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Lovin’you afterCCA13

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Lovin’you afterCCA13

Lovin’you afterCCA9でレズンと知り合った少し後くらいのお話です。
アナハイムのメカニックとして働くアムロは、スウィートウォーターに出向という形で常駐しています。
連邦のアムロ・レイはアクシズショック時に行方不明となり、MIA認定されて連邦内では実質死亡扱いとなっています。
当然まだ公にはシャアとの関係を公表していません。
レズン少尉とは、以前アムロがMSパーツの納品でレウルーラに来た時に知り合い、何故か仲良くなってナナイと三人で食事に出掛けるような間柄になっています。
レズンは、知り合った日に酔いつぶれたアムロを迎えに来たシャアから大体の経緯を聞き、アムロの素性を知っています。
双子はまだ生まれていません。
今更ですがアムロが女性です!
以上を踏まえてどうぞ!



白い壁、薬品の匂い、そして白衣を着た研究者達。自分を取り巻く状況に、アムロはガタガタと身体を震わせる。
「…嫌だ…」
ボソリと小さな声で呟いた言葉も、自分の腕を掴んで隣を歩く研究者に無視されてしまう。
そして、研究室の中央にある台に上がるように指示をされるが、これから行われるであろう実験に足が竦み、上がることが出来ない。
そんなアムロの両腕を二人の研究員が抱えるように掴み、無理やり台の上へと登らされる。
「い、嫌だ!離して!怖い!許して!」
暴れるアムロを押さえつけるように台へと上げると、両手両足を拘束具で固定する。
ガチャリと音を立てて拘束される手足を見てアムロが悲鳴を上げる。
「嫌だ!嫌ぁぁぁ!!!!」

「アムロ!」
肩を揺さぶられ、アムロはビクリと身体を震わせ目を見開く。
「あっ……夢…?」
目を覚ますと、目に前にはレズンが心配気にアムロを覗き込んでいた。
「大丈夫かい?随分魘されていた」
まだ夢と現実の区別がつかないアムロは、目を見開いたままレズンを見つめる。
大量の汗をかき、ガタガタと震えるアムロの異常な様子に、レズンが眉をしかめる。
「アムロ?私が分かるかい?」
レズンの問いに、ようやくこちらが現実だと理解し始めたアムロがコクリと頷く。
「…レズン…少尉…」
「ああ、大丈夫そうだね」
アムロはゆっくりと身体を起こし、深呼吸をすると両手で顔を覆って呼吸を整える。
「ほら、お水。飲める?」
レズンがグラスに注いだ水を手渡してくれる。
それを受け取り、一気に飲み干す。
「ごめん…ありがとう…レズン少尉」
少し落ち着いてきて、レズンへと視線を向けて小さく息を吐く。
レズンはアムロから空になったグラスを受け取ると、代わりにタオルを差し出す。
「凄い汗だよ」
「あ…うん。ありがと…」
顔や首元の汗を拭き取るアムロを見ながら、レズンがベッドに腰を下ろしてアムロを見つめる。
「嫌な夢でも見たのかい?」

昨夜は、仕事の後、久し振りにレズンとナナイと三人で食事に出かけた。そして、そのまま酒豪のレズンに付き合わされて、バーを何軒かハシゴした。
ナナイは何軒目かでシャアの呼び出しが掛かって帰ってしまったが、潰れたアムロはそのままレズンの自宅に泊めてもらう事になったのだ。

「ごめん、レズン少尉、泊めて貰った上に起こしちゃったみたいで…」
「酒に付き合わせたの私だからね。そんなのは構わないよ。それよりも酷い魘されようだった。大丈夫かい?」
「あ…うん。その…昔の夢を見て…」
「昔の?」
「うん、地球にいた頃の…」
そこまで言いかけてアムロが口元に手を当てる。
『…地球…一年戦争の後、オーガスタ研究所で被験体をしていた時の…地獄のような日々…』
「うっ…」
「吐きそうかい?」
「ん…大丈夫…」
荒い息を吐きながら、まだカタカタと震えるアムロをレズンが優しく抱き締める。
「大丈夫だ、ここはスウィートウォーターだ。誰もあんたに危害は加えない」
アムロの抱えるトラウマを知っているのかいないのか、レズンがそんな言葉を掛けてくれる。
そう、アムロはレズンがシャアからアムロの素性や過去を聞いている事を知らない。
レズンもそれをアムロに言うべきか迷ったが、アムロとは過去のしがらみ抜きで付き合っていきたいと思い、シャアと相談して知らせない事にした。
いつか、アムロから話してくれた時に受け入れれば良いと、そう思っていた。

アムロはレズンの胸に抱かれ、その温もりにホッと息を吐く。
「うん…ありがとう…」
レズンの袖を掴んで、アムロがレズンに身を預ける。
詳細まで聞いていないが、レズンはアムロが連邦のニュータイプ研究所で拷問のような実験の被験体になっていた事もシャアから聞いていた。
そして、その実験の一つがアムロとシャアを引き裂いたという事も…。

普段のアムロはメカニックとして、ドックの中を忙しそうに動き回っている。
しかし、その姿は楽しそうで、機械いじりが本当に好きなんだなと思う。
そして、一たびMSに乗れば、あのシャア・アズナブルさえも凌駕する腕前を持つパイロットとして、自由自在にMSを操って宇宙を駆る。今現在はテストパイロットとしての姿しか見ていないが、ギュネイとの模擬戦は実戦に勝るとも劣らない迫力だった。
そんなアムロが見せる弱い一面。
それを含め、あの男はアムロを愛しているのだろう。
そして自分も、友人としてアムロを守ってやりたいとレズンは思う。


ようやく落ち着いてきたアムロが、掴んでいたレズンの袖を離してホッとした様な表情を浮かべる。
「落ち着いたみたいだね」
「ん…ありがとう、レズン少尉」
「ああ」
そう答えるとレズンは徐ろに立ち上がり、キッチンへと向かう。
そして、ホットミルクを手に戻ってきた。
「ほら、これでも飲んで。落ち着くよ」
「…ミルク?」
少し驚いた顔をして、カップを両手で受け取ると、一口に含む。
「美味しい…」
不思議そうな顔をしながらも、もう一度口を付け、ミルクを飲む。
「どうした?」
「ミルクってこんなに美味しかったっけ?それに不思議だ…本当に…心が落ち着くんだね。知らなかった…」
あまり家族に恵まれなかったアムロは、温かいミルクをこんな風に入れてもらった事など無かった。ミルクが安らぎを与えてくれるなんて知らず、少し驚いた。
そして、レズンの優しさに心が暖かくなる。
「ありがとう、レズン少尉」
嬉しそうに微笑んで見上げてくるアムロに、レズンは顔を手で覆って溜め息を吐く。
「え?何?私なんか変な事言った?」
レズンの態度に驚くアムロに、レズンが「違う、違う」と手を振る。
「それじゃどうしたの?」
「いや…なんて言うか…あんたの旦那の気持ちが分かったっていうか…私もあの自己中男と同類なんだと思ったらなんかショックで…」
アムロの少し頼りない笑顔に、ギュッと胸が締め付けられ、守ってやりたいと思ってしまった。
「え?私の旦那って…」
アムロは自分の夫がシャアだという事をレズンが知っている事に驚く。
「まさかレズン少尉、私の夫が誰か知ってるの!?」
レズンは自分の失言に気付いて「しまった」と思うが、言ってしまった言葉は戻らない。この際、開き直って白状するしかない。
「ああ、総帥だろ?」
「何で知って!?」
作品名:Lovin’you afterCCA13 作家名:koyuho