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日常ワンカット

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デスマスクの日常編


黄金聖闘士悪人ランキングとやらがあるとしたら、ぶっちぎり1位は勿論黒サガであるが、その下にランクインしそうなのが蟹座のデスマスクである。
任務のためなら女子供も平気で死なせる。正義とは時代によって変遷するものが持論。
その悪っぷりは、蟹座の聖衣が逃げ出すほどだ。
巨蟹宮のセンスや雰囲気も最悪で、可視化した彷徨える魂が宮内の至る所にデスマスクとして飾られている。
デスマスクとは腐れ縁のシュラやアフロディーテでさえ、巨蟹宮には滅多に寄らない。専ら通路だ。
「あんな辛気くさい場所にいられるか」
「気分が悪くなる」
シュラとアフロディーテはそう語っている。
だがデスマスクは同僚たちの感情を特に気にした様子もなく、今日もマイペースに巨蟹宮を守護している。

「相変わらず、ひどく空気が澱んでいるな」
用事のために巨蟹宮を訪れたサガは、整った眉を顰めるとそう呟いた。
自宮の隣がこんなホラーハウスというのは、少々堪え難いものがある。
だがそれを告げられたデスマスクはニヤッと得意げに笑うと、
「それもまた、一興」
と、ブラックデスの煙草を噴かした。
黒字に髑髏がプリントされたカートンは、デスマスクによく似合っていた。
時々マフィアの抗争の手伝いをするためか、部屋の中には銃やライフルやらが無造作に転がっている。
何をどう見ても、どこからどう見ても、地上の正義を守る黄金聖闘士の部屋には見えない。
サガは渋面を作りつつ部屋をぐるっと見回すと、一言。
「裏稼業が開けそうだな」
「暗殺屋でも開業しましょうかね」
独特の匂いが室内を満たす。デスマスクが煙を吹き出したのだ。
サガも愛煙家なので煙草の煙はどうも思わないが、話をしようとしている時にこうプハーっとやられるとあまり気分が良くない。
秀麗な顔立ちにやや剣呑な色が浮かんでいるのを察したデスマスクであるが、そのまま煙草を吸い続ける。
どんなに腹が立っても、サガは煙草にはぐちゃぐちゃ言ってこない事をデスマスクは長年の付き合いから熟知していた。
「……デスマスク、話してよいか?」
「ああ、どうぞ」
そしてサガも、長年の付き合いからデスマスクがそういう男である事を知り抜いていた。
「スパイ活動を頼みたい」
「スパイ活動」
復唱するデスマスク。サガは小さく頷くと、
「ああ、今度ミラノで行われるEUの外相会議に、ジャーナリストとして乗り込んで欲しい。プレスパスや身分証明書は、こちらで用意する」
少々手の込んだ仕事のようである。デスマスクは皮肉っぽい口調で、
「俺がジャーナリストですか?」
「フリーのジャーナリスト、フリーライターならば、お前のような男がいてもおかしくはあるまい」
平然と言ってのけるサガ。
教皇位にあったあの頃を思い出させるような、表情と口調だ。
デスマスクはニヤリと口元を歪ませると煙草を灰皿に落とし、
「あんたはそうでなくっちゃな」
と、映画の悪役のような口調で笑う。
サガは無言で、それを見守るだけだった。
作品名:日常ワンカット 作家名:あまみ