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同調率99%の少女(7) - 鎮守府Aの物語

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--- 8 幕間:帰り道



 那美恵たちの高校から駅までの帰り道。女子3人はあれやこれやとワイワイ雑談し、男である提督は蚊帳の外で後ろを歩くという状態が続いた。さすがにひとりぼっちでは可哀想と那美恵は判断して、途中どこかファミレスかカフェによってお茶していこうと提案した。3人共それに賛同。時間はすでに6時を過ぎていたが、提督という大人もいるし問題ないだろうとふむ。

 入ったのは昔から変わらぬ全世界チェーン店である有名なコーヒーショップだ。さすがに世界規模のチェーン店となると、鎮守府はおろか大本営としても艦娘の優待目的の提携は難しいのか、艦娘の入渠優待は得られなかった(アメリカの艦娘には優待が効く)。そこで提督は3人におごることにした。

「みんな今日はご苦労様。ここは俺がおごるよ。だからなんでも好きなの頼んでいいぞ。」
「いぇ〜い!提督太っ腹〜!」
「本当にいいんですか、西脇提督? 私まで?」
「あぁどうぞどうぞ。」
 那美恵たちから2歩ほど離れた位置で提督を黙って見つめる五月雨。遠慮している様子が伺えた。五月雨の方を向いた提督は優しく声をかける。
「……五月雨、君もだよ。遠慮しないでいいから。」
 提督から言葉をもらうと、五月雨はニンマリと笑顔になって小走りで駆けて那美恵たちの後ろに並んだ。


 全員飲み物といくつかのパン・スナックを注文し、それらを持って適当な4人席に座った。提督をと思ってお茶をしにきたはずが、そこに展開されたのはやはり少女3人の長々とした雑談。中高生と提督では歳が離れすぎているため、提督が普段の会話に混ざるのはどうしても難しい。仮に提督が同世代の高校生であったなら、こんな魅力的な少女3人と一緒にいることなんてまずありえないしかなわない、彼女たちを束ねる立場だからこそ今(話題に入れなくても)こうして一緒に混ざっていられる。
 現状で十分満足しちゃう提督であった。

 女3人で雑談に興じる那美恵たちだったが、もちろん提督のことは忘れていなかった。というより、ついさっき思い出した。あぁ、そこにおっさんいたんだっけと。提督の心、艦娘知らずといったところで、当然提督が抱いている居づらさなぞ少女たちが理解できるはずもない。それは一番長く一緒にいる五月雨も、艦娘でない普通の女子高生の三千花とて同じであった。
 そしてようやく提督に振られた話題は、提督の身の上話である。どこに住んでるか、プライベートでは何しているか、そして恋愛話などである。特段かっこいいわけではないが普通に好印象の、歳相応か少し若く見える提督をネタにし、色々興味津々に話題を振り少女たちは会話(という名の一方的なおしゃべり)に興じ続ける。

 知らない人がこの4人を見たら、なんだあの男、(はたから見れば)JK三人に囲まれてくそうらやましいぞこんちくしょうめ!という印象を持つかもしれない状況だった。が、当の本人からすれば、艦娘制度にかかわっていなければこうして違う年代の人たちと接する機会なぞ、自分の人生にはなかったから嬉しい半面と思う反面、正直気恥ずかしくてつらいという心境であった。周りの痛い視線をなんとなく察した提督は、心の別のところではそんなに痛い視線送ってくるならてめぇらいっぺん代わって居心地の悪さを味わってみろよ、と密かに反論を抱えていた。

 そんな心のなかのツッコミでさえ、傍からすると贅沢な悩みなのである。とはいえこうして女の子たちと一緒にいるのは提督としては決して悪い気はしない。
 今後艦娘が増えて、いろんな年代の人が門をくぐるかもしれない鎮守府。提督は自分の管理する場所と艦娘に対して思った。
 艦娘になる人たちの素の姿とこうして、鎮守府外で膝を交わしてお茶をし(会話になるかどうかは別として)雑談に興じるのは、艦娘とのコミュニケーション、その人の人となりを知って仲間意識を高め合うにいいかもしれない。今後機会があれば、五月雨はもちろんのこと、時雨や夕立、村雨、五十鈴、もう一人駆逐艦娘、既婚者だが妙高、そして分野は違うが同業に近い立場の明石と、サシで(酒・お茶を)飲む時間を設けてみよう。
 そう考えを抱くのであった。


--

 1時間ほどコーヒーショップで楽しんだ4人。時間はすでに午後7時を回っていた。那美恵たちは高校生のため多少問題無いが、中学生の五月雨がこの時間まで外にいるのは一般的な風紀上あまりよろしくない。提督は念のため3人に自宅に連絡を入れさせる。五月雨に対しては電話を替わり、彼女の母親に、自分が責任持って見送る旨を伝える。ちなみに提督は五月雨こと早川皐の母親とは面識がある。

 その様子を見ていた那美恵はやはり茶化し気味の言葉を投げかける。
「提督はやさしーねぇ。五月雨ちゃんを家まで送ってあげるんだぁ〜。」
「そりゃあ大事な秘書艦だし、この歳だしな。俺も一応保護者なんだからきちんとせんとまずいだろ。」
「はいはい。五月雨ちゃんがうらやまし〜。あたしやみっちゃんも保護してくれてもいいんだよぉ〜? 五月雨ちゃんとは3つしか違わないんだから」
 両肩をすくめてやれやれという感じでオーバーアクションで茶化しながらねだる那美恵。その仕草を苦笑を交えて眺める五月雨。三千花はそんな親友の態度に苦笑していた。

「わかったよ。降りる駅まではきちんと見ていてやるから。ほらさっさと駅まで行くぞ?」
「はーい。」
「「はい。」」

 そして那美恵と三千花は2つ先の駅で降り、そのまま乗り続ける提督と五月雨を駅のホームから手を振って見送った。

 別れ際。
「送り狼になんなよ〜提督ぅ〜」
「んなことするか!お前……あとでおぼえておけよ。」
 最後まで茶化す那美恵。一方の純朴な五月雨は送り狼の意味を理解できておらず、?な顔で提督と那美恵の顔を見渡して聞き返そうとする。慌てた提督は軽い五月雨にやんわりとした口調でもってはぐらかす。すでにホームに降りていた那美恵に対してはそれまでの弱い勢いを一気に加速して拳を振り上げて軽く叱る仕草をした。当の那美恵本人はそのアクションにアハハと笑ってサラリと流し、やがて閉じた電車の扉ごしに提督に手を振り、三千花とともに駅舎へと歩いて行った。