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しょうきち
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冒険の書をあなたに

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第八章 アルカパにて〜vs盗賊、アンジェリークを奪還せよ!


 赤々と燃える夕陽がゆっくりと海の果てへと沈み始め、それまできらきらと強く光を弾き返していたサンゴの欠片たちの輝きが落ち着いてきた。
 渚に打ち寄せる白い波は若干高さを増して、潮風が砂地に降り注いだ熱を奪い始める────楽園を去る時間が来たのだ。

 ルヴァの肩にもたれてすうすうと寝息を立てているアンジェリークをそっと腕に抱き、寛いだ表情で眠る頬に唇を寄せた。
 ここでもたもたしているとアルカパの宿屋へ着く頃には日が暮れてしまう。それでもルヴァは夕陽に照らされ朱に染まった彼女の安らかな寝顔から、なかなか目を離すことができない。
「海が綺麗ですねえ……」
 吐息に紛れたその囁きは潮音に呑まれ、答えを求めるように柔らかな金の髪に触れるとちくりと胸が痛んだ。

 魔法の絨毯は広げっ放しになっていたためルヴァがアンジェリークを抱えたままで移動を試みた。
 彼女ほどスムーズにはいかなかったものの、呪文の詠唱に入るときと似た感覚になった瞬間、ふわりと絨毯が浮かび上がった。
 絨毯が動き出しても眠り続けるアンジェリークを起こさないように気をつけながら、ルヴァは海辺の修道院から北西にあるアルカパを目指した。

 海上を滑らかに進んでいた途中でアンジェリークが目を覚ました。
「んー……寝ちゃってたー……あ、ごめんなさい、やり直しっ。わ、わたしはまだ寝てますっ」
 ルヴァの腕の中だと気付くや否や、慌ててまた目を閉じて寝たふりをし始めた。あからさまに狸寝入りと分かりきっているのでルヴァがちょっかいをかける。
 アンジェリークの耳や首筋をくすぐるように指を這わせて、目をきつく閉じて耐えている姿をルヴァは楽しげに眺めている。
「おや……顔が真っ赤ですよ、アンジェ。大丈夫ですか」
 そう言いつつもルヴァの指先はサンドレスの襟ぐりの内側をゆっくりと往復して、肩紐をすとんと落としてしまう。
「ル、ルヴァっ……だ、め」
 とうとうエスカレートしてきたルヴァの手を慌てて止めるアンジェリークの耳に口を寄せた。
「まだ狸寝入りを続けるんでしたら、好き放題させて貰いますよ?」
 くすくすと笑いながらぎゅうと抱き締める。
 少しからかい過ぎてしまったとは思うものの、反省するつもりは全くない。
「そっ……そういうのは、お部屋の中じゃないとだめなのっ」
 アンジェリークの鎖骨から肩にかけて、小さく口付けるルヴァ。
「では宿に着いたら沢山してもいいですか? こういうこと……」
 昼間の着替えの一件にしろ、島での一件にしろ、煽られっ放しでそろそろ理性が擦り切れてしまいそうだった。
「た、たっ、沢山!?」
 ぶにっとルヴァの鼻をつまんで「めっ」と怒るものの、今度はその指先すら食まれ始めた。
「私たちは今日結婚式をした新婚さんですからね、男としては求めちゃうのは仕方がないと思うんですよ。違いますか」
「違わない、けど……そんなこと、『そうですね』なんて言えません!」
 更にあちこちへと伸びてくる手をぺしぺしと叩き落としながら、ふくれっつらでルヴァを睨んだ。
「いいんですよ。私があなたを好きで好きで、欲しくてどうしようもなくなっちゃってるだけなんですから」
 ね? と小首を傾げて見つめられ、アンジェリークはとうとう首まで真っ赤に染まった。
 ダイレクトな殺し文句は大概にして下さい──というアンジェリークの心の叫びは、無自覚な彼に届くことはない。

 日が暮れて辺りが薄紫へと変わり水平線の上に僅かな赤みが残った頃、遠くに海辺の修道院が見えてきた。
 ようやくルヴァのちょっかい──と呼ぶには少々度が過ぎている──が治まったので、アンジェリークは安心した様子で体を預けている。
「アンジェ、修道院が見えてきましたよ。向こうに何か明かりがありますねー」
 夕闇を切り裂くド派手な明かりを放つ島がおぼろげに見えて、地図で確認するとカジノ船と記されていた。その周囲に花火が上がり始め、轟音で空気が震えた。
 パラパラと弾ける火薬の音、潮風に紛れて流されてくる独特の匂い、そして華やかに打ち上がる大輪の花火の美しさ────
「わあ、花火きれーい!」
 アンジェリークの嬉しそうな声色にどちらからともなく視線が絡み合って、互いの顔にふうわりと笑みが浮かんだ。
「いつか一緒に花火を見たいって思ってたの。今叶っちゃったわ!」
 彼女の肩を包み込むように抱き締めて、ルヴァが頬を寄せた。
「また一緒に見ましょうね、何度でも……二人で」

作品名:冒険の書をあなたに 作家名:しょうきち