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MEMORY 死神代行篇

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03,解封




 “記憶”と違い、一護は地縛霊の少女の為に供えられた花を台無しにした少年達に力尽くの制裁は加えなかった。母親似の美貌を駆使する小技を覚えていたのだ。
 にっこり笑って質問し答えさせ、仕上げに地縛霊の少女の姿を見せつけるという強烈な方法を選んだ。原因の理解る痛さよりも、理解の範疇外の怖さの方が、無法な少年達を追い払うには適しているのだ。
 力尽くでないと余分に時間が掛かる。当然、門限には間に合わなかった。
 帰宅した一護を迎えたのは、一心の体当たりのコミュニケーションだった。
 が、浦原商店に通って鍛えている事は伊達ではなく、ひらりひらりと躱してしまうし、食らっても直撃は免れてしまう。帰宅途中で浦原商店に寄っておやつを食べた事で夕食を食べなくても何とかもつと考えた一護は、一心との疲れるコミュニケーションを放って二階へ上がった。
 翌朝のニュースで、駅から一本入った道で爆発事故があったという報道がされていた。

「近いな。」

 登校途中で聞こえた悲鳴と、不気味な声。
 虚に追われる少女を促し走っていると少女が躓き、拙いと思った次の瞬間、烏揚羽が現れ死覇装の少女が舞い降りた。まさしく一刀両断。冷たく感情のない瞳で一護を一瞥したルキアは、そのままその場を立ち去った。
 その夜、着替えてベッドに転がっていると、“記憶”通りルキアが現れた。
 死覇装に身を包み、部屋の主の一護には姿が見えていないと信じて振舞うルキアに溜息を吐く。記憶がなければ、泥棒と間違えて不審者として尋問して要らぬ時間を費やすところだった事を考えると、記憶があって良かったと思う。
 記憶を思い返してみて、ルキアが階下に現れた虚に気付くのがやけに遅かった事に気付く。ルキアの探査能力が一護の霊圧に遮断されて機能しなかったのかも知れないと思い付く。
 ここで晶露明夜を使っても気付かない可能性が高い。一護は懐からペンダントを取り出すと晶露明夜を発動させて、晶露で作った霊球に部屋に満ちる自分の霊力を込めていく。この後襲ってくるフィッシュボーンと戦う事を考えれば、幾つか霊球を作っておくに越した事はない。記憶の中でルキアが尸魂界と虚について説明した時間を使って、一護は部屋に満ちる自分の霊圧を込めた霊球を幾つか作った。霊球に鬼道を籠める作業は難なく熟せるようになったが、周囲に拡がる霊圧を籠める作業はまだまだ苦手だ。前以て用意しておかないと使えない手段だと思う。拠って時間が懸る為、霊球に部屋に拡がる霊圧を籠め終わる頃には、階下に虚が現れ、同時にルキアも虚の出現に気付いたようだ。
 しかし、ルキアは状況把握を優先して動きが鈍い。一護は小さく舌打ちすると、事態が把握出来ずに固まっているルキアの腕を掴んで階段を駆け下りた。

「何っ⁉」

 死神たる自分の腕を掴む現世の子供の存在が理解できずに驚いているルキアに、一護は顔を顰める。

「優先事項は虚の始末だろうが、死神っ!」

 ルキアを叱咤して、一護は居間に駆け込む。
 そこには、何とか逃げようとしている遊子と、逃げようとして外へ出た夏梨が虚に掴まれるさまが目に入った。

「夏梨っ!」
「一…姉……逃げ…。」

 ルキアが斬魄刀でフィッシュボーンの腕を切り落とし、一護は慌てて夏梨を受け止める。

「そいつ、直接攻撃だと、霊力を吸い取るよ。」

 一護の言葉にルキアは驚いて振り向き、その隙が仇となって虚に吹き飛ばされたルキアは近くの塀に激突した。蹲ったルキアを襲おうとする虚に、咄嗟に晶露明夜を使おうとした一護を、ルキアが阻む。

「お前にどうにか出来る相手などではないっ!」

 そのまま一護の前に出て身を挺して一護を庇う。
 手傷を負った事で一旦引いた虚は少し後に再び姿を現した。
 ルキアは家族を守る為に死神になれ、と言ってきた。
 母が死んだあの日、死神になってしまった一護にとっては今更だ。

「他に方法がないんだね?」
「今はない。」

 ルキアの返事に苦笑する。

「なら、やるっきゃないね。私にあんたの力を貸しな、死神。」
「死神ではない。朽木ルキアだ。」
「私は黒崎一護。お互い最期の挨拶にならない事を祈っとこう。」

 一護の胸に刺された斬魄刀・袖白雪から注ぎ込まれた霊力は、一護の中に吸収されるのではなく、一護の中の封印の鎖を断ち切った。
 光が爆発し、晴れたそこにいた一護は、死覇装に身を包み腰に浅打ちを携えていた。記憶と違う自分の刀に戸惑うが、次の瞬間襲ってきた虚に浅打ちを抜き様斬り掛かる。一瞬後に、この虚が霊力を奪う能力がある事を思い出し、晶露の力で蒼火墜を叩き落す。続け様に五回ほど落としてから心の中で月牙天衝を唱えて斬撃を放つ。始解状態ではない為か、霊圧を載せて放つ事は出来なかったが、晶露明夜で鍛えた斬撃は弱い虚にはダメージを与えられる威力があった。そうして弱ったところへ浅打ちを叩き込むように斬ると、斬られる度に硬くなる虚も仮面に罅が入り砕けた。

「ばかな………。」

 ルキアの呟きが耳に入る。

「何故、鬼道を使える……?」

 掠れた呟きに、一護はルキアを振り返る。
 一護を庇った時に負った傷は応急処置も出来ていない。

「私は回帰術は使えないんだよね。どうしようかな。」
「おやぁ、何かお困りですかぁ?」

 気の抜けた声に振り返ると、緑と白の縞帽子と作務衣に羽織に下駄履きのいでだちで、一護には見覚えのある男が立っていた。

「こんばんはー。」
「貴様は誰だ………?」
「随分といいタイミングのご登場。……もしかして近くで見てた?」

 ルキアの警戒を歯牙にも掛けず、一護は浦原にニコリと笑みを向ける。
 一護の笑みが、怒った時に浮かぶ確率が高い事を知っている浦原は、内心でぎくりとするが、それを気取らせるほど未熟ではない。

「今しがた着いたとこッスよ。」

 へらりと笑ってみせる浦原に、ルキアの警戒心が強まるが、一護はルキアをちらりと見て、視線を彷徨わせてから溜息を吐いた。

「ルキア、この人は本当の事は言わないけど、つまらない嘘を吐く人でもないよ。それに今のあんたの状況をなんとか出来る唯一の人だろうしね。」
「私の状況?」
「怪我をしてて、霊圧下がりまくり。今の状況じゃ、ルキアが霊力譲渡したようにしか見えないから、尸魂界に助け求めるわけにもいかないだろうしね。」
「一護………?」
「黒崎サンは、その死神から死神能力譲渡されたわけじゃないと?」
「だぁって、死神能力譲渡って、譲渡する側の死神の霊圧によって、譲渡された側の霊圧が左右されるんじゃなかった?」
「その通りッスね。」
「私の霊圧、彼女より低い?」

 小首を傾げてみせる一護に浦原は苦笑する。

「そちらさんにはお気の毒ッスけど、黒崎サンの霊圧の方が高いッス。」
「そうだね。ルキアの残りの霊力で私の封印を焼き切ったみたいだ。ルキア、うちの家族の記憶操作とか傷の手当とかの後始末、宜しく。で、浦原さん。」
「はいな。」
「彼女、朽木ルキアさん。彼女の怪我の手当てと、霊力が戻る為の義骸宜しく。」
「黒崎サンの依頼ッスか?」
「……ツケにしといて貰えるなら、後で私が払うけど?」
「利子、高いッスよ。」
「………強欲商人。」
作品名:MEMORY 死神代行篇 作家名:亜梨沙