二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

鳥籠の番(つがい) 9

INDEX|1ページ/4ページ|

次のページ
 
鳥籠の番 9


地球寒冷化作戦の決行を数日後に控えたネオ・ジオンでは、決行に向け準備が慌ただしく進められていた。
今日もシャアの執務室では、ナナイをはじめとする幹部達が作戦の最終調整を進めている。
それを、少し離れたところでアムロは聞いていた。

「このポイントでアクシズの核パルスエンジンに火を入れます」
モニターを指差しながら、幹部達がシャアに作戦を説明していく。
「おそらくロンド・ベルはアクシズを破壊しようと攻撃してくるでしょう。それをアムロ大尉とギュネイ准尉率いるモビルスーツ隊に防いで頂きます」
「敵ミサイルを撃ち落とせと言うのだな」
「はい」
「アムロ、出来るか?」
シャアが一歩離れた所にいるアムロに声を掛ける。
「はい、大丈夫です」
「ギュネイは使えるか?」
「ええ、前回の戦闘で実践にも慣れましたので、問題ありません」
「ロンド・ベルは核ミサイルを使ってくる可能性もある。確実に撃ち落とせなければ作戦遂行どころか、君たちモビルスーツ隊の命も危ない」
「それでしたら、自分とギュネイ准尉の二機で対応します。他の隊員には核ミサイルの影響の無いエリアでアクシズを守らせます」
「二機で!?」
確かに、核ミサイルは数百のミサイルの中の数発だろう。しかし、それを見極め、他のミサイルを避けながら命中させるなど出来るとは思えない。
アムロの意見に対し、幹部達が声を荒げる。
しかし、そんな事など意にも介さずアムロが答える。
「大丈夫です。10発程度ならば、自分とギュネイ准尉で全て撃ち落とせます」
「凄い自信ですな。本当に大丈夫ですか?」
疑念の目で見る幹部に、アムロがはっきりと告げる。
「はい。核ミサイルをピンポイントで落とす事は可能です」
作戦立案をした幹部は最後まで渋ってたが、シャアとナナイの後押しもあり、アムロとギュネイの二機での対応となった。
「いざとなれば私も出る。心配するな」
「そんな!総帥自ら出撃するなど!危険です!」
「私が落とされるとでも?」
「いえ、そうではありませんが…大切な御身です!」
「分かっている。『状況によっては』、という事だ。なるべくレウルーラの艦橋に居よう」
「そうして下さい」
冷や汗をかく幹部を見つめながら、きっと何だかんだと理由をつけて出撃するのだろうなと、ナナイとアムロは思い、小さく溜め息を吐く。


作戦会議も終わり、執務室にはシャアとアムロの二人だけとなった。
「アムロ…」
「はい、大佐」
「ロンド・ベルはどう攻めて来ると思う?」
「大佐の言う通り、アクシズの核パルスエンジンが始動する前に、ハイメガ粒子砲か、核ミサイルで破壊をしようとして来るでしょう」
「ああ、例のカムラン監査官がロンド・ベルに10発の核ミサイルを融通したと報告があった」
「10発ですか…それならば俺とギュネイで充分です」
暗に『シャアは出撃するな』と言うが、シャアは笑うだけで答えない。
アムロは溜め息を吐くと、シャアの前へと歩み寄る。
「大佐、危険な事は控えて下さい」
そんなアムロの手を引くと、そっとアムロの唇を奪う。
「大佐!」
軽く触れるだけのキスだが、執務室という場所だけに、アムロが抵抗を見せる。
「二人だけだ、気にするな。それにアムロ、君だけを危険に晒す訳にはいかない」
「…そんな事…俺は大丈夫です!」
「本当か?カミーユは…おそらく新型のモビルスーツで出てくる。ニュータイプ専用機だ。そしてジュドー・アーシタ。彼も油断ならない」
カミーユとジュドー、ニュータイプである二人が相応の機体で出てくる。
当然、前回のようにはいかないだろう。
特に、カミーユのニュータイプ能力とパイロットとしての技量はかなりのものだ。
おそらくギュネイでは敵わない。
「分かっています…」
「この作戦を成功させる!その為には私も命を懸けねばならん。分かってくれるな?アムロ」
この作戦を成功させるという事は、地球に住む人々の命を奪うという事だ。
その大罪を背負う覚悟を決めているからこそ、シャアは自身も前線に出ようとするのだろう。
アムロはシャアのそんな想いを受け止め、コクリと頷いた。
「…分かりました…、でも!無理はしないで下さい!」
「分かった。約束しよう」
シャアはそっとアムロの肩を抱き寄せ、腕の中に閉じ込める。
そして頬に触れる柔らかい癖毛にキスをして、アムロの温もりを感じる。
「私は…あこぎな事をしようとしている…。アムロ…私を傍で支えてくれ…」
それに応えるように、自身の背中に手を回してくれるアムロに、愛しさが込み上げる。
「アムロ…」
『この』アムロは、自分に寄り添い、一緒に罪を背負ってくれる。
それに喜びを感じつつも、もう一つの想いが頭をもたげる。
それをアムロに悟られないように、強く抱き締め、唇を奪った。
先程の様な優しいものでは無く、貪る様に激しく、アムロの呼吸すらも奪うほど深く。
「んっんん」
ネオ・ジオンという鳥籠の中で、番いのように寄り添い、生きて行く。
それが、今の自分たちに与えられた生き方だと、シャアは自分に言い聞かせた。


◇◇◇


「大佐、出撃準備が整いました」
ネオ・ジオンの黒いノーマルスーツに身を包んだアムロが、シャアに向かって敬礼をする。
シャアもノーマルスーツを身に纏い、アムロに向かって頷く。
「うむ」
そして、アムロの元まで歩み寄ると、その顎をそっと掴む。
「大佐?」
シャアの行動に驚きながらも、特に抵抗する事なくシャアの青い瞳を見つめる。
そんなアムロの琥珀色の瞳をシャアも見つめ返し、その瞳の中を覗き込む。
「君の活躍を期待している」
「はい、必ずや大佐のお役に立ってみせます」
琥珀色の瞳は、真っ直ぐだがどこか輝きが薄い。その事に、シャアは少し表情を曇らせながらも、コクリと頷くと前を向いて歩き出した。
「行くぞ!」
「はっ!」


UC0093年3月12日
いよいよ、地球寒冷化作戦が実行される。
先ずはレズンたち第一モビルスーツ隊が出撃し、ロンド・ベル艦隊の足を止める。

「大佐、あと30秒でレズン少尉達の隊がロンド・ベルのモビルスーツ隊と接触します」
レウルーラの艦橋では、戦況がいくつものモニターに表示され、それをオペレーター達が報告していく。
「よし!アムロ、ギュネイ、出撃だ!」
「はい、必ずアクシズを守ってみせます」
アムロはシャアに敬礼すると、艦橋を後にした。
それを見送ると、視線を前に戻し、艦橋の外に広がる戦場に目を向ける。
『いよいよか…』
シャアは小さく深呼吸をすると、真っ直ぐに前を見据える。
「全艦、砲撃開始!撃て!」
ネオ・ジオンの艦隊から放たれたビームが真っ暗な宇宙を突き抜け、遠くに爆発の炎がいくつも上がる。
賽は投げられた。
もう後には引けない、ひたすら前に進むだけだ。
シャアは拳を握りしめ、その光景を目に焼き付けた。



「ブライト艦長!核ミサイル準備完了しました!」
「よし!砲撃準備いいか?」
「準備完了!」
「撃て!」
ラー・カイラムでも、ブライトがアクシズの落下を阻止する為、秘密裏にカムランから手に入れた核ミサイルでアクシズの破壊を試みる。
作品名:鳥籠の番(つがい) 9 作家名:koyuho