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堀内とミオ!
堀内とミオ!
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ヘレナ冒険録

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[それぞれのロマン]  『とんでもない魔物と戦うことになってしまった。いつもなら一目散にとんずらしているような相手。だけど、マリーちゃんのロマンに付き合うって決めたからにはやるしかない』



「倒したーっ! やったよ、マリーちゃん」
「えへへへへ……。だから言ったでしょ? キミが打ち倒すんだって。それでどうかな! 圧倒的な強さになった気分は? もっともっと、戦ってみたくなったでしょ!?」

 正直、ヘレナがここまでやれるとは思いもしなかったぞ。凶悪な攻撃力に加え、黒魔法でも最高位に位置するメテオまで使ってくる魔物を倒してしまうとは……。それというのもマリーの緑魔法があってこそ。いや、すでに魔法の域を超える強化術式には本当に驚かされた。彼女は一切攻撃に加わることはなかったが、適切な場面での最高のサポート。こんな魔道士は今まで見たことがない。アクションがいちいちオーバーなのと、戦闘中とは思えないなんともラブリーなかけ声が気になりはしたが……。

「私は今まで戦闘を楽しいって思ったことは一度もなかったの。どっちかっていうと、なるべく逃げたいって思ってる。でも今回は違う。なんか、楽しかったよ!」
「でしょ!? もっと自分の力を試したいよね! もっともっと、相手との力の差を楽しみたいよね!」
「ううん、マリーちゃん。そうじゃないの」
「?? どういうことかな?」

 顔では笑っているが、マリーの目の奥に暗いものを感じるな。

「確かに楽しかった。けどそれは、私の力がどうこうっていうより、あなたと一緒に戦えたことが楽しかったのよ」
「……ボクが強化したキミの力。満足できなかったかな」
「あなたの緑魔法は本当にすごかった! 正直、私がここまで戦えるとは想像もできなかったから。マリーちゃん、あなたのおかげで、自分一人じゃ見ることのできなかった世界を垣間見れたことにすっごく満足してるわ」
「そうじゃない。ボクが見たかったのはそんなんじゃないよ? ボクのおかげ? 確かにそうだよ。でもみんな……みんな心の奥底では、自分の力に夢中になるはずなんだ。周りが見えなくなるほどに! ねぇ……キミもそうだよね!」

 激しくヘレナの身体を揺さぶるマリー。そんなにヘレナを困らせてやらないでくれ。君が何にそんなにこだわっているのかはわからないが、わかったことが一つある。マリーよ、ヘレナのまっすぐな目をよく見てみるのだ。

「私はね、ただロマンを追いかけたいだけなの。まだまだ世界には、発見されていない事実がいっぱいあるはず。だけど……私の憧れたモンタナですら、すべてを見つけたわけじゃないの。一生をかけても、どこまで知ることができるかはわからない。全部は無理だとしても、私自身後悔のないように追い続けたいの」
「つまり……自分の力に酔うヒマがないって、そういうことかな?」
「そういうことに、なるのかな」

 そういうことだ。人間一人の知れる領域など、世界に比べれば微々たるものだ。それでも、その人間にとっての世界を、広げることはできるのだ。

「ボクは、緑魔法しか知らないんだ。キミの言ってることは、ボクには理解できないよ」
「そんなことはないわ。一つだけ、価値観の違う私たちでも共通点がある」
「共通……点?」
「そう。あなたも私もロマンを追いかけてるってこと。私は世界の不思議を。あなたは緑魔法でどこまで人間を強化できるかっていうことを。追いかけるものは違うけど、ロマンを追ってることに違いはないはずよ」

 その通りだ、ヘレナよ。価値観を合わせる必要はない。道は違えど、果てのないものを追い求めたいという欲求こそが、ロマンなのだ。

「そっかー。ボクはまだ……極限じゃないんだね。まだまだ、強化できるはずなんだねっ」
「探求に終わりはないわ!」

 二人とも目を輝かせながら見つめ合っているが、いまいちかみ合ってない気もする……。まぁ、お互いに納得できればそれで良いのだが。

「えへへへへ……。決めたっ!」
「ん?」
「ボク、しばらくヘレナちゃんにくっついていくことにしたよ!」

 ……って言ってピョンピョン跳ねながら、本当にヘレナの腕に抱き付くようにくっついているわけだが。

「それは嬉しいし、心強いけどいいの? 私じゃマリーちゃんの研究に役に立てないと思うんだけど……」
「キミだからこそ、良いんだ! ここでの研究はひとまず終わりっ! もっともっと、ヘレナちゃんを強化して……そしたら……きっと……!」

 晴れやかな表情をしながらも、含みのある言い方だな。まあいい。マリーがいてくれれば吾輩も安心できる。それに間違いがないように、吾輩が監視しておけば良いのだからな。……。あくまで、監視だ。のぞきとは違うぞ。さあ、次の冒険へと出発だ。



作品名:ヘレナ冒険録 作家名:堀内とミオ!