悪魔言詞録
90.妖獣 モスマン
なんで、そんなにもふもふでかわいいのかって?
いやあ、そんなの聞かれたって分かんねえよ、そんなことは当然だと思って生きてきたからな。おまえは、例えば手と足がなんで2本ずつそんなへんてこりんな位置にくっついていて、てっぺんに頭なんて重そうでけったいなもんを生やしているんだ、と聞かれたらきちんと答えられるのかよ?
まあ、でも、もふもふな理由は何となく俺でも分かる気がする。これ、実は暖けえんだ、すっごく。俺はこう見えて寒がりだからな。きっと、そんな俺に神さまがすてきな衣装をプレゼントをしてくれたんだろう。ただこのもふもふ、電撃に弱いのが欠点なんだよな。
それに、かわいいってのもなぁ。こっちは生まれつきこんなんだからさ、そんなことを言われてもそんなピンと来ねえんだよ。受胎後の世界にはピクシーやカハクみたいな、かわいらしい女の子悪魔がわんさかいるだろう。あと、男子のほうも、いっつもヒーホーヒーホーとうるさい雪だるまやかぼちゃがいる。俺はあいつらよりも愛想なんか全然ありゃしないし、あいつらより自分がかわいいと思ったこともないし、あいつらほど愛されていると思ったこともありゃしないよ。
でも、近頃は人気がうなぎ上りじゃないかって? まあ、話には聞いてるよ。でもそれもおおかた、逆張りで自分の発言を注目させたいやつがふざけてやったんだろう。こっちは腐ったってダーク悪魔だからな。変にかわいいなんてキャーキャー騒がれると迷惑するんだよ、全く。
さあ、もう質問タイムは終了でいいな。本当ならばおまえとなれ合うことすら嫌で嫌で仕方がないんだ。この時間が終わったら、もう召喚主と使い魔というビジネスパートナーでしかないからな。
え、そんなに嫌なら、なんで仲魔になったんだって?
いや、それは、ほら、そこそこ人気が出てきたって風のうわさで聞いたから、仲魔になったら多少チヤホヤしてくれるかなって、ちょっと思ったりしただけで……。