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逆行物語 第五部~フェルディナンド~

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ブラウの面影



 ヴィルフリートが戻ったのはある程度、仕事を終えた後だった。勢い良く扉が乱暴に開け放たれ、震える声で訴える。
「だ、だずげ…っ、」
 涙と鼻水で言っている事が解りにくい。目も魔力が帯びた光が点滅しており、暴走気味な事が伺える。
 腕に抱えているのは…、エーヴィリーベの選別より弾き出された者。まだ存在していない赤子。
「地階に迷い混んだか?」
 僅かに残る異臭が漂う。
「ぶ、ぶん''ずっ、だずげ、わ''だじの''ぜい''っ、」
 灰色達も事態を察して、腕に抱かれた赤子を受け取りに行く。その途方がくれた姿は、嘗ての私に重なった。
「どうやら数日前には高みに昇っていた様だな。季節が季節だったから、腐臭もなく、気付かれなかったのだろう。…其方が踏んだのは遺体だ。其方のせいではない。」
 事実だ。決して嘘では無い。
 地階の惨状については、話にだけ聞いていたが、予想以上に酷い様だ。ベーゼヴァンスが居たから、様子見さえ出来なかったのだ。 無論、今は手を加えようと思えば出来るが、還俗し、神殿には戻って来ない日が近いと解っていて、手を伸ばすのは無責任過ぎる。
「ずっ''ど、ぼう''っど、がれ''、でい''る''?」
 涙を擦りながらの訴えを、嗚咽が邪魔をする。私は自然と手を伸ばしていた。あの日のジルヴェスターの様に。

 ジルヴェスターが飼っていたシュミルのブラウ。手加減無しに可愛がり過ぎて、ジルヴェスターに懐かなかった。私が城に来た頃には、手加減を覚えていた様だが、そうなる前に死にかけた記憶を刷り込まれ、ジルヴェスターからは逃げ出していた。
 そんなブラウは私にすんなり懐いた。ジルヴェスターはそれを見て、貴族院に行っている間の世話を任せてきた。その時期ならば、本来は側近に世話係がいたのだが、当然専任な訳がなく、私に任せても問題は無かったのだ。
 ジルヴェスターはあれでいて、面倒見は悪くない。ブラウの世話は嫌がられながらもやっていたらしい。
 私に懐くブラウが可愛かった。世話を任されて、嬉しかった。だから…、

 ブラウは殺された。

 私の責任だと言われ、私の世話が悪かったと言われ、挙げ句業とだと言われ…、ジルヴェスターとの仲はこれで終わりだと思った。
 ブラウの遺体を抱え、途方に暮れる私を汚わらしい、と誰かが言う。庭に埋めて遣りたくとも、私にはそんな自由すら無かった。
「フェルディナンド!!」
 何処から聞いたのか、貴族院からジルヴェスターが急ぎ戻って来た。
「兄、上…、申し訳、」
「其方のせいではないっ!!」
 私の言葉を遮って、私を力一杯抱き締めて来た。その温もりが、私を――、
「弔ってやろう。」
 ジルヴェスターがそう言うと、カルステッドを後ろに控えさせたまま、私と城外へ出た。
 ジルヴェスターが知る抜け道を行き、埋めるのに適した場所へ着く。ジルヴェスターはシュミルの体を引き裂き、闇属性の魔石を取り出した。遺体は2人で埋めた。
「済まぬ…、守ってやれなくて…。」
 ジルヴェスターの目は、真っ直ぐ私を射抜いている。

 ジルヴェスターが私への嫌がらせを知ったのは、きっとこの時だ。