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妖夢の朧な夢日記-aoi

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いざよう私と、止まった君



「咲夜、起きてる?」

そう言いながら、3回扉を叩く。咲夜がこの部屋で療養している、という事が真実なのならばきっと何かしらの反応を見せてくれるだろう。そう思って扉に耳を当てたが、足音どころか声すら聞こえてこない。恐らくきっと眠っているのだろう。そう信じて扉を開ける。

「……咲夜?」

最低限の家具しか置いていない簡素で質素な部屋の中に一歩足を踏み入れると、止まった時間がそこにあった。寝息一つたてずに彼女はそこに佇んでいた。
……嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ。どうして。どうして彼女がこの短い間に命を落とすんだ。どうして私の前で、どうして私の前で、二度命を落としてしまったんだ。
あの日と同じような、鮮血が見えた。
血なんてここには流れていなかったはずなのに。
私の頭を、暗雲が塞ぐ。
助けて。ねぇ、どうすればいいの。ねぇ。
幽々子様。紫様。文。レミリアさん。パチュリーさん……

「おーい!どうしたんだーい?」

思考を打ち消すように、柔らかい声が耳を劈く。紅魔館の小さな窓から、見知らぬ青年が入ってきたのだ。

「……誰、ですか?」

「あっ、蒼井翔太です」

「蒼井、翔太さん……?」

よくわからないけれど、とんでもないところから出てきたのでただ者ではないだろうと鈍った勘が言う。これならば、話を聞いてもらえそうだ。

「ええっと、その……咲夜が……」

「よぉーし、任せて!僕は時を自由に行き来することができるんだ!さぁ、掴まって!」

「え、えっ!?」

私は彼に導かれるがままに、時を遡っていった。


作品名:妖夢の朧な夢日記-aoi 作家名:桜坂夢乃