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140文字短文詰め合わせ(NL色々/APH)

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#06〜#10 湾菊/辺露/湾菊/烏露←立/仏セー




廻る季節の夏の音(日+台)
床板に置かれた蚊遣豚が細く白い煙を吐き出し、夏の暑さを孕んだ空気が吹き抜ける度に、ちりんと風鈴が軽やかな音色を立てる。
硝子の器に盛られた桃はよく熟れて、甘く瑞々しい。
にほんさん、おいしいですね。桃を頬張る少女が笑えば、青年は夜空の色の瞳を細めて少女の桃によく似た頬をつんと突いた。
Jun 28th(140文字)



硝子の破片でさようなら(辺→露)
冬の合間中、白銀に覆われる大地が緑に萌えるこの季節が兄さんは好きで、大輪の向日葵を見詰めては嬉しそうに顔を綻ばせていたのも憶えている。
向日葵の一輪を私の髪に飾りながら、兄さんは笑った。
さようなら。兄さんの手を離したのは初夏の頃。
離れたくないと叫んだ声は誰にも届かず空に消えた。
Jul 3rd ベラ独立(139文字)



海に堕ちてけひとつ星(日←台)
きらきら瞬く星々の銀河を模した笹飾り、軒先で笹の葉が揺れる。
空は生憎の曇り空で、天の川は拝めそうにない。金平糖を一粒、口の中に放り込んで噛み砕けば、淡い色のお星様は舌の上で甘く溶けてすぐ消えた。生温い夏の風に揺れる短冊は一枚。流れる毛筆で記された言語は、もうこの国では使われない。
Jul 7th(140文字)



私を蝕む愛の容(烏露+立)
だって愛しているんだものと告げる口調は甘ったるい。
それは砂糖を飽和ギリギリまで溶かし込んだ水溶液に、さらに蜂蜜とかメープルシロップとかをぶち込んだみたいな、甘ったるすぎて吐き気すら催すほどの甘さのもので。あぁとひとり嘆息する。女の顔に浮かぶ優しい慈愛に満ちた笑みを醜悪だと思った。
Jul 9th(140文字)



響く声と離別の儀式の其のあとに(仏セー/仏誕)
繰り広げられる壮大なパレード、国旗が初夏の空にはためく。
それらを見詰める紫色の瞳が、どことなくくすんでいるように思えて、セーシェルは首を傾げた。誕生日、嬉しくないんですか?と尋ねれば彼は苦笑してそんなことないよと笑う。
ただ、と続いた言葉は"ラ・マルセイエーズ"に飲み込まれ消え失せた。
Jul 14th(142文字)