか話し合いで解決できないものかと模索する。
「兄さん、ピカード、ここは黙って私に任せてくれないかしら?」
 ガルシアは、ジャスミンの言葉に驚く。
「ジャスミン、本気なのか!?」
「どうしてですか、バルログはもう死んだんですから、ここで戦っても意味は……!?」
 ジャスミンは、ピカードに当たらないように、炎を放った。
「もう黙ってくれないかしら? 私の方も戦い足りないの。これ以上口を挟むんなら、ちょっと寝ててもらうわよ?」
 ピカードは文字通り口を塞がれてしまった。
「……ピカード、もう何を言っても無駄だ。あいつの目を見てみろ」
 そこには、かつてのジャスミンの目はなかった。戦いという血に餓えた、狼のような目がそこにはあった。
「シンのやつめ、一体どんな鍛え方をしたのだ。恨むぞ……」
 ガルシアはこう言いながら、どこか嬉しそうだった。どうしようもなく臆病だったジャスミンが、今や力ではガルシアなどとうに超えている。
 ガルシアは、ジャスミンが必ず勝つであろう、そう確信していた。
「ガルシアまで……、全く、もう二人には付き合いきれませんよ!」
 ピカードも説得は諦める。
 ジャスミンは目の前の空間を指先で切った。すると、その軌跡に棒状の炎が止まった。
 ジャスミンはそれを握り、右端を掴んで横に引いた。鞘から剣が抜かれるように、片刃の刀身が姿を表す。
 ジャスミンは、炎の剣をメガエラに向けた。
「待たせたわね。さあ、始めましょうか?」
「復讐の女神の名において、私は負けない。覚悟……!」
 ジャスミンとメガエラの血戦が、幕を上げた。
    ※※※
 ジャスミンと復讐の女神、メガエラの戦いは、開始早々壮絶を極めていた。
 二人の戦いは、地上、空を問わず行われ、目で追うのも大変なほど高速のものである。
 ジャスミンは片手に炎の剣を持ち、メガエラは両手に剣を持つ二刀流である。
 ジャスミンの持つ剣は、小太刀程度の長さで、取り回しがよく利き、メガエラの攻撃を受けるのを容易くしていた。
 対するメガエラは、両手の剣を同時に振るう事により、その手数でジャスミンの攻撃を制していた。まさに、攻撃は最大の防御、というものを実現するものだった。
 メガエラは、特別筋力があるわけではないが、二本の、それもそれなりの大きさのある剣を軽々と振っている。