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逆行物語 真五部~ローゼマイン~

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カーオサイファとの賭け



 「魂の姿は、肉体の形に影響される。神は人間の肉体の違いなんて解らないけど、魂やならば解る。因みに魔力に干渉しない限り、肉体の内にある魂の姿を知る事は出来ない。
 貴方の魂の姿は、メスティオノーラそっくりなローゼマインのモノで間違いは無かったわ。でも…、貴方が亡くなった時、高みへの入り口が開かれる前に、知ってしまった現状がある。
 …普通なら、幾ら未練があっても、高みへの入り口が開けば、抗う事も出来ず、その中に入ってしまう。でも貴方には抗う術がある。だから無意識に高みに昇る事を拒否、貴方は入り口の存在さえ感知出来なくなってしまった。
 貴方の抗う術…、それこそが異物であるモトスウラノ。貴方は寄生するこの世界の魂を利用して、高みに昇るのではなく、モトスウラノの魂の力を取った。しかもこの世界の魂から離れる事もしないまま…。
 貴方がこの世界を彷徨うのは、貴方が高みに昇る道を、魂の姿がモトスウラノに変わる程、否定し続けたから。否定し続けた時と同じ強さで、高みに昇りたいと願わない限り、マインの姿に戻る事は、異物が隠れる事は無いでしょう。
 …実際、高みに昇ってしまいたいと諦めても、高みに昇りたいと願った事は無い筈よ。
 
 ああ、それから、貴方の魂が当初、ジルヴェスターに見えたのは、異物であるモトスウラノとマインの混じり合った魂の立場や強弱関係、高みへの拒否願い…、諸々の状況から乱れていた魂の波長と、相性があってしまったから。
 時間が経ったら、乱れ方に変化が出て当然、ジルヴェスターとも直ぐに相性が擦れ、彼に貴方を捉えられなくなってしまった。
 捉えられてる間なら、貴方の姿が見えたし、声も聞けたし、貴方の移動にも付き合えたみたいだけど、捉えられなくなれば、それも不可能ね。」
 カーオサイファが長い話を漸く語り終えた。そして…、

 「貴方を見付けて、私がしたい事は、私が楽しいと感じる事。…貴方に期待してるの。

 貴方がやりたい事は何? 諦めて、マインとウラノに別れて、何もかも忘れる事が望み?」

 …私は、只、首を振った。私は…、私が望むのは…、只…、彼との幸せ…、それに必要な存在、事柄…、全部掴む事。諦めたくは無い。

 「賭けをしましょう、ローゼマイン。」
 カーオサイファが私の心を読み取って言う。
「これよりまた、時間が巻き戻り、また何処からかやり直される。それはメスティオノーラ達が貴方を見付けるまで続くでしょう。 
 だから過去を変えない様に、メスティオノーラ達は努力する。貴方が産まれる前の歴史は、巻き戻る前と後での違いは無い。でも次の巻き戻しで上手く行くかは解らない。
 で、私の出番。私は精巧な模造品を作る事が出来るからね。」
 そう言って、彼女が手を翳すと、目の前には2つの丸い光。
「この1つは巻き戻った時点での貴方となる。勿論、偽物には自覚は無い。
 メスティオノーラ達は貴方が見付かったと思い、貴方の魂が昇って来るのを大人しく待つでしょう。偽物は肉体が滅べば、一緒に滅びるとも知らないで。
 もう1つはモトスウラノから今までの貴方の記憶、貴方が忘れてしまったモノも含めた完璧な記憶。いえ、貴方が手に入れてきた、グルトリスハイトをも含む知識、と言い換えた方が良いわね。
 これを巻き戻ったユルゲンシュミットに投げ入れる。誰が拾い、どの様に使うか解らない。貴方は今までと変わらず、見てるだけ。
 その状況で、偽物がクインタと幸せになったら貴方の負け。魂の強制分離と離脱を行う。
 メスティオノーラ達が貴方を諦めれば、引き分け。貴方をメスティオノーラの元に連れて行く。ま、悪い様にはされないでしょう。
 メスティオノーラが偽者に気付き、貴方を見付けるまで、偽者がクインタと幸せにならなかったら、貴方の勝ち。
 貴方の望む形で、逆行させてあげるわ。」
 断るなんて、出来ない雰囲気だったし、何より私には魅力的な話だと思ってしまった。それがとてつもなく、厳しい条件だと気付きもしないで。
 …まあ、気付いたとしても、それを選択したとは思うけど。
 私はやっぱり欲しいモノは全て、我慢が出来ないんだ。本も、家族(同然も含むよ、勿論)も、フェルディナンドも…、ゲドゥルリーヒを諦めるなんて、エーヴィリーベじゃないでしょ? 

続く