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逆行物語 第二部~ランプレヒト~

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ローゼマインの洗礼式



 ヴェローニカ様が失脚された。その鍵は私の妹、ローゼマイン。表向きは同母妹だが、本当は異母妹だ。公然の秘密である。
 ローゼマインはその魔力の高さから、争いを招くとされ、神殿に隠されていて、その存在を知る者は居なかった。そんな妹は洗礼式にて大量の祝福で、部屋を埋めて、アウブの養女になった。
 妹の洗礼式が終われば、私はヴィルフリート様の監視……、護衛に戻る。コルネリウスが嬉々として料理に舌鼓みを打っているのが羨ましい。此方はヴィルフリート様を抑えなければならないので、その様な余裕が……、ん? 
 意外な事に、ヴィルフリート様は大人しい。事前にフロレンツィア様から何か叱られでもしたのか…? 

 ローゼマインと領主一族の挨拶が行われる。
「妹のシャルロッテにはお兄様と呼ばれている。其方もそう呼ぶと良い。」
「では、お言葉に甘えて、ヴィルフリート兄様と呼ばせて頂きます。」
「これから宜しく。」
 その笑い方は私の知る腕白な悪戯好きな笑顔ではなく、ずっと柔らかなモノだった。
 
 食事が終わり、ヴィルフリート様はローゼマイン様と話がしたいと申され、再び会いに行った。
「先程、其方は神殿に行くと父上が仰っていたが、そこで何をしているのだ?」
「神殿長と孤児院長をしております。」
 神殿は良い場所では無い。しかしローゼマインが通う場所にあからさまに文句を付けられる段階ではなく、2人の会話に入れない。…しかしこの様に落ち着いてお話されるとは…。
 その様な感慨を抱いていると、おしとやかな姿から、いつの間にか興奮して声が高くなっている姿に変わった妹が不意に、椅子から転げそうになっていた。
「危ない!!」
 私の声に反応を示した大人達の目の前で、私より早く動かれたヴィルフリート様が抱き止められている。
「意識を失っている。」
 なんだと!? 
 ヴィルフリート様の短くも解り易い言葉に、私は驚きに目を見張る。
「退きなさい。」
 いつの間に近付いていたのか、と護衛失格な感想を抱かせたのはローゼマインの後見人であるフェルディナンド様だ。ヴィルフリート様からローゼマイン様を受け取られ、抱き上げられた。
「ふむ、大した事は無いな。…大方本関係の事を語り出し、興奮したのだろう。」
「それだけで倒れるのですか!?」
「ローゼマインの虚弱さを甘く見るな。」
 何と! もしヴィルフリート様が何時もの様に駆け出され、それに巻き込まれていたら……!
 私はぞっとした。戦慄は止まりそうに無かった。
「予想外だったが、予定内だ。休ませよう。」
 何だか矛盾を感じる事を延べたフェルディナンド様は、ローゼマインを連れたまま、母上達の元へ行かれた。