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なかのあずま
なかのあずま
novelistID. 54195
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機動戦士Oガンダム

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 タロはこの時間がとても奇妙に感じていた。これも、ゆりかごで生身を晒して解放されたからだろうか。
 「裸で宇宙に出たらどうなるか知ってるか?」
 「・・・・・」
 「−274℃の真空と放射線にさらされて沸騰すんだとさ。怖いよなぁ」
 「・・・・・はぁ」
 「ここも日が当たるとバカみたいに熱くなるんだぜ?50℃だったかなぁ
コロニーの方がはるかにましだ」
 タロは会話として成り立たせる努力もやめ、最早返事をしなかった。勝手に喋ってくれれば余計な労力を使うことなく退屈しのぎになってくれる。
 またしばらく、靴の音だけが鳴った。
<改ページ>
 「なぁ、猿食ったことあるか?」

今までの話からの脈絡がなく、タロは戸惑った。
 「さ、さぁ…缶詰でなら・・・たぶん」
 「そうか」
 それからまたしばらくニロンは口を閉ざした。日ごろからマイペースというのか、独特の間があったが、地球と言う特殊な環境下が彼の脳のセーフティロックを幾分か解除していたようだ。
 砂丘を一つ越えたころ、再びニロンの口から言葉が流れた。
 「昔、俺はジオンにいてなぁ・・・降下作戦でジャブローってとこに降りることになったんだ」
 「・・・・・・」
 「さぁ降りるか!って時俺は叫んだね、降りられるのかよって
 まぁ、無事にはおりられなかったんだけどな」
 瞬く星空の下で、ニロンの話は次第に生々しさを帯びていった。
 「ザクに弾が当たって、爆発する前に何とか脱出して、生きてるやつを探した。
けどな、残骸しか見つかんないんだよ、何度探してもな。俺は地獄にでも来たのかと思った」
 タロはただ聞いていた。なにも口にせず、ただ聞いていた。
 「そうして歩いているうちにいつの間にか気を失ってな、気が付いたら同じ隊の奴が肉をくれたんだ。腹減ってる事すら忘れてたから必死に食いついた」
 「それが…猿の肉・・・」
 「・・・・・・・・・・・・・まぁな、美味かったよ」
 「その肉って…もしかして」タロには言葉の奥にある意味がわかってしまった。「なんで軍人やってんですか…なんで連邦で・・・」

 「運よくモビルスーツから脱出したやつの肉片がぼとぼと落ちてくるんだよ。ジャブローはそんなところだった。
 中にはそういうのがトラウマになって眠れなくなったり発狂したりする奴もいるんだよなぁ」

 「・・・・・・なんでそんなことを話せるんですか」
 「なんでだろうなぁ・・・あんなもんずっと見てたらおかしくなるのが普通だからな。たぶん壊れちまってるんだ、俺は」<改ページ>
タロは力の行き場を失い、いうことを聞かない体はただ硬直していた。
 「なぁ、俺たちが銃を突きつけられている間、お前はあいつらにこう言ってたよな?
今よりもいい時代にする、って」

 「いい時代ってなんだ?」

 ニロンのヤマアラシの様に急に尖った意識がタロの心臓に突き付けられた。
 いつも一歩引いて何処か虚ろだった彼の眼は今、はっきりとタロに向けられ、普段の昼行燈は張り付いていなかった。
 「戦争を・・・無くして」
 「戦争が無けりゃ平和なのか?」
彼のその問いかけは、簡単なようで、タロの中にあるものではなかった。

                    ≠

 R・P・Dの試験を一先ず終え、ヴィルヘルムは実験データを眺めていた。
「やはりこの二つの成功率は低いですね。」
 「えぇ、脊髄はゼロではないですが脳は不可能です。特に脳への信号は一番ダイレクトなため負担が大きすぎます」
 「では今まで通り脳はメモリー移植をメインにしましょう。」
 「はい。それと、例のパイロットのデータを入手いたしました」
 デバイスにチップが差し込まれ、顔写真と共にパイロットのプロフィールがモニターに現れた。
 「・・・・・カミーユ・ビダン、ですか。彼は今どちらに?」
 「消息不明です」
 「そうですか。それは残念。」
 「おそらく彼のニュータイプとしての能力は非常に高く、バイオセンサーの光もそれゆえのものと思われます。もし彼の所在がつかめれば私たちの実験に協力してもらうのですが・・・」
 「我々は無差別に生体実験をしているのではありません、そこをお忘れなく。あぁそれと・・・」

 第0ドックベイのエアロックが開き、人だった物が放出された。
<改ページ>
 広大な砂の地平線が光を帯び、じりじりと大地が熱せられてゆくころ、タロとニロンは迎賓館へたどり着き別行動を取っていた。
 他にもエスタンジアからの潜入者がいるのだが艦の違う別動隊であり、顔も声も認識していない。
 「おい、ここで何してる!」タロがうろうろしていると、まだ若そうな男の声に呼び止められた。
 「あ、あぁ、えっと・・・」
 「俺はラド・カディハだ!わからないことがあれば何でも聞いてくれ!」
偽造した身分証をかざすと、若い男は手を差し伸べてきた。
 「あ、あの…俺はどうすれば?」
 「そろそろミネバ様のパレードが始まる。通りの警備に就け!」
 ラド・カディハはまだ若く、護衛任務に張り切っていた。そのおかげで、タロの無礼な態度も咎めることはなかった。

 陽が真上に登る頃には迎賓館へ続く大通りを人が埋め、間もなくして華やかなパレードが行われていた。
 タロがジオンの軍服を身に纏い、人込みを掻き分け警備位置に着くと、紙吹雪の舞う中をバイクを先導に、3台の黒いオープンリムジンが民衆に応えるようにゆっくりと走り抜けていった。
 タロはその先頭車両から手を振る年端も行かぬ少女、ネオ・ジオン総帥ミネバ・ラオ・ザビには目もくれず、2両目の中央座席に座るミネバの摂政でありネオ・ジオンの実質指導者に集中していた。
 『あれがハマーンって人か・・・顔は似てる、っていうか同じだけど・・・』
 カーン・Jr.の手を取った瞬間に垣間見たモノに、彼女の姿はない。
 クリアな景色、表面的な薄い景色、濁った景色、混濁した意識、その奥には或る男の顔と声、そこに触れようとした途端、拒絶されたのだ。
 『この人、違う・・・!』
それがタロの感じた事だった。
 そして今、彼女を観て一つ分かったことがあった。
 『同じだ…黒い部分が、けど・・・この人はそれがもっと深いところにある・・・
あいつは・・・もっと表面にあった、ような…ん・・・・?』
 背後からやや強めの視線を感じたが、すぐにいずこへ消えた。
「気のせいか・・・」
 その視線の正体はこの後騒ぎを起こすアーガマの少年達だが、タロと直に接触することはなかった。
<改ページ>
 真上にあった陽は再び地平線に沈み、ダカールの地は再び夜に包まれていった。
 昼間の業務をそつなくこなしたタロ・アサティは、迎賓館の警護用に配置されたモビルスーツの一つ、ドワッジに乗り込みながらエスタンジアからの合図を待っていた。
 連邦軍へ潜入した別動隊が迎賓館へ攻撃を仕掛け、こちらが迎え撃つ体でわざと撃破され、ネオ・ジオンの権威を落とすというなんとも回りくどく命知らずな作戦である。
 しかし、現状ではただの賊でしかないエスタンジアがとれる数少ない手段でもあった。