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なかのあずま
なかのあずま
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機動戦士Oガンダム

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第9話 gear is Neutral



 小惑星アリエス第0ドックベイ――――――
 基地内でも限られた人間しか知らない裏門ともいえる港にまた一つ、船が到着していた。その中にはサイド0、カピラバストゥコロニーからの住人達が連れてこられていた。
 「ワインスタイン卿、到着いたしました」
 「ここでは私のことはワインスタインではなくヴィルヘルムと呼んでください。では早速身体と脳波の検査を、あぁそれと・・・」
青い髪をした端正な顔立ちの男は、表情を1ミリも動かさずにゆらりと眼鏡をかけ直した。
 「第一補給艦乗組員全員の身体検査のデータをお願いします。」
 「総帥もですか?」
 「あのコロニーから来られたのですから当然です。」
 そう言いながらヴィルヘルムの見ているモニターには、先の抗争の戦闘宙域の映像が流れていた。
 「これがバイオセンサーの光・・・。」
宇宙の闇にそぐわない怪光をズームすると、ガンダムタイプのモビルスーツの姿があった。
 「この機体とパイロットの情報が欲しいのですが頼めますか?」
 「伝手はありますので当たってみます」
 「よろしくお願いします。それと、ラプラスの情報は?」
 「餌は蒔いておきましたが、まだ何も」
 「わかりました。なるべく早く鍵を完成させましょう。」
 彼らが後にした研究室では、“リユース・サイコ・デバイス”の資料データが鈍い光を放っていた。

                    ≠

 エスタンジアの所有するエンドラ級巡洋艦バレンドラ、そのメインブリッジでは囚われの身となっているマイクロ・アーガマ隊を前に、アドルフが指令を下していた。
 「ネオ・ジオンのハマーン・カーンがミネバ・ザビを連れ地球へ降下する。そこで、ダカールへ降下し現地徴用兵として紛れ込む。幸いにもネオ・ジオン軍の地盤は緩いからね」
 「なんでそんなことすんのさ」オリガだ。
 「僕らは反地球連邦であり反ネオ・ジオン、受け入れられるためには双方の権威をここで落としておきたいんだ」
 ダカールには地球連邦の首都が置かれていたが、8月29日をもってネオ・ジオンの占領下にあった。<改ページ>
 「それにうまくいけば戦力も手に入る。僕たちならではの狩場でもあるんだ」アドルフはタロの顔写真の付いた偽造軍人証を差し出した。
 「私はそんな作戦やらないからね・・・!あんな…ひどいこと・・・」クシナは焼けていくコロニーの街を思い出していた。
 「それなら心配ないよ」
アドルフはスクリーンに映る碧い水の星へ
 「タロ・アサティ以外はここに人質として残ってもらうからね」
愛をこめた。

                    ≠

 手術室、サイコガンダムの建造ドックを挟んだ機械まみれの研究室の向かい側にそれはあり、その手術室の隣のコンピューター室にヴィルヘルムはいた。
 「基準値を超えていたのは10名弱・・・では彼らを金属繊維にサイコ・ファイバーを使用した脳と脊髄のR・P・D実験、他を通常のR・P・Dの実験にまわします。」

 それから間もなく、空に血の臭いが広がった。

                    ≠

 ゼーレーヴェ艦、火星圏小惑星基地アリエスまで残り二日―――――
東條は自室に籠りアリエス司令部からの指令書に返信をしていた。
『被検体の回収完了及びニュータイプを一名確保。ラプラスの手掛りは依然ナシ』
 「煙草くれる?切らしちゃって・・・」
 キューベルの声でタイプの手を止め、煙草を一本指に挟み、彼女が咥えると火をつけた。「で、どう?」
 「アウター・ガンダムのデータ、それとラプラスの尻尾を掴め、と」
 「・・・・・なにそれ?ラプラス?」耳馴染みのない語感に顔をしかめる。
 「俺も見当がつかん…“ラプラスの箱が空けば連邦政府が崩壊する”らしい」尻尾と言うのは手掛かりのことを言っているようだ。<改ページ>
 「・・・はぁ?都市伝説か何か?」キューベルはあまりにも眉唾な話にため息をついた。「それ、わたし達じゃなくてもいいんじゃないの?」
 「文面を見る限り他にも送っているな。ラプラスの件だけ違和感がある」
 「私たちの他に別動隊がいるってことね・・・」
部屋には沈黙が流れ、やがて煙草の火も消えた。
 「もう一本吸うか?」
 「いいわ、悪いもの」
キューベルが部屋を出ていき、残香が漂った。

                    ≠

 旧世紀、科学者であり宇宙旅行の父ツィオルコフスキーの残した言葉に、『地球は人類のゆりかごである』とある。
 またその後には『ゆりかごで一生を過ごす者はいない』と続くが、宇宙世紀という新世紀を迎えても、人類は未だゆりかごから少し出る程度であった。
 しかし同時に、そのゆりかごから少し出た所で一生を過ごす者も現れている。
 スペース・ノイド―――――宇宙へ進出した人類がスペースコロニーという人工の島を作り、そこで子を産み、育て、死んでいく、新たな生活形態を獲得した人間が生まれていた。
 半世紀以上が経過すると、島からゆりかごへ逆行するものもいる。そして彼らは殆どと言っていいほど試練にさらされるのだ。
 季節によって差はあるものの、人の造りしモノらしくスペースコロニーは快適な気温に設定されており、創造主に過酷な試練を与えることはない。
 しかし、ゆりかごはそうはいかない。
 人類が文明を獲得してから造りかえられてはいるが、人の手の届いていない場所では彼らに容赦なく試練を与え、時には命を土に還すことすらあるのだ。
 地球上の砂漠と呼ばれる地帯では、昼夜の気温差が激しく見渡す限り砂しかない。そこに今、二人分の足跡が次々と刻まれていた。

 「悪ぃなぁこんな味気ないことしちまって」ニロンの口からはつらつらと心のない言葉が湯水のように流れ出ていた。「クシナとがよかったよなあ」<改ページ>
 「え・・・?あぁ、まぁ・・・はい」
 天を仰げば街の光ではない、幾百、幾万、幾億の星が瞬いている。街の光ではない本物の瞬きを目に、クシナとコロニーでの会話を思い出していた。
 タロの意識は今にも一千万年の銀河の中へ吸い込まれていきそうだった。
 二人はエスタンジア軍としてダカール降下作戦を始めていた。マイクロ・アーガマ隊の参加者はタロのみの予定だったが、口の上手いニロンがアドルフを言いくるめて作戦に同行していたのだ。
 目的地の迎賓館のある市街地までは20kmほどあるが、怪しまれない程度の距離にコムサイで地球へ降下していた。
 「どうした?」
 「いや…体が重くて」
 「そりゃ地球だからな」
本物の重力が身体にのしかかり、二人の口からはただ息が漏れていた。
 「すげぇなぁ・・・俺達は今まであの中にいたんだぜ?」ニロンは恋人にもはかないような台詞をはく。「なんつーかさぁ、今まで地球ってのは閉鎖されたもんだと思ってたんだよ。わかるか?」
 もはや独白と化した言葉は、強いて言えばこのゆりかごに向けていた。
 「でもいざ降りてみるとすごい解放された気分だ」
 「・・・・・・」
 「宇宙って案外閉鎖されてんだよなぁ、コロニーの中にいるか、コックピットの中にいるか、あるいは宇宙服に閉じ込められているか」