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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL 23

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第81章 聖騎士の悪夢


 天界の町が、業火に包まれていた。
 魔物が天者、神子を襲い、神までもがその魔手にかかっていた。そして魔物は、辺りに炎を放ち、天界を一転、地獄へと変えていた。
 生き残った者は恐怖に泣き叫び、業火の中を逃げ惑うが、その叫びは魔手によって文字通り引き裂かれる。
 地獄と化した町中で、魔物を相手に一人、剣を振るう騎士がいた。
 鮮やかな銀髪をなびかせ、左手に剣を持って戦う騎士を、その類稀なる剣腕と利き手をして、多くの者が彼を左剣聖と呼んでいた。
 左剣聖の異名を持つ騎士は、次々と襲いかかる魔物を斬り結び、一心不乱に前へと駆けていく。
 向かう先は、町を外れた林道の先にある、天界でも有数の湖である。
 木々が燃え盛り、火の粉散る灼熱の林道を、騎士は服や髪が焦げるのも気にせず、行く手を遮る敵をなぎ倒しながら走った。
 そして湖畔へたどり着いた。
 赤く燃える木々を照らし、自らの姿も灼熱の赤に変えた湖の湖畔に、騎士の探すものがあった。
 今や灼熱地獄に成り果てた湖畔に、ただ一軒だけ佇む家。
 その入り口にうずくまる、血色に染まったワンピースを身に着け、深緑の髪の少女が一人。
 騎士は驚愕のあまり、震えて剣を落とす。
「あ……、ああ……!」
 騎士は少女のもとへ駆け寄り、地面に膝をつく。
 まだ少女に、僅かながら息があった。
 少女は、血に染まった顔を僅かに上げ、かすかに微笑み、騎士の名を呼ぶ。
「……ヒー……、す……」
 そして少女は、あっけなく力尽きる。
「マリ……、そ、そんな、……うわああああ!」
 騎士の慟哭の叫びが、炎の中で木霊する。
    ※※※
 ヒースはその身を、バネのように跳ね起こした。
 呼吸は乱れ、寝間着のガウンは汗に濡れていた。
 胸は高鳴り、頬を流れる汗はまだ止まらない。しかし、だんだんと意識がはっきりしていく毎に、ここは自室であると判断する。
 窓の外からは朝日が射し込み、鳥のさえずりが耳に入ってくる。
「……夢、か……」
 ヒースは悪夢を見ていたようだった。
 夢であった事を安堵するも、まだ完全には心が落ち着かない。
 ヒースは額に手を当て、流れ落ちる汗を拭った。
 恐ろしい夢ほど、その実感は強い。今この瞬間もまた夢なのではないか、と思えてならない。
「水を浴びてくるか……」
 ヒースは自分でも驚くほどの汗の臭いを感じていた。加えて体もびしょ濡れで、とても気持ちが悪い。
 ヒースはベッドから這い出て、ガウンの胸元をはだけながら部屋を出ていった。
    ※※※
 神々の宮殿の中庭では、今日も騎士団の訓練が行われていた。
『ファイアボール!』
『スパイアクレイ!』
 中庭には、剣の音ではなく、エナジーを詠唱する声が響いていた。
 今日の鍛練は、エナジーを鍛えるものであった。
 天界に住む者は、誰であろうとエナジーを使用することができた。
 エレメンタルの違い、エナジーの量には、個人差があるものの、この騎士団員全員のエナジーは、天者を上回る水準に達している。
 あちこちでエナジーの練習が行われ、火や風が巻き起こる中、ヒースは少しぼんやりしていた。
 原因は、今朝見たあの夢である。
 悪夢のおかげで、寝覚めが悪かった事もあるが、それ以上に夢の内容が気にかかっていた。
 たかが夢であるが、どうしてもそれだけでは片付けられない。近い将来、天界は炎に包まれ、一変して地獄へと変わるのではないか。
 根拠など、どこにも有りはしなかったが、ヒースは妙なまでの胸騒ぎを感じずにはいられなかった。
『ファイアボール!』
 騎士は手から炎の球を打ち出す。狙いは、地面に突き立てられた人形である。
「バカ! どこに撃っているんだ!?」
 高熱の球は人形の方へは行かず、騎士がどれほどの精度で的に当てられるのか、確かめるため人形の側に立っていたヒースに向かっていった。
「うわわっ!? 危ない、副長!」
 普段のヒースならば、雑作もなくかわせるはずであった。
「なにっ……!?」
 ヒースがはっ、と気が付いたときは、すでに火の玉はヒースの眼前まで迫っていた。
 ヒースは動くことができず、首を少し曲げて回避を行うものの、反応があまりにも遅すぎたゆえに避けきれない。
 ヒースは瞬間的に顔面にエナジーを集中し、顔を炎から守る。
「くっ!」
 火の熱は防げたが、勢いまでは殺せず、ヒースは顔への不意の衝撃にめまいを感じ、地面に腰を落としてしまった。
「副長!」
 ヒースに火の玉を飛ばしてしまった騎士が、大慌てでヒースの所へ駆けてきた。
「ヒース!」
 事の次第を見ていたユピターも駆け寄る。
「ヒース、大丈夫か!?」
「申し訳ございません、副長!」
 ユピターは倒れたヒースに手を貸し、騎士はとてつもない過ちを犯してしまったように、全身全霊をもって謝罪する。
 ヒースは、火の玉を受けた部分を擦っていた。とっさにエナジーを集中させて火を防いだものの、火の玉の威力は、強肩の者が放った石と同じくらいであり、受けたダメージは思いの外大きかった。
 ヒースが痛みに悶絶している間、騎士達は訓練の手を止め、一斉にヒースの方を見ていた。
 ヒースに向く視線は、驚きのものであったが、それは事故に対するものではなかった。
「嘘だろ、ヒース副長が流れ弾に当たるなんて……」
「これは、近々悪いことが起こるんじゃ……?」
「終わりだ、この天界は終末を迎えるんだ……!」
 ざわめきはヒースの耳にも届いていた。
 天界が終末を迎えると言うのは、言い過ぎであるが、それほどまでに、騎士達にとってヒースの存在は完璧なものであったのだ。
「皆の者、私語を慎め、今は訓練中であるぞ!」
 ヒースを心配するわけでなく、根拠もない妄言に沸く騎士達に、ユピターは一喝する。
「早く練習にもどるのだ、さもなくば団規違反で全員今日は深夜まで休まず訓練させるぞ!」
 ユピターが叱りつける事により、騎士達は大慌てで、散り散りに訓練に戻っていく。
 騎士達が練習に戻った頃、ヒースは回復していた。もとより目立った外傷はなく、衝撃により頭がくらくらしていただけであったので、ヒースはもう立ち上がることもできていた。
「ラゼル、お前のエナジーはかなり効いたぞ。その調子のまま練習に戻るといい」
 ラゼルと呼ばれた騎士は猛省していた。
「申し訳ございません、自分は、許されぬことを……!」
「気にするなと言っている。それに、俺に尻餅をつかせたのだ。胸を張って皆に自慢するといい」
 ヒースは冗談半分に笑った。
「ほら、団長は訓練に戻れと言っている。命令を破ったら連帯責任だ。俺の事は気にせずに行け」
「ヒース副長……」
 ラゼルは最後、ヒースに一礼し、エナジーの訓練に戻っていった。
「ヒース……」
 団長である手前、騎士達の前で叱咤したものの、ユピターも根拠のない不安にかられていた。
 騎士団最強を謳われるヒースが、流れ弾に当たって崩れてしまったのだ。これは普段から彼を近くで見る者にとっては、天地がひっくり返る事と同じぐらいにあり得ない事であった。
「どうした、ユピター? お前までそんな顔をして」