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金剛になった女性 - 鎮守府Aの物語

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--- 14 心を検知する艤装




 提督は非戦闘員用で同調が不要な、足にのみつける艤装を付けて、金剛と一緒に海に出た。水上バイクや一人用の船などあるにはあるのだが、提督はあえて艤装にした。


 金剛は戦艦金剛用の制服を身につけて海上を進んでいるが、提督は上下ジャージに足には簡易艤装と、はたから見ればかなりマヌケな格好だった。
「燃料をあまり使うわけにもいかないから、あそこまでだな。」
 提督が目的のポイントを指さす。それは鎮守府から2キロもいかない程度にしか離れていない、何もない海上だ。


 ポイントまで二人で海上を進む。ふと金剛は思った。これは夜のデートじゃないかと。急に意識し始めてしまい、金剛は顔が熱くなるのを感じた。
「風が気持ちよいデス。ほてった身体にはちょうどいいデスね・・・」
「ほてった・・・?あぁ、これ結構運動になるからな〜」
 うっかりほてったと言ってしまったが、提督は気づいていないため別のことと勘違いして返した。


 目的のポイントに付き、金剛は砲撃の準備を始めた。
 と、そこで提督が金剛に近づいてきた。


「そうそう忘れてた。」


 と言って提督は突然金剛の腰(おしりにちかいあたり)と艤装の隙間に手を入れ、艤装を弄って手探りで何かを確認しはじめた。


「What's!? Oh! 何をするデス!?」
「あぁ、ゴメンなさい。もしかしたら精神の検知機能がオフになったままかもしれないから。」


 といって、艤装の側面の蓋を開け、中にあるスイッチに指をひっかける。
「これ、うちに配備される艤装にのみあるスイッチだから。他のところはこのスイッチ部分がまるごと存在しなくて押せないようになってるらしいよ。」
 そう言って提督はパチン、とスイッチを入れた。


「よし、準備できた。いつでもいいぞ。」
 本人は気づいているのかいないのか気にしていないのか。(機械を操作するためとはいえ)いきなり女性の背中に手を入れてよしOK、などとあっさり済ませて彼はどういう神経しているんだと金剛は少しだけ憤りを覚えたが、それ以上に、以前感じた心臓が跳ねる思いを今回も強く感じていた。


 いつでも砲撃できる状態になった。まずは軽く一回、35.6cm連装砲を撃った。


 当たり前だが兵装の砲弾の大きさは単なる名目上のサイズである。人間が装備できる艤装のサイズに合わせるために実際の大きさではない。20xx年にもなると安全に物理的に圧縮する技術が発達しており、およそ10分の1でも等倍のサイズの威力を発揮できるように、艦娘の艤装向けの砲弾は技術の粋を集めて開発されている。
(実際の砲弾でなく、レーザー銃な仕組みに代替されている兵装もある)


 当たり前に普通に砲弾が飛んでいって、見えなくなったあたりで海面に着弾、轟音を立てて爆発したのを確認した。安全のため、提督は金剛から10数メートル離れている。


「一応これも記録されているから、あとで消費量や飛距離を確認しよう。」と提督。


 ふぅ、と金剛は一息ついた。
「じゃあ次、何かを強く思ってみよう。なんでもいい。身近な例だと・・・そうだ。この前の出撃のとき、あなたがキレた、比叡への悪口あたりがいいかな。あの時の怒りと悔しさを思い出すんだ。」


 そうはいうが、今はすでにそんな気分ではない金剛。身近な例。そこに着目した。


 最後の1ヶ月(まだ経っていないが)、急激に自分が変われたのはそばにいる提督のおかげ。彼は自身で言っていたように自分一人ではうまく鎮守府を回せないから、艦娘と役割分担するほど運用能力は普通で、彼自身も確かに普通の人だった。
 しかし艦娘を、艦娘としてだけでなく本来携わっている中の人間として捉え、扱おうとしている。彼が見ているのはあくまで人としての艦娘なのだ。
 そんな彼の働きかけがなければ今自分がこうしていることはできなかった。もしかしたら、出撃任務のとき、比叡が悪口を言われたのも気にせず、そのまま帰還していたかもしれない。可もなく不可もなくすごして終わって、あの鎮守府を去る未来があるのかもしれない。
 彼がほんの少しでも自分を気にかけてくれたから、今の自分があり、自分が変わったからこそ、良きにせよ悪きにせよあの場にいた比叡達の自分に対する評価が変化し、今後の接し方が変わる未来が待ち受けているのかもしれない。それは今までどおり怖いことだったが、彼が一緒にいてくれたら少しは大丈夫かもしれない。


 せっかく提督(や五月雨ら数人)となんとか話せるようになったのだ。話すのを怖がっていたらダメだ。このままここを去りたくない。彼のいるこの鎮守府を去りたくない。
 なにが凡人だ。冴えない男だ。そんなことはささないなこと。自分にとっては恩人であり欠かせない男性だ。


 そう考え始めたら、激しい思いが金剛の心を揺さぶっていた。
 それに合わせて、艤装との同調がわずかに高まる。より一体化に近づいたのを金剛は感じた。ついに艤装が金剛の心・精神状態を検知し、フル稼働しはじめたのだ。


金剛はやっと気づいた。この高まる思いは、提督に対する恋なのだと。


 艤装の稼働状態が早まるのと合わせて、自身の心臓の鼓動が早まるのを感じた。この人の側にいたい。提督ではなく、会社員西脇の側に、ヴィクトリアとして側にいたい。


 が瞬間、あの少女が頭によぎった。まっすぐで純真なあの子。一度は身を引こうと思った。高まる思いは止まらないはずだったが、一瞬の理性がその高まりを少し遮る。
 自分の勝手な思いだけじゃいけない。あの二人が手をつなぐ未来が垣間見える。彼、提督自身の思いも大事にすべきだと。あの人の一番じゃなくてもいい。いつか彼に公私ともに必要とされる未来の可能性が少しでもあるならそれでいい。その選択は自分がするのではなく、提督がするのだから。
 どんな結末にせよ、提督に将来選んでもらえるふさわしい艦娘、そして女性になろう。


 目を閉じている金剛はそのように思いを巡らせる。そして提督を想う気持ちと艤装の同調がさらに高まってきた。タイミングを把握した。


 大きく息を吸い、大声で金剛は叫んだ。
「提督ぅ!!!
私はぁ!!!!
あなたのことおぉ!!!!!」






横「I love you!!!」






 先程よりも激しい轟音とともに、35.6cm連装砲2基と、15.2cm単装砲1基から、それぞれの兵装のリミットを越えた連続した砲弾が放出された。着弾したあとの爆発は先ほどよりも2〜3倍はありそうな光景だった。
 耳をつんざくような砲撃音に思わず提督も耳を塞いだがそれでも聞こえてくる激しい音だった。そのため、ネイティブな英語の発音で言った金剛の最後の言葉は完全にかき消され、金剛本人すらもちゃんと発することができたかわからないくらい聞こえなかった。


 そして心に湧き上がった燃えるような思いを表したくてひとつの造語を、轟音が収まり始めた最中に発した。


横「バーニング・・・ラァーーーーーヴ!!!!」
 少しだけ、頬に涙が滴り落ちていたのに気づいてすぐに拭い取った。
 気合を入れるかのように大声で叫んだため、今度は提督にもはっきり聞こえた。