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Lovin' you 1

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僕が幽閉されていた数年間、ムラサメ博士を中心とした研究者達は僕への実験で得たデータを元に人工的にニュータイプを作り出す研究を始めたらしい。
始めは男性の被験体を対象としたがうまくいかなかったらしく、僕と同じ女性で実験を始めたらしい。
男性と比べやはり同じ女性での成果はかなり得られた様だが僕のレベルに近づけるべく無理矢理あげられたニュータイプ能力によって精神的にかなり不安定になってしまい実戦使用には漕ぎ付けられないらしい。
その為、ニュータイプの遺伝性についての研究を同時に進める事になったのだ。

ある日、いつも霞みがかった頭がすうっと晴れていった。
薬物の投与が止められたのだ。
しかし、それは次の実験を行うにあたり薬物の影響を受けない様にする為だった。
「アムロ大尉、今日は貴女に我々の希望を叶える手伝いをして欲しい。」
初めて見る研究者は名前をフラナガン博士といった。
僕はまた数年前の悪夢を思い出し恐怖に泣き叫んだ。
けれど無情にも僕は全身に麻酔をかけられ診察台の上で意識を失った。

目を覚ました時、腹部に鈍い痛みを感じた。
まだ麻酔の抜けきらない身体ははうまく動かせず視線だけを巡らし状況を把握しようとした。
どうしたんだろう…。もう終わったのか?生理の時の様な鈍い痛みに腹部に手を当てると僕が目を覚ました事に気付いたフラナガン博士がこちらに近づいて来た。
「目が覚めたかい?気分はどうかな?」
優しげな微笑みで僕を見下ろす。
「僕に何をしたの?」
前の実験の様に激しい痛みや苦痛は無い。けれど何か違和感を身体に感じる。
自分の身に何が起きたのか確認する為博士に聞いた。
博士は優しげに恐ろしい事を僕に告げた。
「君の卵子を摘出してニュータイプの男性の精子と体外受精させて君の子宮に戻したのだよ。無事着床すればいいがね。」
"体外受精?"、"着床?"?え?
何を言っているの?
僕は博士の言っている事が直ぐには理解出来なかった。
「え?どういう事?」
「無事着床すれば妊娠が成立する。うまくいけば12月頃には出産できるだろう。」
"妊娠?"、"出産?"
あまりの事に頭の中が整理出来ないまま自分のお腹に手を当てた。
"ここに"自分以外の何かが居る?!
性交渉もした事が無いのに見知らぬ男性のとの子供がここに!?
そう思った瞬間、嫌悪感で吐き気が込み上げ嘔吐した。しかし空っぽの胃からはただ胃液が出るだけで食道を胃液が焼いただけだった。

数日後、検査の結果、無情にも受精卵はアムロの子宮に着床し成長を始めたのだった。

検査の結果を聞いた後自室に戻ると急激に恐ろしくなった。
「妊娠!僕が?誰の子かもわからない子供を!」
ガクガクと体が震える。
目の端に映った鏡を叩き割るとその欠片を拾い、衝動で手首を切った。
手首から血が流れていくのを呆然と見ていると異変に気付いた監視員が数名駆けつけて来てすぐさま拘束された。手首の傷口は手当され死ぬ事も出来なかった。


section3

「フラナガン博士、アムロ大尉に面会の希望が来ています。」
フラナガン博士は監視員からの報告を受け、屋敷の門前に居る人物をカメラ越しに確認した。
「元ホワイトベースクルーのフラウ・コバヤシとその子供達です。どうしましょうか?」
「ふむ、被験体にあまり近付けたくはないが…。フラウ・コバヤシは妊婦だな…。」
カメラ越しに見るフラウの姿に少し考え込んだ後、
「被験体は妊娠初期でかなりナーバスになっている。このままでは胎児の発育にも影響する。同じ妊婦と接触する事で良い方向に向かうかもしれんな。よし、面会を許可する。ただし監視は怠るな!」


「フラウ!」
アムロは思いがけない来客に立ち上がった。
「アムロ!アムロ!良かった!やっと逢えた!」
フラウはアムロを抱きしめ、久しぶりに会う幼馴染みの姿に安堵の涙を流した。
「よく僕の居場所がわかったね。」
「ブライトさんに教えてもらったの!良かった、元気そうね。逢えて嬉しいわ」
いつもいつも自分の身を案じて面倒を見てくれた幼馴染みが昔と同じ様に自分を心配してくれる。
長いこと忘れていた幼馴染みの温もりにアムロの目からも涙が溢れた。
「僕も嬉しい!凄く…、凄く…」
「もうっ!アムロったらまだ自分の事を"僕"って言ってるの?今のあなたはどう見ても女性よ!」
20歳を過ぎて少しづつ女性らしい体つきになっていた。短かった赤茶色のくせ毛も伸ばしっぱなしになっていた為、緩くカールし、背中の中程までの長さになって揺れている。
「だって父さんが危ないから男の子に見えるようにしなさいって…」
仕事で留守がちな父親は女の子が一人で家に居るのは心配だとアムロに男の子の様に振る舞う様言いつけていた。
元々痩せていてあまりの女の子らしい体型でなかったアムロはその振る舞いから、幼馴染みであるフラウやハヤトはともかく、学校の先輩だったカイですら長い間アムロは男だと思っていたのだ。
「もう!それは昔の事でしょう?もう大人なんだし自分の事は"私"って言いなさい。」
まるでお母さんのように言うフラウに昔に戻ったみたいだ…と今まで張り詰めていた緊張がすぅと引いていくのを感じた。

フラナガン博士はこの様子をカメラ越しに見ていた。
「やはり正解だった様だな。では先輩妊婦さんに色々とご享受願おうか。」
フラナガンはすっと立ち上がるとアムロ達の居る客間まで移動した。

「ようこそ、コバヤシ夫人。私はアムロ大尉の主治医をしておりますフラナガンと申します。」
フラナガン博士は優しげな笑顔を向けフラウ達に挨拶をする。
「主治医?、アムロの?アムロ、あなた何処か悪いの?」
フラウが不安げにアムロを見る。
アムロは体を強張らせて黙り込む。
「いえいえ、病気などではありません。実はアムロ大尉も貴女と同様妊娠しているのです。」
えっと、フラウがアムロを見るがアムロは動揺のあまり何も答える事が出来ない。
フラナガン博士はそんなアムロの様子を気にすることもなく言葉を続ける。
「今、3ヶ月になります。コバヤシ夫人はそろそろ7ヶ月くらいですかな?
是非先輩としてアムロ大尉へアドバイスをお願いします。では私はお邪魔でしょうからこれで失礼します。ゆっくりして行って下さいね。」
来た時と同じ様に笑顔を向け部屋を出て行った。

「アムロ!どういう事!本当なの!」
問い詰めるフラウにただ頷く事しか出来なかった。
アムロの様子を見て望んだ妊娠ではない事を感じ取ったフラウは盗聴器に声を拾われない様にそっと小声で囁く。
「実は私がここに来たのはミライさんに頼まれたからなの。少し前にアムロの悲しい思惟を感じたけれど、自分ではきっと会わせてもらえないだろうからって…。」
フラウの言葉に胸が締め付けられる。
『ミライさんが僕…、私の思惟を感じ取ってくれた…。自分は一人ではなかった!』
「アムロ、辛いかもしれないけど私に事情を話してくれる?あなたの助けになりたいの」
真剣なフラウの瞳にアムロはポツリ、ポツリと今に至る経緯を話した。
フラウは涙を流しながら私を抱きしめてくれた。
「辛かったね、辛かったね」
私の中で今まで堰き止められていた感情が涙となって溢れ出した。
作品名:Lovin' you 1 作家名:koyuho