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美月~mitsuki
美月~mitsuki
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時津風(ときつかぜ)【最終章】

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最終章


 
 
 
 ふっと目が醒めた。
 うっすらと瞼を開くと、見慣れた部屋の光景がぼんやりと目に入って来る。部屋の中はまだ暗く、全体が青い色調に包まれていた。
 赤司はゆっくりと上体を起こし、枕元の時計に目をやった。午前四時四分。ほぅと浅い溜息を付く。起床時間にはまだ少し早いが、目が醒めてしまったものは仕方が無い。二度寝をするという習慣が無い赤司はそのまま掛け布団を捲り、起き上がった。真っ白いリネンの寝具がシンと静まりかえった部屋に衣擦れの音を響かせる。時計の横に置かれたミネラルウォーターのボトルを手に取るとそのまま窓際まで歩み寄り、そっとカーテンに手を掛けた。僅かに開けた隙間から外を見る。夜明け前の空はまだ群青色で、そこに微かに掛るレースのリボンのようなグレーの雲が空の色を透かして漂っている。静かだ。そう思いながら赤司はボトルの水を一口含んだ。
 少し走りに出ようか。
 今日は母の法要がある。早朝のロードワークをする予定ではなかったが、あの空を見ていると夜明け前の空気を吸いたくなった。時間はまだある。一時間くらいは走れるだろう。赤司は隣室に設えられたウォークインクローゼットで着替えを済ませ、タオルとランニング用のシューズを手に部屋を出た。