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敵中横断二九六千光年3 スタンレーの魔女

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健在



『副技師長! 斉藤さん!』

自分を呼ぶ声がする。だが相手がどこにいるのかわからない。声は直接聞こえるのでなく、耳に当てた通信機が骨伝導(こつでんどう)で頭に響かすものだからだ。斎藤は「ううう」と呻きで応えた。その声が船外服のヘルメットの中にこもる。

周囲は暗いが、それでもいくつか光るものが動いて見える。自分と同じ宇宙服を着た者が、船外作業用のランプを点けて前を照らしているのだろう。そう気づいて斎藤も、額に手をやりライトのスイッチを入れようとした。しかし手が動かない。

「なんだ? どうなってる?」

腕は磁石で吸い付けられでもしたように、床にくっついて離れなかった。腕だけでなく、体を動かすことができない。まるで寝床で金縛りに遭って身動きできないように。

どうなってんだ。おれは夢の中にいるか、死んで幽霊になったのかな、と思った。確か、目の前で床が弾けて、おれは吹き飛ばされたはず。なのにどうして――。

考えてから、自分が床に寝ているのでなく、壁に貼り付いてるのだと気づいた。

「おい、こいつは――」

『人口重力を殺られたんです!』また声がする。『慣性制御が利かなくなって、船の加速によるGをまともに受けてるんですよ!』

「そんな――」

言いながら、腕に力を込めてみた。重いが、動く。しかし20か30キロのダンベルを持ち上げるような気分だった。今この部屋が加速しながら宇宙を進んでいるために、体の重さが何倍にもなっているのだ。通常は床の人口重力装置が緩和してくれるはずのものが今はない――。

それでも頭に手をやって、ヘルメットの額に付いたライトのスイッチを入れた。前が照らされ、周りのようすがいくらかわかるようになる。

元は技術科のラボであった室内は、今は火事場を見るようだった。空気はすでに吸い出され、軽いものや液体は外の宇宙空間に出てしまった後なのだろう。元は床であった場所に穴が開き、暗闇にキラキラと星が光って見える。

『何人か外に吸い出されたようです』

また声がして、体を叩く者がいる。斎藤がいま着ているのは耐スペース・デブリ仕様の船外作業服だった。その鎧のような服を、誰かが殴るか蹴りつけるかしたのだろう。見ると自分と同じように壁に貼り付いていた部下がひとりノタノタと這うようにしてこちらにやってきたものとわかった。相手も同じ船外服。

『大丈夫ですか、副技師長。爆発をモロに受けたようですが』

「あ、ああ」

と言った。そうだ。おれは爆発をまともに喰らったはずなのに……体を確かめてみると、〈服〉はボロボロになっていた。それでも、

「どうやら、こいつが護ってくれたようだな」

『ええ。普通の宇宙服なら死んでたでしょうね。ひょっとしたら、この部屋の全員――それが敵の狙いかもしれない』

「なんのことだ?」

『おかしいと思いませんか? 対艦ビームを喰らったのなら、こんなブラ下がり艦橋なんて、根っこからもぎ取られていそうなもんでしょう。なのにGがあるってことは、ここがまだ〈ヤマト〉にくっついてるってこと……』

「あ」

と言った。途端に部屋にいくつか明かりが灯るのが見えた。まだ死んでなかった機器が、息を吹き返したのがわかる。

だが人口重力までは、さすがに無理なようだった。生き残ったクルー達が、互いに助け合いながら壁を這って室外に逃れ出ようとしている。

この〈サルマタケ〉はどうやら健在――しかし、

「どういうことだ? ビームが直撃したんじゃないのか?」

『いや……まだわかりませんが、ひょっとすると……』部下が言った。『敵は〈ヤマト〉を一撃に沈める気はないのかもしれない……いま受けたのは、船を内出血させる種類のビームなのかも……』

「ん? なんだ?」

『わかりませんか。敵は〈ヤマト〉を捕獲しようとしているのかもしれないってことです! 中の人間だけ殺して、船を奪い取る気なのかも……だってそうでしょう。やつらは地球を恐れている。波動エンジン以外では地球の方が技術が上とやつらが知っているんなら……』

「この〈ヤマト〉を捕まえて中を調べようとする……」斎藤は言った。「やつらがそうする気だって言うのか?」